『沈黙ーサイレンスー』ジャパンプレミアで行われたインタビューほぼ全部

日本人の俳優の英語や
文化の違いのとまどいとは?

1月21日公開の『沈黙―サイレンス―』の公開前に、六本木ヒルズでジャパンプレミアが行われ、マーティン・スコセッシ監督と日本人出演者が舞台挨拶をしました。日米のスタッフで作り上げたというこの映画、小松奈々さんの英語での演技の苦労、撮影現場の裏話や撮影エピソード、さらにこの映画に対するそれぞれの想いが語られました。

撮影自体はもう2年前に終了しているので、久しぶりの再会となり、当時を思い出しながらそれぞれのエピソードが語られています。NY出身のマーティン・スコセッシ監督のコメントについては英語で掲載し、翻訳しているので、ぜひ英会話の学習にお役立て下さい。

司会者から、まずはマーティン・スコセッシ監督に

舞台挨拶ではマーティン・スコセッシ監督をはじめ、6名の日本人の出演者が登場しました。

まずは壇上の司会者からマーティン・スコセッシ監督にさまざまな質問がされました。

 

撮影を終了したのは2年前ですが、日本の出演者に久しぶりに会った感想はいかがですか?

 

Well, I was saying earlier that it’s an extraordinary thing to be able to be all together again, here in Tokyo.

えーと、さっきも話していたんですが、ここ東京でまた集まれるのは凄いことです。

 

Of course, for me and the editor Thelma, we’ve been with them every day for 2 years, in the editing room, so it’s almost as if I saw them yesterday.

もちろん、私と編集のセルマは2年間毎日、編集室で彼らと共にいました(※彼らを見てきた)から、ほとんど昨日会っていたような感じです。

 

Eh, can I tell you how many friends of ours and family, and also people who have just seen the film, comment on everyone in the film?

ああ、それと映画を観た後の人や私達の友人や家族が、出演者ひとりひとりについて何と言うかを伝えていいですか?

 

They say, “And this person! And that person!” So they become very familiar to many many people.

「ほらこの人! ほらあの人!」と言って、多くの人たちが、彼らにとても親近感を持つんですよ。

 

 

映画で伝えたかったことを、あえて言葉で表現するとどんなことでしょうか?

 

Well, I will try [to put it in words].

うん、〔言葉にするよう〕やってみます。

 

Of course, I was moved and inspired by extraordinary work of Shusaku Endo, and his, this novel plus all his work [he did for it].

言うまでもなく、私は遠藤周作さんの並みならぬ仕事、彼のこの小説だけでなく〔彼がそれに注いだ〕、全ての仕事に感動しましたし、ひらめきをもらいました。

 

And so, it took me many years – almost 27, 28 years – to be able to bring this to the screen for many reasons, one of which was that I had to begin to understand what Endo was trying for [with the novel].

それだけに、これ〔※この映画〕をスクリーンに持ってくるまで何年も、大体27、28年も、かかりましたし、その理由のひとつは私自身、遠藤さんが〔その小説で〕何を成そうとしていたのかを理解し始めなくてはならなかったということです。

 

And once I thought I understood it, then it was a matter of trying to visualize and interpret it, that ultimately myself and my co-writer Jay Cocks were able to do.

そして、いざ理解したと思ったら、あとは絵を描くことと解釈することが問題なわけですが、私と共同脚本家のジェイ・コックスはついにそれ(脚本)が出来ました。

 

But that, by that point, was 2006. So [it] took many years to convey what I thought Endo meant.

でも、その地点に至る頃には2006年でした。ですから、私が考えた遠藤さんの言わんとしたであろうことを伝えるために何年もかかりました。

 

And I think, for me, learning to live with his work, and his book, and culture went side by side with growing in my life, and my life changing, and my family changing, becoming a father again.

あと、私が思うに、私にとって、彼の仕事、小説、文化と共に暮らすことを身に染み込ませていくことが、再び父親になったり、変化する私の生活、変化する私の家族と、私の生活の中の成長と平行して進みました。

 

All these different things somehow enriched the project, and made it clearer for me, I think, until I was able to get financing to finish the film.

こういった全ての物事が、この映画を完成させる資金を得られるまで、何らかの形で企画を豊かにして、より私にとって〔遠藤さんの目的を〕明確にしていったと思います。

 

 

ここにいる、日本人出演者の演技についてどんな感想をお持ちですか?

 

My comment, haha, comment over to every one of them. It’s somewhat overwhelming.

話す、はは、ひとりひとりについて話すんですか。それはちょっと大変ですね。

 

The best I could do, I think, was to shape and present their hard work and――I don’t say this lightly――the depth, and their power as actors.

私が尽くせる最善は、彼らの熱意がこもった仕事と――これを軽くは言いません――深み、そして役者としての力を、かたちにして、見せることだと思います。

 

Present and shape them in the best way possible.

可能な限りで最高のかたちにして、見せる。

 

We tried, and it took almost a year and a half to edit the film.

私達はそれを試みていて、この映画を編集するのにほぼ1年半かかりました。

 

 

日本人出演者の作品と監督についてのコメントに注目!

映画の撮影は相当過酷だった様子。そればかりか慣れない英語でのせりふを言いながらの演技は日本人の俳優陣にとっても挑戦だったはず。

みなさんのそれぞれの想い、撮影中の知られざるエピソードを語ってくれました。映画を観る前も、観た後でもチェックしてみましょう。

 

窪塚洋介

こんな極東の国のどこの馬の骨かも分からない僕に、監督は大変な敬意を払ってくれました。どれだけ山の上が厳しい寒さだろうが、どれだけ正座長いことさせられて膝が痛かろうが、そんなもの幸せの一部だろ、と思えるくらい、ホントに幸せな時間を過ごさせてもらいました。

オレ達は「和」の国の民です。PeaceとかCompassionとかRelationshipとか、和の心を持ってます。マーティン・スコセッシ監督の想いが、遠藤周作さんの想いが、みなさんに届いて、より良い明日が来ることを、オレは信じて疑いません。今日この場所が僕の役者人生で最良の日です。

 

浅野忠信

監督は常に僕らの繊細な動きや表現を見逃さず見てくれていて、その中でも新たなアドバイスを頂けました。僕の演じたツウジはとても難しい役でしたが、監督のアドバイスがあって初めて乗り越えられたと思います。僕らのことを見守り、一緒にモノを作っていく姿勢はとても勉強になり、他の俳優さんの演技も想像していたもの以上のものが描かれていたので、楽しんでもらえる映画になっていると思います。

 

イッセー尾形

この役でオーディションした後、幸いにもたくさんの時間があったので、僕は毎日まるで我が子のように“井上”を育てたんです。でも、我が子を悪人に育てる親がいないように、根は優しい子に育てました。で、私はその優しい子のように演じたんです。そんな様子を監督は優しく見守ってくれました。

 

塚本信也

役では敬虔なクリスチャンでしたが、僕自身は特別な宗教という訳ではないので、自分の中で「スコセッシ教」と称して信者となりました。ですからはりつけのシーンでも、「もしかして死んじゃっても仕方ないのかな」なんて(笑)。それほどスコセッシ監督の言うことは全部聞いて、すべてを捧げる姿勢でのぞみました。

監督は俳優に自由に演技をさせてくれて、何か提案しても、No.と言うことはなく、全部素晴らしいって言ってくださって、“Excellent~~‼”って言ってくれるんです。僕も監督やる時は真似しようと思います。

この映画は長く観られる歴史映画だと思います。こんな作品に関わることができて本当に幸せです。

 

小松奈々

この映画を撮影していた頃、まだ19歳だったのですが、とても刺激的な現場で光栄でした。

慣れない英語でのせりふでは、どうやって英語でお芝居したらいいのか、例えば感情をどこに持って行ったらいいのかなど、すごく迷って壁にぶつかりました。その時は英語の先生や監督にささえてもらったり、まわりの役者さんたちの生のお芝居を観たりして、乗り越えることができて、貴重な体験ができました。

また、原作も読んでみましたが、難しい言葉も多くてなかなか簡単に理解できなかったりしたので、公開後の自分と同じような若い人たちからどんな反響があるのかが楽しみです。

 

加瀬亮

モニカの夫で小さな役だったんですが、共演者と監督の名前を聞いてぜひ参加したいなと思いました。

何かを自分が信じているような気持になるように、演技していました。

 

 

出演者のコメントを聞いたスコセッシ監督のコメントとは?

日本人出演者のコメントはすべて同時通訳で訳され、それらを聞いたマーティン・スコセッシ監督は大笑いしたり、うなずいたりしていました。司会者がそれらのコメントについて監督にいくつか質問したり、その発言について出演者に質問し、さらに他のエピソードも聞いていきます。

 

監督も当時のこと、思い出されたのではないでしょうか?

 

Yes, it does. I mean, as far as I’m concerned as a filmmaker, apparently.

はい、〔甦るものが〕あります。いや、映画監督である私にとっての話になりますが、明らかにあります。

 

It probably was the hardest, most difficult, physical and emotional shoot of any movie I made in the past since 1973.

〔今回の制作は映画監督を始めた〕1973以来、過去に作ってきた映画の中で、おそらく一番大変で、難しく、体力を費やし感情的にもなった撮影だったと思います。

 

Normally, since I am an asthmatic New Yorker who lives in small rooms and grew up in tenements, I am usually allergic and have a bad reaction to anything in nature.

私は、小さい部屋に住んで共同住宅で育ってきた喘息もちのニューヨーカーですから、普段なら、たいてい自然の中にあるものにアレルギーがあって、酷い反応を起こします。

 

And, so making of this film was, for me, a struggle, but the moment that I put my foot onto the ground and started climbing those mountains, and seeing everyone with us, it became a joy.

だから私にとって、この映画を作るのは苦闘でした。が、その〔現地の〕地面に足を置いて山々を登り始めて、みんなが一緒にいるのを見た瞬間、それは喜びになりました。

 

It became a joy, and I regret the years that I was not able to – because of my physical condition – to be a part of that world, nature.

喜びになって、自分の身体的条件のために、自然というそんな世界に溶け込めなかったそれまでの年月を後悔しました。

 

(Turning emotional and fast-speaking, jumping mid-sentence to the next)

But really, I must say it had to do so much with――they were like the bedrock of the whole movie, the actors!

(感情的・早口になって文の途中で次に跳ぶように)

でも本当に、これは言わねばならない、その大きな要因は――彼らが土台みたいなものでした、作品全体の、俳優陣が!

 

They were really the bed――whenever we were having difficulties, troubles every 5 seconds, myself and Andrew when we go, we overlook at them, they are fine. Ha-ha!

本当に彼らが――困難がある、5秒ごとに問題があるような時いつだって、私とアンドリュー〔・ガーフィールド〕が歩いていて、遠くにいる彼らを見下ろすと、彼らは平然としてるんですよ。あはは!

 

And we say, “OK, on we go,” because they are the bedrock of the picture.

で私達も「よし、続けよう」と言う。それも彼らがこの映画の土台だったからです。

 

And a proof of this, too, for me, is that my editor Thelma, whom I’ve worked for 40 years, does not come to the set.

それともうひとつ、私にとってその証明だったのが、40年間一緒に仕事してきている編集のセルマ、彼女は現場には来ません。

 

She sees the rushes, and she would talk about, “These people are wonderful!” Ha-ha!

彼女が編集前のラッシュ映像を観て、「この人たちは素晴らしい!」って言うんですよ。あはは!

 

And she was the one just seeing the beauty of what they were able to do on camera. It was amazing.

カメラの前で彼らがやってのける「美」を見抜くのは彼女だったんです。

 

And so, this was supported by everyone on the crew in the production.

このように、この事〔※俳優陣が土台だった事〕は制作に携わった全員から賛同されていました。

 

 

振り返ってみれば笑いが起こる、俳優陣が語る、それぞれの辛い撮影現場のエピソードは?

撮影現場はもちろん、海の中ではりつけにされるなど、かなり過酷なシーンの撮影の連続。そのようなシーンは、出演者によって大変だった様子。ここからはグループトークで、撮影中の演出や監督の指導について語り合いました。

 

たくさんの辛いシーン、浅野忠信さんはいかがでしたか?

あの、僕は通訳役だったので、あんまりそういう辛いシーンがないんですよね(笑)。大体、「あっちでこんな辛いことしてましたよ」とか言うだけなので。一度大波を起こしてセットの撮影現場を見に行きましたが、これは僕にはできないな、と思いました(笑)。

 

大波の大変切ないシーンですが、それを演じた塚本さんはいかがでしたか?

僕はスコセッシ教の信者なので、苦業も喜びのひとつですね。でも、いろんなことのスケールがデカいんです、だから波もデカいんですよ(笑)。

僕はその大波の中セリフを言わなくちゃいけないんですけど、どうしても鼻に水が入って咳込むんです。咳込みを抑えてセリフを言おうとするともう次の波が来ちゃって、どんなタイミングで言えばいいのか、すごく難しくて。その悲壮感が顔を引きつらせてリアリティのある演技ができたのかもしれませんね(笑)。

 

I must say that he was so extraordinary that some of the crew was in tears watching it.

これは言っておかなくちゃならない。彼〔の演技〕が余りに迫真だったから撮影隊には見ながら泣いてる者もいましたよ。

 

小松さんはアンドリュー・ガーフィールドさんたちとの共演や撮影中のエピソードは何かありますか?

アンドリューさんは減量もしていて、とてもストイックに過ごされていたので、お話もなかなかする機会がありませんでした。

出来上がった本編を観ても、彼の出演部分は私なんかとは比べものにならないほどはるかに過酷で。撮影終了時にはハグしてくださって、もう少しお話する機会があればよかったのに、と思いました

 

小松さん自身、監督からの演出の思い出、何かありますか?

はい、その日は悲しい感情をむき出しにする、結構重要で大変なシーンが予定されていて、一日中撮影をしていたのでずっと待っていました。

そして日が暮れるころにようやくそのシーンの撮影だと知らされて、思いっきり演技をしてOKをもらいました。

そして翌日になったらプロデューサーやスタッフの方々がたくさん私のところに来られて、「Nanaごめん、昨日のあのシーン、日が落ちちゃって編集でつながらなかったんだよ。もう一回今日やってもらえない?」と言うので、とてもショックでその演技に挑んだ時の感情を思い出したりして泣いてしまったんですが、でも「もう一度観てもらえるなんて幸せなことだな、必要とされているんだな」と思えるようになりました。

 

Well, I must say that we were――at that moment when she reacts, and I don’t wanna give away――scenes in the film she reacts――we were stunned by her performance.

えーと、正直な話、私達は――彼女が酷い反応をする瞬間、ネタばらしはしたくない――映画の中で彼女が反応する場面で――私達は、彼女の演技に度肝を抜かれました。

 

So, [it was] so painful to ask her to do it again. But when she did it again, it was just as stunning the next day.

ですから、もう一度やってとお願いするのがとても辛かった。でも翌日、彼女が再びやってくれた時、全く劣らず度肝を抜く演技でした。

 

And, you know, [she was] totally dependable on the highest level of emotions. It was quite an experience.

お解りでしょう、極度の感情〔表現〕において全幅の信頼を置けるものだったんです。印象的な体験でした。

 

加瀬さんは小松さんのお話を聞いていかがですか?

小松さんて普段ダルそうに見えるんですが、演技になると200%くらいの力を出してこられるんで、そのシーンのことはよく覚えてます。一日の撮影が終わるともう倒れちゃうんじゃないかと思うくらい、毎回力を出し切っちゃうんですよ。

だから撮りなおしは大変だろうなと思いましたが、監督がおっしゃったように、翌日も同じ力で演技をしたので普段はパワーを蓄えてるのかな、と思いました(笑)。

 

海外ではイッセー尾形さんのシーンでは笑いが起こるそうですが、撮影はいかがでしたか?

僕は役作りをして、監督の前に衣装を着て行けばいいですが、日本のスタッフと海外のスタッフが一緒に取り組むことで、言葉の違いはもちろん、担当が変わったり、本当にとんでもないことが起こっていて大変だったようです。

また、出演者の衣装もたくさん洗濯をして、朝早くから夜遅くまで彼らは泥だらけになったりして。また次の日はけろっとした顔で迎えてくれて撮影が始まる。ですから彼らの努力でこの映画は成り立っているんだな、と思いました。

 

 

沈黙ーサイレンスー

Silence

全米公開:2016年12月23日

日本公開:2017年1月21日(土)より、全国ロードショー監督:マーティン・スコセッシ

出演〔役名〕:アンドリュー・ガーフィールド〔ロドリゴ〕、リーアム・ニーソン〔フェレイラ〕、アダム・ドライバー〔ガルペ〕、窪塚洋介〔キチジロー〕、浅野忠信〔通辞〕、イッセー尾形〔井上筑後守〕、塚本晋也〔モキチ〕、小松菜奈〔お春〕、加瀬亮〔チョーキチ〕、笈田ヨシ〔イチゾウ〕

 

配給:KADOKAWA

 

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翻訳/ケネス宮本

 

 


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