取材・文／内田芙美

2020年の東京オリンピック・パラリンピックが決定したにも関わらず、“非グローバル化”が指摘される日本の現状をうけ、文部科学省が開始した留学促進プロジェクト『トビタテ! 留学JAPAN』。このプロジェクトは、社会全体で留学に対する機運を醸成しようというもので、同時に、政府は2020年までに、留学生の数を今の倍に増やし、世界のフィールドで活躍できる若者を育てようとしています。その詳細について、文部科学省　初等中等教育局 国際教育課　課長補佐の河村裕美さんにお話を伺いました。

「“グローバルな舞台で活躍できる人材の育成”において、英語教育の強化と、海外留学生の増加は、国が最優先で取り組むべき施策とされています。2004年の約8万人をピークに、日本人の留学生は年々減少し、現在留学中の学生は約6万人。ピーク時よりも30％も減少してしまいました。また、高校生の留学生数も伸び悩んでいます。

この留学生減少の背景には、様々な原因が挙げられるのですが、高校生が留学しない理由に語学への不安があったり、大学生は、経済的な課題が挙げられます。文部科学省では、来年度から留学する生徒・学生に対する支援金や奨学金を充実させるとともに、民間企業から寄附を募ることとしています。国費による留学支援に民間資金が増額されることで、より多くの留学生に奨学金を得るチャンスが生まれます。また、民間企業との連携は、大学生から多く寄せられている、帰国後の留年に対する不安や、その後の就職に対する不安の声に対しての解決策ともなります。『トビタテ！留学JAPAN』は、このような取り組みが始まる前に社会全体の機運を盛り上げ、より多くの方に留学への関心をもっていただけるように、イベントの開催やフェイスブックを通じてのPR活動、プロモーションビデオの配信などに取り組んでいます」（文部科学省　河村裕美さん、以下同）。

確かに、帰国後の就職などについてもサポートがあるというのは、安心して留学できる大きなポイントとなります。では、留学によって育成される“グローバル人材”について、政府はどのように考えているのでしょうか。

「語学力やコミュニケーション能力は“ツール”にすぎず、その先を行くリーダーシップ能力や課題発見能力、自国と他国への深い理解がある人材、いわゆる“人間力のある人”が、本当の意味での“グローバル人材”だと考えています。これまで、海外留学は“海外の大学へ行って語学力を高めること”と考えられていましたが、近年はその古典的な考えより一歩踏み出して“海外の社会で学び、ポテンシャルを磨き高められること”に期待しています。

私たちは、若者に対して、もっともっと母国語の通じない環境へ飛び出し、たくさん失敗や挫折を経験し、海外生活の中でもまれ、たくましく成長して欲しいと願っています。その経験によって、順応力とリーダーシップ力、自国と他国への深い理解が必然的に身につくと考えているからです。例えば、日本という国から出なければ、日本の習慣や人種性について改めて考える機会はめったにありません。けれど、他国に行って、現地でできた友達に日本のことを説明する場面を想像してみてください。今まで当たり前だと思っていたことを改めて説明することで、自国への理解が深まると当時に、考える力も身につくのです」。

海外留学は、語学のスキルアップだけに留まらず、人間力を鍛えるとてもいいチャンス。これらをひとつずつクリアすることで、“グローバル人材”が育つというのが政府の考えなのです。では、どのような人が奨学金制度を受ける資格を獲得できるのでしょうか。

「具体的な基準は現段階では確定していませんので、想定のお話となりますが、今までは、国費による奨学金は、一定の学力基準等をパスした生徒に与えられていました。しかし今後は意欲と能力のある生徒、ポテンシャルの高い学生等にチャンスが与えられるようにしたいですね。つまり、英語が苦手だからとあきらめていた人、留学テストが第一難関だと思っていた人にも留学に興味をもっていただければと考えています」。

まだまだ発足したばかりの『トビタテ! 留学JAPAN』プロジェクトですが、より多くの学生に留学に興味をもってもらうべく、今後は、12月に行われる留学相談会『Global Japan Expo』をはじめ、様々なイベントを企画しているとのこと。まずはイベントへの参加を通じて「グローバル人材」への第一歩を踏み出して欲しい。

●トビタテ! 留学JAPAN公式HP http://www.mext.go.jp/ryugaku/
●トビタテ！留学JAPAN　PV
＜太田雄貴森永製菓フェンシング選手編＞
http://youtu.be/3x-TgXomV80
＜野口聡一JAXA宇宙飛行士編＞
http://youtu.be/av9vey1ZY9w
＜滝川クリステルさん編＞
http://youtu.be/XCcqR-RN-us