忖度、一線を越える、35億、ハゲー
など2017年流行語、英語で何て言う?

人気講師イムラン先生が解説

フェイクニュース、プレミアムフライデー

2017年、世間の注目を浴びた「流行語」的なキーワードを編集部でピックアップ。人気英会話講師のイムラン先生に英語で何て言うのか、解説してもらいました。「このハゲ―!」「忖度(そんたく)」「プレミアム・フライデー」「フェイクニュース」など、英語のキーワードについては海外でのこぼれ情報などを教えてもらいました。外国人の友だちとの話題に役立ててくださいね。

忖度(そんたく)/ surmise

英語の surmise は日本語よりも幅広い意味で使われるのが大きな違い

「忖度」(そんたく)という言葉は、森友問題で籠池さんが使ったことで流行しましたね。ネットでも語源や使い方についての解説がたくさん出ています。おおむね、「相手の立場や言動から望みを推し量る」というような使い方をされているようです。 

さて、「忖度」を英語にするとどうなるか。辞書でひくと、surmiseという英単語が出てきます。実際、そんなに使う単語ではないのですが、確かに「忖度」っぽい使い方をしています。

日本語の「忖度」は限定的な使い方をするようですが、surmiseという単語は「忖度」と比べると使い方の幅が広いのが特徴です。surmiseは「忖度」のように、「推し量る」という意味でも使いますが、より広義の「推測する」という意味でも使います。

 

英語で「忖度」を使ったフレーズとしては次のような言い方ができます。

I surmised his intent.
彼の気持ちを忖度した

 

「推測する」という意味を含んだ場合なら、例えば次のような会話で使うこともあります。

I surmise that your presentation went well.
あなたのプレゼンが上手くいったと推測しています

このようにsurmise「推測する」と直接相手に言ったりする場合もあります。

 

英語と日本語だと文化背景も違うので、特にこういった特殊な単語は直訳が存在しないことが多いですが、もちろん近い単語はあるので、ぜひ使ってみてください。 

 

一線は超えていません/I didn’t cross the line.

英語も日本語もとても似た言い方するのがこの表現

この言葉は今井絵理子参院議員と橋本健元神戸市議のスキャンダルのときに使われていましたね。この表現は実は英語でもとても似た言い方、I didn’t cross the line.を使います。「線」はline、「越える」はcrossです。

日本語と同様、いろいろなシチュエーションで使えます。よく聞くのはFBIやCIA絡みの映画やドラマです。こういった映画やドラマが好きな方はぜひ覚えておいてください。どちらの場合も、正義を貫くために法を守るか破るかというようなシーンで登場します。

「忖度」などの特殊な単語や表現は日本語と英語だと言語的、文化的な背景が違うので、直訳はありません。でも、今回の場合だと、言語的、文化的な背景が違うにも拘らず、直訳に近い言い方になっていますよね。言語の習得って、こういうことに気付けるので楽しいと思うんです。

こういうトレンディなキーワードの単語や表現を見かけたら、調べてみてください。実は日本語と似ていたりするかもしれませんよ。

 

このハゲ―!/You bald fuck!

悪態のときはfuck、そして日本人的な褒めコトバはネイティブに伝わりにくい?

今回も議員さんから生まれたフレーズですね。一時は豊田真由子元議員の名台詞を聞かない日は無いというぐらいテレビで放送していましたよね。

「このハゲー!」を自分だったら、なんて言うかなといろいろと考えたんですが、「ハゲ!」と呼ぶだけでは英語では悪態になりづらいなと思いました。確かにハゲていることを気にしている方も多いとは思うんですが、英語だと「このハゲー!」だけでは悪態としては成立しづらいです。

 

英語で言うとしたら、次のような表現が一番近いのかもしれません。

You bald fuck!
このハゲたクソ野郎!

みなさんにはfuckという悪い言葉をあまり紹介したくないのですが、実は僕らは日常的にこのfuckという言葉を使っているんです。日本語で言うところの、「くそ」と同じ程度の感覚で使っているんです。

「くそ! 家に忘れた!」と言いたいときにも、Fuck! I forgot it at home! と言ったりします。ですからネイティブにとっても、実はfuckはけっこう身近な単語なんです。

「ハゲ」は英語だとbaldと言います。でも、これだけだとただの特徴にしかならないため、baldだけでは豊田議員の気持ちをうまく表せません。しっかりとfuckを付けることで「このハゲ―!」という感情表現になります。

話が少し変わりますが、日本語だと身体的特徴だけで相手を褒めることってありますよね。例えば「顔が小さい」。これ英語だと褒め言葉としてはあまり伝わらないんです。言われた方は、「で?」というリアクションになります。日本語でいうと、「ほっぺたありますね」ぐらいだと思ってください。そんなこと言われたら、「で?」って言っちゃいますよね。

英語で悪態を吐くときには、身体的な特徴だけではなくfuckを付けますが、逆に褒めたいときには、「日本ではそれが褒め言葉になるんです、なぜなら…」と説明を加えてみましょう。

 

フェイクニュース/You are fake news.

トランプ大統領の「フェイクニュース」、日常に潜むフェイクニュースにも注意

これはアメリカのトランプ大統領がCNNの記者に対して放った名言ですね。
インターネットの台頭で「フェイクニュース」の数が大幅に増えて、最近では日本でもフェイクニュースがけっこう問題になってますよね。先日の選挙の前後でも少し話題になっていましたし。

僕も実は10年ぐらい前から気になっていました。たまに友人が、絶対にフェイクニュースだろう、と思うような情報をSNSでシェアしていたんです。で、それを見た友人が「そうだったのか!」とそのニュースに乗ってしまうわけです。そしてそのニュースをシェアして、フェイクニュースが拡散してしまうわけです。

最近はフェイクニュースをリストアップしてくれるサイトもあったりして、それを見ているだけでもけっこう楽しいですよ。「ああ、そういえば前にあった、そんなニュースが! あれ嘘だったの!」と思うようなものもあって面白いですよ。

実は英語学習でもけっこうフェイクニュースに近いものが横行してたりします。例えば、ネイティブはHow are you?とは言わない、とか。そんなことが言われていた時代がありました。でも実際には、How are you? みんな使ってますよ。

僕も確かに言わない時期はありましたよ、中学、高校、大学と。大学生のときって、だいたい仲の良い友達としか会わないし、交流関係が狭いんですよ。で、大学生だから、HeyHiWhat’s up? ぐらいしか使わないんです。
でも、いざ社会に出てみると、みんな普通にHow are you?を使っていました。もしネイティブはHow are you?と言わないと言う人がいたら、その人はまだ大学生のノリなんだなと思ってください。

みなさんも英語学習のフェイクニュースには気をつけましょう!

 

35億/3.5 billion

英語で数字を言うのが苦手な人、コツをはたったこれだけです!

ブルゾンちえみが流行らせた「35億」英語だと3.5 billionと言います。日本語で言うときと英語で言うときと桁がずれるので、日本人の方は英語で数字を言うのが不得意ですよね。
日本語で話すときに漢字で数字を思い浮かべる人は、いくらがんばっても英語で数字を言うときにスムーズに言えるようにはなりません。

英語って、「,」(カンマ)で数字を区切るんですが、日本語で言う場合は、「,」で区切りません。だから、そこで明らかな違いが出ます。その違いを修正しようと思うと、漢字と数字の両方を思い浮かべるのですが、その時点で頭の中は大混乱です。

ではどうすればいいか? 

日本語で数字について考えるとき、話すときも数字で考えるんです。漢字ではなく、数字で。そうすると、どちらで話すときも数字がスムーズに出てくるようになります。

実はこれ、うちの英会話スクールの生徒さんで金融関係の仕事をしている方がやっていた方法なんだそうです。彼も英語と日本語の数字に弱かったのですが、常に数字で考えるようになってから、どちらもスムーズに出てくるようになったそうです。

ここだけの話、日本語と英語の数字の変換に関しては、僕よりも圧倒的に早かったです。

なので、英語で数字をスムーズに言えるようになりたい方は、漢字で考えないで数字で考えてください。

 

プレミアム・フライデー/Premium Friday

英語のPremiumはカタカナの「プレミアム」と意味がだいぶ違うので注意

日本語で使われる「プレミアム」と、premiumという英単語は英語の本来の意味とイメージがまったく違います。日本語だと「特別感」というようなニュアンスを含んでいると思います。でも英語だと「特別感」というよりも、「+@の支払いのこと」を指したり、「保険の掛け金」という意味で使われたりする方が多いです。

例えば、一時ネットで流行っていた「フリーミアム・モデル」はご存知ですか? 例えば、あるサイトがあります。そのサイトは登録するだけで、そのサイトのサービスの大方が使える。でも、有料会員になると、すべてサービスが利用できるという仕組みのものです。

こういうときにPremiumを使うのですが、使い方としては、例えば次のようなものがあります。

I can use all the services for a small premium.
ちょっとの追加料金ですべてのサービスが利用できる

と言うように「追加料金」など+@の支払いに対して使うことが多いです。

インターネット・サービスのPremium Planだとわかりますが、Premium Fridayだと最初はちょっと違和感があります。でも、使ってるうちに慣れてくるかもしれませんね。

Premium Fridayが最初は日本にいる外国人にはピンとこなくても、月末の金曜日は会社が早めに終わるPremium Fridayだと言われれば、3回目ぐらいには、Premium Fridayと普通に言ってたりします。
実は外国人はこういう単語にはとてもオープンで、けっこうすぐに使ったりします。なので、外国人に通じる、通じないは気にしないでください。使っていれば、そういうものか、と思うようになります。 

 

ロケットマン/Rocket Man

挑発的な表現「ロケットマン」、2017年の検索ワードで急上昇の「ボケた老人」英語で何て言う?

Rocket Manはアメリカのトランプ大統領が、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏を表したニックネームですね。
別の席でトランプ大統領はこのニックネームについて、「考え方によっては褒め言葉としても捉えられる」と話していました。それはないだろうと思うんですが、そういう言い訳っぽいコメントをしてしまうのも、なんか面白いですよね。

ちなみに金正恩もトランプ大統領をdotardと呼んでいました。これは普段まったく使わない単語で、実は14世紀に使われていた、ほぼ忘れ去られた単語でした。金正恩のおかげで、この単語の検索数が激増したらしいです。

dotardは「弱った、またはボケた老人」という意味だそうです。これから人の悪口を聞くときは、この単語が使われることが多くなりそうですね。

 

 

 

講師プロフィール イムラン・スィディキ

英会話教室「コペル英会話」設立13年目を迎え、mixiの英語コミュニティー登録者10万人、著書多数、オリジナル英語教材10商品以上、YouTube公式チャンネル登録者5万人、メルマガ会員10万人、アプリダウンロード20万人と、現在日本一の実績を誇る英会話講師。この他リクルート社学習アプリ「スタディサプリENGLISH」講師、CNN日本版キャスター、国際バカロレアの公立校導入プロジェクト参加など、多方面で活躍中。

 


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