旅人・作家 ロバート・ハリスさん(後編)
「旅に出れば、おのずと世界は開ける」

Travelers Interview ! Vol.02
~旅と人間を愛す現代のヒッピー~

204Robert-Harris009

“現代を生きるヒッピー”ロバート・ハリスさんのインタンビュー後編。ハリスさんの半生と旅の魅力に焦点を当てた前編に続き、今回は、海外でのコミュニケーション術、現代の若者に送る言葉、女性との付き合い方について語っていただいた。

 

撮影/川野裕子 取材・文/山川俊行(編集部)

 

――英会話初心者が海外でコミュニケーションをとるコツはどんなことでしょう?

 

笑顔を心がけて、自分の意思を伝えようと努力することかな。あとは、少しずつでいいから、自分の殻を破ってみる。例えば、レストランで「salt please.(塩ください)」とか、飛行機に乗った時は「Blanket please.(ブランケットください)」とか。“please”っていう言葉を使うだけで、海外でのコミュニケーションの可能性って広がるんだよ。日本人は『「寒いから毛布ください」ってどう話せばいいんだろう?』って色々考えすぎるんだよね。それで、結局声をかけられない。ただ、CAが来たら手を挙げて「Blanket please.」でいいんだよ。自分の知ってる単語から会話を始めればいいの。その程度の単語力でも伝わるってことを実感できれば、もっと深い会話にもチャレンジできると思うよ。

あと、海外の人って、日本人に比べてサービス精神がないから、自分からしっかり「これがしたい」とか主張しないと取り残されちゃう。それは、女性との付き合い方でも一緒。はっきり「君のことが好きだよ」って言わないと、「あなたの気持ちがよくわからない」って言われてしまうから。

 

――そういう経験があったんですか?

 

アメリカの留学先にかわいい女の子がいてさ、彼女に「俺、詩を書くんだけど、ベッドルームに詩があるから一緒に来ない?」って言ったら、「何であなたはここに詩を持ってこないの? 詩でアタシを誘惑するっていうのは、ずいぶんゲスなやり方ね!」と怒られたことがあって。その時は、「すいませんでした…」って言うしかなかった。馬鹿なことやったよ(笑)。その時に、まわりくどいことをせずに自分の考えをしっかり主張しないといけないと悟ったんだ。
だから、最初の妻となる女性と出会った時は、はっきり言ったね。「この後、一緒に会ってくれない?」って。今ここで声をかけないと会えるチャンスは一生ないと思ったから。

 

――なるほど。人付き合いをする上ではもちろんだと思いますが、例えば、ビジネスシーンでも物事をハッキリと主張することは重要だと思いますか?

 

そうだね。単なる語学力だけじゃなくて、海外のビジネスマンと渡り合えるようなビジネスランゲージが必要とされると思うよ。例えば、海外で仕事をする時って必ず最初に、「このぐらいのお金でやってくれませんか?」というギャラの会話から始まるんだよ。日本は逆に、最後にお金の話にするでしょ? お金の話ってなんだか下品なイメージだからなんだろうね。仕事を進めつつ、ニュアンスでお互いの気持ちをはかり合ってからお金の話をするっていうのはよくあるけど、それじゃ海外で仕事をする上では曖昧すぎるんだよね。そういう部分ひとつとっても、日本と海外では文化が全く違う。
だからさ、異文化を受け入れることが、ビジネスのグローバル化でも大切なことだと思う。日本にいると、世界で起こっていることと、自分たちとは関係ないって思うことが多いけど、そうじゃないんだよね。

 

――たしかに! 世界はひとつですしね。

 

そうだね。だけど、日本人ってちょっと内向的になってると思うんだよね。J-POPしか聴かないとか、日本映画しか観ないとか、若者がパスポート持たないとか、旅しないとか、留学しないとか、小さくまとまろうとしてる。世界には日本にいるだけでは想像のできないライフスタイルがたくさんあって、いろんな国、いろんな人間のあり方に触れた後に日本を振り返ってみると、改めて日本の良さがわかるもんだよ。やっぱり外に出ないといけないと思うね。「何でも見てやろう!」みたいなエネルギーがあった方が健全だと思うよ。僕が二十歳の頃はそうだったしね。

 

今の若い子は真面目すぎる。もう少しいい加減でいいんだよ。僕も若いときに馬鹿やったことが今でも良い思い出として残ってるし、違うものにつながってるような気がするね。

 

――実際に、後々の人生でそういった経験は活かされているんですか?

 

そうだね。初恋の女の子にフラれたことは今でも良かったと思ってるよ。そこでわかったのは、いくら自分の気持ちをオープンにして、積極的にアプローチしてもダメな時はダメだってこと。やっぱりいくら好きでも、相手の波長とかさ、リズムに合わせてあげないと。だからどんなことでも場数を踏むことが大切。やっぱりね、1回ぐらいは生きるか死ぬかぐらいの恋をした方がいいよ。じゃないと、自分のなかの恋するキャパシティとか、ジェラシーとか、そんな本当の姿を見つめることができないからね。だから失敗した時こそ、自分のキャパシティを広げるチャンスだってことだね。

 

――では、最後にCheer up! English読者に向けて、英語学習の意欲を高める応援メッセージをいただけますか?

 

そうだね、言語ってただの言葉のやり取りをするだけのものじゃないと思うのね。自分が知らなかったユーモアのセンスとか、世界の見方とか、人間と人間との関わりの仕方って全部内包されてると思うんだ。例えば、俺は英語ができるから、アメリカ人、イギリス人、オーストラリア人、その他英語圏の人たちのユーモアのセンスの違いがわかる。だから、自分でも彼らの歩調に合わせられる。1個の言語しか知らないと発見できないものがたくさん詰まってて、そういう意味で、言葉を通じて世界を知ることができると思うんだよね。

 

僕がモロッコを旅してる時も、フランス語は全然喋れなかったけど、ジェスチャーも交えて話してると、どんどん会話が広がっていって。話す相手はホテルやレストランのウェイターなんだけど、彼らを通して女の子の話で盛り上がったりしてさ。すごい楽しいんだよ。だから、そういう言葉のキャッチボールの楽しさを身につけるといいよ。英語の勉強をひとつの試練って考えるよりも、言葉は“楽しさを運んでくれるもの、世界を広げる道”だって思えば、もっと前向きに勉強できるんじゃないかな。

 

■ プロフィール
Robert Harris(ロバート・ハリス)
横浜生まれ。高校時代から国内をヒッチハイクで周り、卒業後は北欧からインドまで半年間の旅をする。上智大学卒業後、東南アジアを放浪。バリ島に1年間滞在後、オーストラリアにわたり延べ16年滞在。シドニーで書店兼画廊を経営。映画、テレビの制作スタッフとしても活躍。日本に帰国後、1992年よりJ-WAVEのナビゲーターに。また、作家としても活躍。著書に『エグザイルス』『人生の100のリスト』(共に講談社プラスアルファ文庫)、『エグザイルス・ギャング』(幻冬舎アウトロー文庫)、 『旅に出ろ! ヴァガボンディング・ブック』(ヴィレッジブックス)、『幻の島を求めて』『モロッコ オンザロード』『知られざるイタリアへ』『英語なんて これだけ聴けて これだけ言えれば 世界はどこでも旅できる』『やってみたら 英語なんて これだけ聴けて これだけ言えれば 世界はどこでも旅できた』(すべて東京書籍)、『WOMEN ぼくが愛した女性たちの話』(晶文社)などがある。
 
 
 
▲『英語なんて これだけ聴けて これだけ言えれば 世界はどこでも旅できる』
http://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/80465/
▲『やってみたら 英語なんて これだけ聴けて これだけ言えれば 世界はどこでも旅できた』
http://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/80578/

●公式ブログ『EXILES』 http://web-bohemian.sblo.jp
●WEBマガジン『Bohemian』 http://www.bohemian.jp
●担当ラジオ番組『SAISON AMERICAN EXPRESS CARD VINTAGE GARAGE』
http://www.j-wave.co.jp/original/vintagegarage/

 


おすすめ記事