乙武洋匡氏(後編)「英会話力と、
様々な価値観を認められる柔軟性が大切」

〜英語を学んだ先輩からのメッセージ〜Vol.08

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英語好き、海外旅行好きで英語の勉強中だという乙武洋匡さん。現在は、東京都の教育委員を務め、小中高生の英語教育にも関心をもっています。後編では、そんな乙武さんに、英語教育の重要性やグローバル時代に必要な能力などについて語っていただきました。★前編はコチラ⇒教育と英語に精通する乙武洋匡氏(前編) 「英語を学んで色んな国の人と話したい」

 

――グローバル時代に備えて、ここ数年、国が英語教育を強化しようとしています。教育現場を知る乙武さんから見て、実際はどうですか?

 

英語教育を強化する動きはあります。小学校5年生から週に1回、外国語の授業をする政策がスタートしていて、それを今、小学3年生からに引き下げようという動きもでています。 もちろん、それ自体はとてもいい取り組みがされていると思いますが、ただ、僕はそこよりも、英語教育の本丸である“中高でどんな教育をするのか”ということの方が大事だと思っていて。つまり、せっかく小学生のうちから楽しく英語にふれて興味をもったり親しみを覚えたりすることができても、中高で「はい、ここはスペルが違います。文法、関係代名詞が違います」というような昔ながらの英語教育だったら、みんな英語が嫌いになるだろうって思うんですよ。
そんな感じの学校の授業を中高大と10年以上受けても、英語を話せるようになった人はほとんどいない……。なんて、現状があるわけです。そこを改善しないと、英語教育の早期化を図ってもあまり意味がないのではと。だから、“話せるための英語教育”が必要だと考えています。

僕は、海外の人とコミュニケーションを図ることが、英語教育の優先順位の一番目であると思っています。だからといって、文法などをおろそかにしていいというわけではなく、それよりも大切にすべきことがあるよねと。
ただ現状は、小学生の早期教育に対しては、教育現場で様々な話し合いがされていますけど、中高の教育も変えないといけない、という具体的な声はまだ聞こえてきませんね。

 

――中高の教育を変えるには、教える立場の人の英語力も問われそうですね?

 

そうですね。実は今、僕は東京都の教育委員をやっているんですけど、来年度の予算で、中学の英語の教員を海外に派遣して、現地の学校で日本のことを教える授業をして帰ってくるというプログラムをはじめようとしています。それはまさに、英語の教員のレベルが上がらないと子供達に教えられないよね、という考えからで。

もうひとつは、インターネットを使った授業にもすごく可能性を感じています。僕が取材に行ったとある学校では、電子黒板と生徒一人ひとりが持っているタブレットがつながっていて、例えば生徒がドラッグした範囲の英語を、機械がネイティブの発音で音声出力してくれるシステムがあります。 先生によって発音の善し悪しってあると思いますが、このシステムならそんな問題が解決されますよね。そういう進化も教育に大きな可能性をもたらすと思います。

 

――発音って大事ですよね。

 

発音について、僕は昔から不思議に思っていることがあって。それは、なぜ日本の外来語はカタカナ表記にされてしまったのかということです。例えば、「ラジオ」。海外で「ラジオ」と言っても絶対に通じないです。初めてラジオを日本語に訳した人がせめて「レイディオ」と表記していれば、そのまま読んでもネイティブに通じたと思うんですが。「コーヒー」も、海外で「コーヒー」と注文したらコーラが出てきたという話をよく聞くんですが、それも「カフィ」って言ったほうが通じると思います。「アップル」も「アポー」でいいと思いますし。そんなローマ字読みが日本人の発音の問題に強く影響してしまったと思います。  続きを読む


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