馬に乗って旅をする
世界に居場所を創るリアルノマド

世界で暮らす 旅をしながら生きる
新しい生き方開拓者 10 人

「世界で暮らす 旅をしながら生きる 新しい生き方開拓者 10 人」は旅をライフスタイルに取り込みながら、人生の時間を充実させる新しい生き方にフィーチャーした特集です。世界を旅しながらできる仕事の創り方、海外での過ごし方、パッキング術や、英語力などハック術などその新しいライフストーリーに迫ります。「いつか世界で活躍がしたい」、「世界中を移動しながら仕事がしたい」というあなたは必読です。

 

今回は、NPO法人「ノーマッズユナイテッド」で旅をしながら環境活動をし、自身のコミュニティ「ファイナルランド」で海外に出たい日本人のために世界中に居場所を創る、ハイパーリアルノマドの鯉谷淑敬さんにフィーチャーします。

 

開拓者3

ハイパーリアルノマド・写真家 
鯉谷ヨシヒロ(こいたに よしひろ)さん

9年前に単身でメキシコに渡り、写真家、建築家として活動する傍ら馬に乗って旅をしながら環境活動を行うNPO法人「ノーマッズユナイテッド」に参加。世界に広がるオープンな居場所とコミュニティ「ファイナルランド」を運営し、その活動を「かくめい」というリアルタイムドキュメンタリーサイトで動画配信をしている。

facebook: https://www.facebook.com/yoshihiro.koitani

 

 

――鯉谷さんが海外ヘ移住されたきっかけはなんですか?

大学4年の時に周りが就職活動で急にリクルートスーツを着たり、髪の毛を黒く短くしたりすることに違和感を覚えたんです。ちょうどその時に父親の会社が倒産して「社会に出て働いていても親父のような目に合うんだろうな」とも思ったんですよね。時を同じくして、今の旅の原型を作ったと言われるジャック・ケルアックや、アレン・ギンズバーグの本に出会って「こんな世界があるんだ!」と衝撃を受けました。彼らにすっかり影響を受け、「自分も世界を見てみたい」という一心で大学卒業後に東南アジアへ行きました。

 

――その頃から写真家として活動されていたんですか? 

実は写真家とはっきり定義しているわけではないんですが…。

大学卒業後に東南アジアを旅した時「旅をしながらできる仕事って何だろう」と考えたら自然に写真を撮っていたんですよね。記事になるネタを探して、日本の雑誌の編集部に企画を持ち込み、収入を得てはまた旅をしていました。東南アジアを後にして、次にメキシコに向かいました。その時に馬と共に旅をし、環境保護活動を行い、流浪暮らしをライフスタイルとする、現代版遊牧民リアルノマド団体「ノーマッズユナイテッド」に出会ったんです。

 

――馬に乗って旅をするんですね。 「ノーマッズユナイテッド」ではどのような活動をされているんですか?

 ホースキャラバンの様子

 

メキシコには未だに自給自足で生活している先住民の人々がいます。このところ、自給自足の村にも少しずつ資本主義の波が押し寄せてきています。その第一歩として、彼らはまず「木」を切って売ります。そうすると生活は豊かになりますが、その代りに「ゴミ」が増えます。でも彼らはゴミの処理の仕方が分からないため、ゴミからダイオキシンなどが発生して深刻な環境問題を起こしてしまうんです。

 

「ノーマッズユナイテッド」で旅をしながら、そういった村を目の当たりにして衝撃を受けました。それからというもの自分たちのライフスタイルは変えずできる範囲で、村々を馬で回り、町の小・中学校で環境問題に関するレクチャーするようになりました。子ども達と環境問題を題材にした劇をしたりして、楽しく環境についての正しい知識を与えています。僕達は彼らの暮らしがより快適で安心できるものになって欲しいと思っています。

 

――旅をしながら環境活動をしていたんですね。 鯉谷さんが運営する「かくめい」のウェブサイトはそういった活動を挙げていくものなのですか?

かくめい 」は「ファイナルランド 」構築の道のりを配信する視聴者参加型のリアルタイムドキュメンタリーサイトです。

 

 

――おっと…。「ファイナルランド」とは何ですか?

ファイナルランド」とは世界中にオープンな居場所とコミュニティを作ろうというプロジェクトです。世界各国で自由に働きたい、田舎で暮らしたいという日本人に居場所を提供しています。「ファイナルランド」には「ファイナルランド・ビレッジ」「ファイナルランド・シティ」「ファイナルランド・リゾート」の3種類のコミュニティがあります。

 

―― 「ファイナルランド・ビレッジ」「ファイナルランド・シティ」「ファイナルランド・リゾート」それぞれの特徴を教えて下さい。

「ファイナルランドビレッジ」は、田舎で自由に暮らしたいという人に向けた低予算で快適に暮らすことができるエコビレッジです。ほとんどお金がかからないので、仕事する時間も減り、自分の好きなライフスタイルが送れます。日本では熊本に「ファイナルランド000 エコビレッジサイハテ」があります。

 

「ファイナルランドシティ」は、日本初の海外でビジネスをしたいと考えている若達を支援する無料のコワーキングスペース&無料のシェアハウスです。こちらは基本的に都市部にあります。「海外で起業したいけど、どうしたらいいかわからない」という方が一般的だと思います。実際、海外で事業をするには、文化と言語が分からなければ不可能です。

そのため、現地に住んでいる日本人と一緒にビジネスをしていくのが一番の近道です。

ファイナルランドシティは、海外でビジネスを希望している方に投資をし、衣食住を共にしながら、二人三脚で、ビジネスを進めていきます。

 

「ファイナルランド・リゾート」は、秘境にあるゲストハウスのことです。現在は、世界三大レイブ地帯の一つである、タイのパンガン島にアースバック(ほぼ土のみで作るドーム状の建物)工法で世界初のナイトクラブを建築中です。今後、東南アジア全体に拡大していきます。

 

 

――「ファイナルランド」を創ることによって、何を実現したいと思っていますか?

僕は今のようなピラミッド型社会ではなく、フラットな社会を実現することを目指しています。「ファイナルランド」を通して資本主義社会のピラミッドの中に、どうやってフラットな社会、リーダーのいない社会を作れるのかを研究しています。実際に熊本にエコビレッジを作った時にコミュニティ実験を行い継続的にリーダーがいないコミュニティを作る方法論を、ルールを設けないことによって確立させました。ルールをひとつ作ってしまうと、どんどんルールが増えます。ルールの上にルールを作っていくのがピラミッド社会です。「ファイナルランド」には細かなルールがありません。自分のできること、好きなことをそれぞれが率先してやっています。

 

仕事のフリーランス化、ローコーストキャリアの普及、SNSでの繋がりによる信頼のネットワークにより、場所を選ばず自由に仕事ができる人が日本にも増えてきていると思います。今後人々の生活はますますノマド化していくでしょう。ただ、例えば今「メキシコに住みたい」と思い立ったとしても、知り合いや仕事がなければ難しいと思ってしまうかもしれません。そういった人々を各地で助ける人々の繋がりであり、コミュニティが「ファイナルランド」で、各地にいる「かくめいか」なんです。

世界各地のこのルールや上下関係のないフラットなコミュニティを網羅させることによってどうせそうなる未来である、フラットな社会の実現を目指しています。

 

 

――ところでメキシコというとスペイン語が公用語かと思うのですが、鯉谷さんはどうやって語学を身につけましたか?

語学は赤ちゃんのように覚えます。文法の勉強は一切せず、フレーズを丸覚えするんです。例えば「タコスを食べに行きましょう」というフレーズは「タコス」の部分を変えれば違う食べ物を食べに行きたい時でも使えますよね。日常生活で実際に使うフレーズは200語くらいで、その中でも動詞は2,30個しかないんですよ。なので「5W1H」とフレーズを200個くらい覚えるだけで勝手に喋れるようになります。

 

語学を身につける上で、もうひとつ重要なのはその国の文化を理解することです。実際その国に行ってみて文化を知らないと習得は難しいと思います。例えば日本人だったら空気を読む、周りに気を使うという文化がありますが、そういったことは現地で実際に体験してみなければ分からないことですよね。

 

 

――旅に出る時に必ず持っていく物3つを教えて下さい。

ホースキャラバンで色々な場所へ旅すると、森の中や道端で寝たりするのって当たり前なんです。どこででも寝ることができるように、超コンパクトの寝袋は必ず持っていきます。もう一つは、革のベルトポシェットです。財布を持ち歩かずにすむし、必要なものは全部、体の一部として持ち運べます。置き忘れもなくなりますよ。最後は帽子ですね。僕は帽子好きだし、馬にも乗ることがあるので帽子がないときついですね。

 

 

――鯉谷さんにとって旅とは?

新しい自分の発見であり、新しい自分との「対話」です。

 

 

 構成/高石真帆 文/間宵ひろみ


おすすめ記事