演出家・俳優 大谷賢治郎さん
「海外で人間としての超原点を学べた」

Cheer up! Interview!
~英語を学んだ先輩からのメッセージ~Vol.06

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取材・文/甲斐真理愛(編集部)

 

英語学習や留学などのグローバル体験を、仕事や生活の充実につなげた方々にインタビュー。第6回目は、演出家で俳優の大谷賢治郎さんをお迎えしました。現在、国際的な演劇人として様々な国の演劇に携わる大谷さん。中学生の頃からアメリカのお芝居や音楽が好きで、演劇を学ぶために進学したアメリカの大学では、現在の活動の源となる経験を積んだそう。そんな大谷さんに、英語学習や海外でのコミュニケーションのコツや、演劇界を志す読者にメッセージをいただきました。

 

――高校卒業後、アメリカの大学に進学した大谷さん。なぜ、アメリカに進学しようと思ったのですか?

 

中学生の頃からアメリカの芝居や音楽が好きで、演劇の仕事がしたいと思うようになったからです。それで、高校を卒業したら大学に進学して芝居を学ぼうと思ったのですが、日本だと芝居を勉強できる大学が2つか3つかしかなくて。それ以外だと劇団に入ることになりますが、もっと広い世界で芝居を学びたかったので、アメリカの演劇コースのある大学に進学しました。

 

――渡米前の語学力はどの程度でした?

 

高校に通いながら2年間英会話スクールに通って、高校2年生の時にTOEFL®を受けました。それで、自分でいうのもなんですが、アメリカの大学ならどこでも行ける成績(現在のスコアで100点〜110点ほど)をとれたんですね。なので、語学力にはそこそこの自信があったのですが、実際にアメリカに行ったらもう惨敗で(笑)。大学の歴史や文化人類学の授業は何を言っているのか全く分からないし、芝居でも発音が上手くできず、台詞を誰にも聞き取ってもらえなかったり。そんな痛い思いをたくさんしました。
やはりネイティブは話すスピードが速いですし、ボキャブラリーの豊富さも桁違いです。周りが何を言っているか本当に分からなくて、最初の1年はものすごくしんどかったですね。
しかも、芝居の場合だと机の上で勉強することより実践が多いので、相手の言っていることを理解しないと何もできないんですね。
なので、語学力を身につけるためにネイティブのルームメイトと暮らしたり。とにかく日本人と付き合わないことを徹底することで英語のコミュニケーション力を鍛えました。

 

――英語が上達するまでにどのくらいかかりましたか?

 

英語で不自由なく話せるようになったのは、渡米して1年後くらいです。自分が英語を覚える上でラッキーだったと思うのは、芝居を通じて英語の表現方法をいっぱい学べたことです。大学の演劇の授業の中に、自分たちでやりたい戯曲を選んでシーンを作って発表するという課題が多くあり、その戯曲が現代劇なら、日本の学校では学べない新しい表現が学べます。だから今でも、日本で英語を勉強しようとしている人に「芝居の台本を使って勉強するといいよ」と、すすめています。

 

――大学の授業はどうでしたか?

 

とにかく課題が多くて大変でした。朝の9時から夕方の3時か4時まで授業があって。その後、18時くらいから芝居の稽古が始まるので、その隙間はずっと課題をやっていました。めちゃめちゃ勉強しましたよ。寝る時間もないくらい。

今になって何でそんなに頑張れたのか考えると、多分負けたくないと思ったからでしょうね。僕はネイティブの3倍は勉強の時間がかかっていましたから。課題の分量がとにかく多いと感じていましたけど、ネイティブの同級生にしたらそうでもなかったのかもしれません。

アメリカのテストって英作文が多いんです。ブルーブックというノートがあって、それが解答用紙なんですよ。10ページとか20ページ分、わーっと文を書いて提出するというもので、自己観察力とか、文章力とかそんな部分を評価されるんですね。

 

――日本人は英語の長文が苦手だってよくいいますよね。

 

そうですね。これは経験から気づいたんですけど、日本人は文法による束縛というか文法を重んじすぎるために、いざ英語でコミュニケーションとなった時に、言葉につまってしまうんですよ。話し言葉の前に、脳が英語を英文法になおす学習法をしてきているので。文法を考えてから会話する作業は大変なので、物事を直接英語で考えられるようになると、英語でスムーズにコミュニケーションできますよ。当時は10代で吸収力が良かったせいもありますが、ネイティブと交流したり、課題を必死にこなす中で英会話力がついたと思います。

 

――言葉にはかなり苦労したんですね。しかし、10代で単身渡米ってすごい勇気です!

 

すごく無茶ですよね。僕は昔から好奇心旺盛な方で「まぁ大丈夫だろう!」とアメリカに乗り込みました。でも、学校には僕以上に勢いがあって自己中な若者ばかりいて。もうみんな「世界は自分を中心にまわっている!」と思っているんですよ。特に演劇を学ぶ学生たちは、主張し合うことで勝負するので、我の強い人ばかり。そんなメンツを前に「ここに混じるのか……、あっちゃ~」って思いましたから(笑)。

 

――そんな人たちと付き合うって大変そうです。文化も考え方も違う人と仲良くなれるものですか?

 

仲良くなれます。むしろ日本人より楽に付き合えると思いますよ。というのも、日本人同士だとお互いの抱える事情や背景が読めるので、それを考慮してどう付き合うか考えますよね。それが外国人の場合、極端に背景が違うので、そこまで考えなくて済むんですよ。背景を超えたアノニマス(匿名性)な付き合いができるというか。

 

――仲良くなるコツってありますか?

 

僕が考えた仲良くなるためのコツは、相手を観察することです。相手がどういう人で、どうコミュニケーションすると上手くいくのかを見極めるんですね。例えば、早口の人がいればこちらもそのペースに合わせるとか。ただ、今だからこんなことを言いますが、僕は留学するまでは人の話を聞かない人だったんです。でも、渡米当初は英語でわーっと話せなかったので、人の話を聞かざるを得なくて。そこで話を聞いてからコミュニケーションする方法を学んだと思います。

その他に大切なことは、柔軟性と思いやりじゃないでしょうか。思いやることを示す英語の表現で「その人の靴を履いたら(If I were in your shoes)」という言葉があるんですけど、“もしその人の立場だったら”という、人間としての超原点を学べるのが、海外に行く醍醐味だと思います。ときに日本人は、外国人をすごく異質なものだと感じて壁を作ってしまいがちですけど、人間としての普遍的なものに目をむけて交流するといいですよ。例えば、日本人同士でも「九州の人はこう」とか言いがちですけど、九州の人が全部同じような性格ではないはずです。それと一緒ですよね。

僕はアメリカに進学して、本当に良かったと思います。大学での経験は今の自分につながっています。留学のおかげで現在の国際交流の活動ができていると思うので。英語が使えれば色んな人と話せます。みなさんも海外で学べる機会があるのだとすれば、是非挑戦してほしいと思います。おすすめですよ! 世界は大きいので自分の視野が広がりますから。

 

――では最後に、演劇の世界を目指す読者にアドバイスをお願いします。

 

演劇を日本でやりたいのか海外でやりたいのか、映像か舞台かによって違いますが、海外で積んだスキルが、日本の演劇の仕事に直結するかというと、多分ノーだと思うんですよ。日本で演劇のスキルを積むのなら、劇団に入ったほうが順当ですから。

ただ、これからの時代、アーティストだろうが社会人だろうが、団体や企業の力で活躍するよりも、個々で戦う人たちが各々のグループを作って活躍していくと思うんですね。僕は、日本にそんな人たちが増えていけばいいと思っています。個々が自力でたてるスタンスを持てたら、そんなに強いものはないですから。

僕はこれからも引き続き、他の国のアーティストと作品を作っていきたいです。それで、そこに日本人を呼びたいですね。海外でフェスティバルをやることも多くて、それに関わるには英語が必要なので、これから色んな国で演劇をやろうという方は、英語を勉強しておいてください。少しでも英語ができると世界が広がりますから!

 

■大谷さんの英語のキラキラフレーズ
Next one」(次の作品だ)

▲諸説ありますが、チャーリー・チャップリンが「一番好きな自分の作品は?」と聞かれた時に答えた言葉です。これまでの作品にベストを見いだせばその先がないですが、「Next」という答えには、現状に満足しないチャレンジ精神を感じます。憧れの演劇人のチャップリンの言葉に、自分の活動が支えられています。

 

■プロフィール
大谷賢治郎(おおたに・けんじろう)
演出家、俳優。1972年東京生まれ。サンフランシスコ州立大学芸術学部演劇科卒。帰国後、シアターXを中心にイスラエル、ドイツ、オーストラリアなどで俳優活動を行う。最近では、2009年より劇団銅鑼公演「ハンナのかばん」の演出助手をきっかけに同公演の「次代を担う子どもの文化芸術体験事業」にて小中学生対象の演劇ワークショップを2011年より3年連続で指導。2012年より東京国立博物館にて展示品の作家として小学生に博物館を案内するワークショップ「トーハク劇場へようこそ」を行なう。2012年、劇団銅鑼創立40周年公演「あやなす」を演出、2013年5月同劇団公演「不思議の記憶」の作、演出、美術を手掛ける。11月フェスティバル・トーキョーにてドイツの演劇ユニット・リミニプロトコールの公演「100%トーキョー」の日本側演出を担当。またLittle Creaturesなど様々なアーティストの英語詞を作詞。アシテジ国際児童青少年演劇協会日本センター理事。
●大谷さんのブログhttp://otanikenjiro.blogspot.jp

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