フリーカメラマン 橋本勝美さん
「文法なんて気にせずガンガン話そう!」

Successful Interview!
~英語力を活かして働く~ Vol.03

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「英語を学び、英語力を活かした専門職に就きたい」という方向けに、自分の夢を切り開いてきた先輩に成功の秘訣を紹介するインタビュー連載。第3回目は、高校卒業後にアメリカの映画学校へ進学、ロサンゼルスでスチールカメラマンとして活躍し、現在は日本でフリーのカメラマンとして活動されている橋本勝美さんをお迎えしました。

 

――留学したきっかけは?

 

和歌山の進学高校を卒業したあと、1年間バイクを乗り回していたんですが、母から「大学に行くならお金は出すよ」と言われて留学を決めました。
実は、子供のころから洋画や洋楽が好きでした。できれば、アメリカでバンドをやってみたかったんです。高校では英語も得意でしたし、それほど困ることはないかなと思っていました。

 

――実際はどうでした?

 

完全に打ちひしがれましたねぇ。日本だと、日本語が話せない外国人の立場になって考えてもらえるじゃないですか。アメリカ人は「Speak English or Die」くらいハッキリしています。ですが、逆に肌の色や国籍は関係なくて、英語がベラベラでグリーンカードをもっていればブラザー扱いしてくれるんですよ。

 

――学校の勉強は大変だったのでは?

 

最初の1年間はABCから始まるくらいレベルが低いコネチカット州のESL(English as Second languege)だったので大丈夫でした。その後、洋画が好きだったので、ロサンゼルス州立のシティカレッジ(公立の短期大学)の映画学科に入学したのですが、ここは大変でした。教授からすれば授業ついてこられる語学力を持っているのが当たり前なんです。だから、授業内容に関する質問はいつでも受け付けてくれますが、「聞き取れませんでした」なんて質問は無視されます。むしろ「ESLに帰れ!」みたいな状況ですね。

 

――英語はどう学ばれたのですか?

 

やはり、アメリカ人と接するのが1番ですね。自分は「スイサイダル・テンデンシーズ」というバンドのマイク・ミューアー(ボーカル)にバンド仲間を紹介してもらい、彼らとのコミュニケーションを通じて学習しました。もう、ちゃんとした文法で言わなきゃいけないとか、単語を知ってないと相手に失礼とか、そういうことは考えなくていいんです。ガンガン話したほうが相手も喜びますしね。実際、「プロスケーターになりたい!」とか言ってESLにも通わず遊んでいる20代のほうが、3年くらい経つと綺麗な英語を話しているんですよ。

 

――卒業された後は映画の道に?

 

コミュニティカレッジは2年制なので、ほとんどの生徒たちはUCLAなど大学の映画学科の3年生へと転入していきました。しかし、自分は学生時代からグリップ(“grip”撮影機材の技術スタッフ)のアルバイトをしており、「映画は自分の進む道ではないな」と思っていました。

 

――そこでスチールカメラマンの道を選んだわけですね

 

はい。シティカレッジでは、オプションのクラスとしてスチール写真の授業もありました。当時はフィルムだったのですが、撮影から現像処理を覚えました。また、映画の授業ではライティングもやっていたので、そのままスチールに移行できる環境があったんですよね。そこで、卒業後はスチールを目指そうと思いました。

 

――簡単になれるのですか?

 

いや、3か月くらいは全然仕事が見つからず、古着屋でアルバイトをしていましたね。そんな時、知り合いから日系人の経営する編集プロダクションを紹介されたんですよ。当時は「LAブーム」があって、日本からひっきりなしに取材の仕事などがあったんです。その制作会社も多数の依頼を受けていて、日本の文化を理解するカメラマンがほしかったわけです。紹介してくれた人は呑み友達で、たまたま制作会社のスタッフから求人の話を聞いて私に連絡をくれました。人との出会いは本当に大事だと思います。ただ、仕事は順調だったのですが、会社自体が始めた別事業に失敗して消滅してしまいました。

 

――それでフリーの道へ入ったわけですね

 

はい。ただ、アメリカで働くためには「報道関係者ビザ」が必要なんです。これは、ほかのビザと違い、日本の会社にバックアップしてもらわないと取れないんです。そこで、1度日本に帰り、これまでの実績をポートフォリオにまとめて営業活動をしました。幸いLAネタを随時日本に送ることを条件に、ビザのサポートをしてくれる会社が見つかり、ほかの出版社からもオファーがきたので、すぐにLAに戻りました。
現地では日本の仕事だけでなく、アパレル系の知り合いを頼ってカタログの写真なども撮りました。最終的には14、5年やったと思います。

 

――カメラマンとして英語力は役立ちましたか?

 

アイス・キューブ(Ice Cube)とかスヌープ・ドック(Snoop Dogg)とかの写真を撮ったことがあるのですが、高い英語力は必要ないかもしれません。日本と違ってアメリカでは年齢とか関係ないですから、どんな大御所でも「~してよ」とかタメ口でも命令系でも全然OKなんです。また、英語圏以外の海外モデルを撮影する機会もあり、彼女たちとのコミュニケーションに役立ちました。実際に撮影で英語を使う時は、複雑なことは言いません。“Move to your left.”(左へよって!) “Come closer to the camera. ”(カメラに近寄ってきて!) “Put your hand into the pocket. ”(ポケットに手を入れて!)みたいな感じです。ただ撮影の前に、どういう風にしたいかってことを、伝えておきます。カメラ撮影は、我の強いスタッフもたまにいるので、ちゃんと共通のゴールを設定してあげる必要があるんです。

 

 

 

――最後に読者に応援メッセージをお願いします。

 

絶対に1度は海外に住んでみたほうがいいですね。日本がいかに特殊な環境なのかがわかります。これから、国際的な仕事をするのであれば、相手の気持ちを理解することが必要です。それには、実際に触れてみるしかないんですよ。なるべく早くに日本を出て、20代のうちに帰ってくるといいと思いますよ。
でもアメリカはオープンな社会ですから、若くない人でも給料を上げるためにMBAを取得しに学校に通う人もたくさんいます。若い人ほど順応性があるのでオススメですが、年齢などは気にせずに、スキルアップするために留学するのもありだと思います。

 

■プロフィール
橋本勝美
和歌山県出身。高校卒業後渡米。LA City Collegeの映画学科を卒業した写真家、ケニーホンダ氏が運営する製作会社にスチールカメラマンとして勤務した後フリーランスに。日本のファッション誌を中心に活動。また、ギタリストとして参加していたハードコアバンド、STRAPTはHawiino Recordsよりアルバムとシングルを発表し、スヌープ・ドッグのヨーロッパツアーの前座を務めた。アルバムにはCypress Hill、Warren Gを、シングルにはドイツのミリオンセラーラッパーのBUSHIDOをフィーチャリング。現在は、日本でフリーカメラマンとして活躍中。

公式サイト
http://katsumihashimoto.zombie.jp/
バンド動画
https://www.youtube.com/watch?v=fLIWFCqOf-o https://www.youtube.com/watch?v=rOGS2EDjWgQ

 

 

撮影・取材・文/さいとうよしかず(編集部)


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