映画で学ぶ|ムーンライト MOONLIGHT

2017年第89回アカデミー賞

作品賞、脚色賞、助演男優賞作品

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知っておきたい英語・文化のワンポイント

学校の授業では教わらない、Ebonicsと呼ばれる表現の特徴とは?

セリフを文字で見てみると、「あれ? 習っていた文法と違う」と思う部分がたくさんありましたね。

例えば、

Who is you Chiron? ➡ Who are you Chiron? じゃないの?

You ain’t it. ➡ You aren’t it. じゃないの?

 

これらは決して間違いということではなく、黒人の方々が使う独特な言い回しなんです。この黒人文化における英語の使い方はEbonicsとも呼ばれます。

この英語のスタイルが生まれた背景は諸説ありますが、一説は、アフリカからの奴隷の人々が、方言の違う他の地域から、あるいは、ヨーロッパから既にやってきていた労働者の人々と意思疎通しやすいように発展した・・・などというように、言語や文化の違う人々とのコミュニケーションの必要性から生まれたもの。

ですので、動詞の活用にとらわれず、We be walking. とか、be 動詞を使わずにShe cute.「標準」と言ったりと、英語を簡略化した形がよく見られます。

 

それでは、具体的に例をいくつか見てみましょう。

 

この予告編の中で、2度使われていたのがain’tです。これがまた、なかなか便利なもので、

ain’tare notam notis nothave nothas notと、be 動詞の否定形とhave/hasの否定形を兼ね備えています。

 

これを踏まえてセリフを見てみると、

No…I’ve seen good. You ain’t it. ➡ 本来は、No…I’ve see good. You aren’t it.

I ain’t seen you in like a decade… ➡ 本来は、I haven’t seen you like a decade.

 

このようにしてくれると、小さなミスを気にする必要もなくなって、会話もはかどりそうですね。

 

 

もうひとつ特徴的な言い方が、

Can’t let nobody make that decision for you… 「他人に決めさせちゃいけない・・・」

 

「~ない」と否定の内容を言いたいこのセリフ。否定の意味のあるNotnobody、ふたつをひとつの文に入れている文章です。

でも英語の文法通りに書くと、

Can’t let anybody make that decision for you… となるはずで、もしみなさんが英語の試験を受けたりする時には、こう書かないと点数にはなりません。

Ebonicsでは、否定の文章を作りたい時には、notに加えてnobodynowherenothingなどを一緒に使います。ここでも、細かな文法のルールを気にせず文を作れることになりますね。

こういったEbonicsの特徴をつかんでおくと、映画のセリフだけでなく、ラップなど音楽の歌詞も理解しやすくなります。英語のさまざまな発展系、調べてみると面白いですよ。

 

 

予告編のセリフとその英訳はこちら!

Chiron (Trevante Rhodes):

What…what ya’ looking at me like that for?

シャロン(トラバンテ・ローズ):

何だよ・・・なんでそんな風に見るんだよ

 

Kevin (André Holland):

Oh, what man? Come on! You just drove down here?

ケビン(アンドレ・ホーランド):

何?いいじゃないかよ。ただ何となくドライブしてきただけなのか?

 

Chiron:

…Yeah.

シャロン:

…そうだよ

 

Copy:

From Director

Barry Jenkins

 

監督 バリー・ジェンキンスが贈る

 

Kevin:

Who is you Chiron?

ケビン:

お前は誰なんだよ、シャロン

 

Chiron:

A long time try not to remember…

シャロン:

ずっと思い出さないようにしていた・・・

 

Chiron:

Try to forget all those times…

シャロン:

あの頃の全てを忘れようとしていた・・・

 

Juan (Mahershala Ali):

At some point you gotta decide for yourself who you gonna be.

フアン(マハーシャラ・アリ):

そのうち、自分の将来は自分で決めないといけないんだ

 

Juan:

Can’t let nobody make that decision for you…

フアン:

他人に決めさせちゃいけない・・・

 

Juan’s wife:

 You gonna tell him why the other boys kick his ass all the time?

フアンの妻:

あんた、いつも周りの子達があの子をいじめてる、その理由を言うつもりなの?

 

Teresa (Janelle Monáe):

What’s wrong?

テレサ(ジャネル・モネイ):

どうしたの?

 

Chiron (Ashton Sanders):

I’m good.

シャロン:

何でもないよ

 

Teresa:

No…I’ve seen good. You ain’t it.

テレサ:

いや・・・いつもと様子が違う、何かあったのね

 

Kevin:

Remember the last time I saw you?

ケビン:

最後に会った時のこと覚えてるか?

 

Paula (Naomie Harris):

You’re my only…and I’m your only.

ポーラ(ナオミ・ハリス):

私にはあなただけ・・・そしてあなたには私だけ

 

Paula:

Oh, no no no, you gonna listen!

ポーラ(ナオミ・ハリス):

ちょ、ちょっと、聞きなさい!

 

Chiron:

To who Ma? Huh?

シャロン:

はあ? 誰の言うことを?母さん、

 

Chiron:

To you?

シャロン:

母さんの言うことを聞けって?

 

Who is you man?

お前は一体誰なんだよ?

 

Kevin:

I ain’t seen you in like a decade…

ケビン:

もう10年もお前に会わない間に、

 

Kevin:

It’s not what I expected.

ケビン:

こうなるとは思っていなかったな。

 

Chiron:

Well what did you expect?

シャロン:

じゃあ、どうなると思ってたんだよ。

 

Copy:

Moonlight

Coming soon

 

ムーンライト

近日公開

 

 

ムーンライト

MOONLIGHT

日本公開:2017年3月31日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国公開 

全米公開:2016年10月21日

監督:バリー・ジェンキンス

出演〔役名〕:トレバンテ・ローズ〔シャロン〕、アッシュトン・サンダーズ〔ティーンエイジャーのシャロン〕、アレックス・ヒバート〔幼少期のシャロン〕、マハーシャラ・アリ〔フアン〕、ナオミ・ハリス〔ポーラ〕、アンドレ・ホーランド〔ケビン〕

配給:ファントム・フィルム

公式サイト:http://moonlight-movie.jp/

公式Twitter:https://twitter.com/moonlight_mov

公式Facebook:https://www.facebook.com/moonlight.movie2017/

©2016 A24 Distribution, LLC

 

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