パネルディスカッションレポート

「日本の英語教育はどこに向かうのか」

EF 英語教育シンポジウム

イー・エフ・エデュケーション・ファースト(EF)が1月29日に開催した「日本の英語教育はどこに向かうか」について議論を行う『EF 英語教育シンポジウム』のリポートを、前回は前編後編に渡りお届けしました。シンポジウム第2部では日本の英語教育について教育界、経済界で活躍する方々のパネルディスカッションが行われました。今回の記事では「日本人の英語力を底上げするにはどうすべきか」についてパネリストの5人の意見をご紹介します。

 

有賀 理さん

文部科学省

高等教育局 高等教育企画課 国際企画室長

「海外の成功事例を取り入れ、大学側が留学推進体制を整える」

日本人の英語力は世界的にも、アジアの中においても極めて低いとされています。英語力が伸びた諸外国と日本を比較すると、日本では大学の卒業要件に英語のコミュニケーション能力をはかる指標いうものがないんですよね。海外の成功事例を積極的に取り入れていくこと、また政府としても留学を推進するジョイントディグリーと呼ばれる、日本の大学と海外の大学両方で学位が習得できるなどの制度を大学側とすすめていく体制が必要だと思います。

 

板津 木綿子さん

東京大学

総合文化研究科 言語情報科学専攻 准教授 

「自分から学びたいと思うレトリックを浸透させる」

私が教えている学生たちを見ていて、英語を読解する力はあっても、発言やプレゼンなど伝えるスキルは依然として低いままだと感じます。そのため、大学の授業の中でプレゼンを行う機会を設けるなどの教員側の努力や工夫が大切だと思います。そして、一番重要なのは、学校以外にも、英語を使う場所を創造し、英語ができるようになると生活の質が向上するというレトリックを一般的に浸透させることだと思います。

 

芦沢 真吾さん

東洋大学 国際地域学部 教授

「リスクを取らなければ将来はない」

自分の生徒たちを見ていて、留学をしたいという積極的な姿勢の生徒はとても多いです。しかし、1回目の就職は大企業にいきたいという学生が多い中、留学をすると就職に関して不利になってしまうという定説がまかり通っているので、留学をあきらめてしまう人が多いですね。グローバル化が進み、企業も積極的に外国人の採用をすすめようとしている今、このリスクを取らず、英語を使えないまま社会にでてしまう方が将来的にはよっぽどリスクになると思います。今こそ、このリスクを取ってでも留学をすることをおすすめします。

 

 

出口 汪さん

現代文のカリスマ講師 

広島女学院大学 客員教授

累計700万部ベストセラー著者

「英語の前に論理力」

英語力も大切ですが、その前に鍛えなければならないのは論理力だと思います。グローバル時代に外国人の方々とコミュニケーションをしていく中で、論理的に話す力がなければ交渉などは不可能ですよね。なので、英語の勉強の前にぜひ、論理力を身につけてもらいたいです。英語力を伸ばすには留学が手っ取り早い方法だと思うのですが、これに関してはお金もかかることなので、誰にでも平等な条件ではないですよね。そういった不平等を解消するためには、国が援助するような体制をつくっていくことが大切だと思います。

 

土井 正己さん

クレアブ・キャビン・アンダーソン副社長

元トヨタ自動車広報部グローバルコミュニケーション室長

「コンテンツとアティテュード」

グローバルにコミュニケートする手段として大切になのはコンテンツとアティテュードです。コンテンツというのは自分の視点があるか、アティテュードは相手を敬う姿勢で、この2つを海外留学で身につけてくることがその後のビジネスシーンに活きていくと思います。また、企業でも交換社員など、外国人の労働者を積極的に受け入れるようなプログラムを行政と共に推進していくのはひとつの方法だと思います。

 

いかがでしたか? 日本人の英語力アップには、政府や行政、教育機関のサポートはもちろん、個人のグローバル社会における将来を見通したマインドセット、また国際的にコミュニケートするスキルや経験を身につけていくことが必要不可欠です。

 

 構成・文/高石真帆(編集部)


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