海外赴任予定者必見!
アメリカのいまどきの子どもとママたち

アメリカで失敗しない子育てとは?

Entitled Child”(エンタイトルド・チャイルド)という言葉を、見たり聞いたりしたことがあるでしょうか。”Entitle”は「権利を与える」という意味ですから、受け身だとbe entitled to〜で「〜の権利を持っている」という意味になります。
「権利がある子ども」……権利って何? 何か優秀な行いをして、海外留学に行く権利をゲットしたってこと? ブーッ。違います。権利とは、「甘える権利」。つまり、”Entitled Child”というのは、「自分が欲しいものを何でももらい、したいことを何でもできる権利がある」と、思いこんでいる子どものことなのです。

 

1例を挙げましょう。少し前、アメリカで両親を訴えた18才の女の子がニュースになりました。 両親に家を追い出され、友人宅に身を寄せながら今でも高校に通っているという彼女は、両親に学費の支払いを要求し、なんと裁判所に提訴したのです。
でも、親の言い分によれば、そもそも娘は何度も停学処分を受けるような問題児で、家のルールをすべて無視し、成人年齢の18才になると自分から家を出て行ったのだとか。学費を要求するなんて「高級店で買い物をして請求書を送りつけるようなものだ」というのです。
親の言い分を信じるとすれば、この女の子は「子どもとして親に従うことを拒絶する一方、自分は無条件で扶養され、学費を出してもらう権利がある」と思いこんでいる、”Entitled Child”なのです。

 

悪いお手本だらけの世の中で、自分の子どもが”Entitled Child”に育ってしまわないだろうか? そうならないためにはどうやって子どもをしつけたらいいのだろうか? これが現代のアメリカの親御さんたちが抱える、共通の悩みの種なのです。

 

この問題に対して、ひとつの回答を出した女性が、スーザン・タツイ=ダーシーです。彼女は、日系三世で、私立学校を自ら立ちあげた教育者です。
彼女は、著書である『エンタイトル・チルドレン: アメリカン・タイガー・マザーの子育て術 (Our Entitled Children: An American Tiger Mom's Story)』の中で、子どもの周りをブンブン飛びまわって世話を焼く「ヘリコプター・ママ(Helicopter Mom)」の存在を問題視しています。子どもの自主性を重んじると称しながら、実はわが子が嫌な思いをしないように心を砕き、そのためなら不正手段さえいとわないヘリコプター・ママこそが、現代アメリカの典型的な母親像であり、”Entitled Child”を育ててしまう温床だというのです。

 

そして、そのヘリコプター・ママの対極となるのが、著書のタイトルにもなっている「タイガー・マザー(Tiger Mother)」です。どこかで聞いたことがある言葉ではありませんか? そう、数年前、すさまじいスパルタ教育ぶりで話題になった、中国系アメリカ人の大学教授、エイミー・チュアが著した本のタイトルです。娘をカーネギーホールで演奏するほどの音楽家に育て上げた著者の、子どもの人格をまるっきり無視したような教育法(たとえば子どもにオールAの成績を修める以外の選択肢を与えず、学業以外の社交活動を一切禁じるなど)が賛否両方を呼んだ、あのタイガー・マザーです。

 

タイガー・マザーのチュア氏は、はじめは自分の教育方針に揺るぎない自信をもって臨み、後に末娘のこっぴどい反抗に遭って間違いに気づきます。
彼女の娘は、家族で来たモスクワ旅行で、それまでくすぶっていた不満を公衆の面前で爆発させました。激しいショックを受けたチュアは、無理強いしていたバイオリオンをやめさせることに同意し、代わりに娘が本当にやりかったテニスを習う許可を与えました。タイガー・マザー式教育法の限界を悟ったのです。

 

その経緯から、スーザンはタイガー・マザーとヘリコプター・ママ、それぞれの良い面を組み合わせた「アメリカン・タイガー・マザー」式教育法を実践し、みごとに二人の娘を名門スタンフォード大の医学部とクレアモント・マッケナ大に送りこみました。
成功したのは学力だけではありません。二人の娘は、人間的にも素晴らしい女性に育っています。たとえば次女のジャクリンは、母親が校長をつとめるメリット・アカデミー在学時、14才にして非営利団体「キッズ・フォー・ハイドロゲン」を立ちあげました。これは、未来を担う子どもの立場から、燃料電池車の開発・実用化を訴えていこうという組織です。
ジャクリンの活動は、当時カリフォルニアの大気浄化政策に熱心だったアーノルド・シュワルツェエネッガー州知事の目に止まり、知事主催のイベントにVIPゲストとして招かれたりもしました。現在、ジャクリンはニューヨークで念願の環境マーケティングの仕事に就いているそうです。

 

▲スーザンの次女ジャクリンとアーノルド・シュワルツェエネッガー加州知事(当時)

 

では、スーザンはどのような方法で娘を育てたのでしょうか。実は、それほど特別なことはしていません。効率的なスケジュール管理をするとか、夏休みの旅行計画に子どもも巻きこむとか、どの家庭でも出来る、日々のちょっとした工夫で、大きな違いを生んだのです。

 

もちろん、スーザンも、はじめての子育てにとまどい、悩みつつ、ゆとり教育一辺倒の土地柄や他のママさんたちとの確執も経験しました。しかし、娘の成長とともに、少しずつ自分なりの子育て法を確立していったのです。
たとえば、地元のプレスクールや小学校を回って、学習よりも遊びに重点を置くやり方に幻滅した彼女は、自らカリキュラムを作って補習の時間を設けました。ところが、プレイグループ(母親同士が交代で幼児を預け合うしくみ)で、「就学前の児童に勉強を強いるのは間違い」と思いこむ周囲の親たちから「子どもがかわいそう」とつめ寄られてしまいます。
また、娘たちがミュージカル劇やダンススクールで頭角を現せば、ほかの父兄どころかコーチからさえもいじめを受けました。そんな時、スーザンは彼らの行為をエンタイトル症候群ゆえと分析し、距離を置いて冷静に対処し、穏やかに解決していくのです。

 

海外赴任や移住予定で、アメリカの子育てを実践しなければいけないみなさんは、教育法を記した本を読めば、アメリカの教育事情や子育てに関する良いヒントが得られるかもしれませんね。

 

プロフィール: スーザン・タツイ=ダーシー

文学修士スーザン・タツイ=ダーシーは、全米屈指の私立校メリット・アカデミーの創立者兼校長および、メリット・エジュケーショナル・コンサルタンツの時間管理コンサルタント兼進学アドバイザーを務める。また、サンタクララ大学で心理学の学士号、教育行政学の修士号を取得し、カリフォルニア州教員免許を持つ。現在は夫のロブとともにカリフォルニア州サンタクルーズに在住。

●「エンタイトル・チルドレン: アメリカン・タイガー・マザーの子育て術」スーザン・タツイ=ダーシー著、Merit Educational Consultants, LLC刊(楽天およびkoboの下記アドレスから入手可能。ペーパー版も近日発売予定。
http://books.rakuten.co.jp/rk/593f1cd608ca35d398d5a444c4cda7d4/

 

構成・文/e-sheep


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