超合理的アメリカン・キッズの学習法は

プリントを捨て、ノートも取らない?

Kids Are all right 〜アメリカの良い子・悪い子・普通の子〜

2014.04.04 | 注目コラム子ども英語

 

●ノートがいらないアメリカン・キッズの学習ロジックとは?

 

ではなぜ取ろうとしないのでしょう? 実は、アメリカには「下じき」という“stationery”(文房具) が存在しません。これも、ノートを取る習慣に重きを置かないのを象徴しているような気がします。では、ノートを取らず、どうやって知識を身につけるのかというと、質問し、議論し、自分なりに概念を咀嚼することで覚えていくのです。
だからこそ、アメリカの子どもは質問するのに躊躇などしないし、自分が思ったことはどんなに突飛でもドシドシ言い、納得するまで食い下がります。教室では、ピンとこないトピックには反応が薄すぎて、あまり理解もしていない様子なのに、何かしら興味を覚えると、素晴らしく鋭い質問をする子がいます。これがアメリカン・キッズたちの学習方法なのです。大変そうに思うかもしれませんが、なかなか退屈しません。

 

このような学習方法の違いは、日本とアメリカの環境の違いにあると思います。例えば、アメリカでは、大人と子どもの区別や、上下関係の概念が薄いため、相手が教師といえども、意見や考えをぶつけることに子どもたちは躊躇しません。
私の受け持つクラスは、普段はプライベートレッスンなのですが、たまに時間の都合で合同クラスになると、生徒同士が(英語で)大人顔負けの議論を始めておもしろいです。もちろん、本当はおもしろがってないで日本語の授業を進めないといけないんですが、大人ぶったり、知ったかぶりしたいのは、どこの国のティーンも同じですよね。しかし、最初の頃はあまりに大人びた意見に感心していたのですが、実はほとんどが親の受け売りだということが分かって来ました。しかし、こうやって、ほかの子どもと意見を闘わせあっていくうち、自分自身のものの見方ができていくことなのでしょう。だから私たち教師は、せいぜい生徒の見識を広める手伝いをしてあげないといけないなと思います。

 

●アメリカ公立校の問題

 

もうひとつ驚いたことがあります。いまどきのアメリカの教育熱心なママたちは、学業のみならず、ありとあらゆることをわが子に身につけさせたがるということです。例えば、生徒の一人で13才の女の子なのですが、学校ではアニメを観るクラブやダンスクラブにも入っているし、フィドル(弦楽器)も習っているし、フランス語も少ししゃべれるし、日本語教室の後は叔父さんと一緒にジムでロッククライミングをしに行きます。数学が大好きで、花びらを数えさせたらフィボナッチ数列の説明をしてくれます。また、数の単位を教えた時は日本語で“googol”(10の100乗)を何というのか質問するので、先生はタジタジでした。ところが、その子は近所に適当な学校が見つからず、去年まで“home schooling”(自宅学習)だったというのです。
学校へ通うより、自宅学習のほうが優れているって、日本の感覚からすると不思議ですよね? 前述したスーザンの著作でも紹介されていますが、 “public school”(公立学校)の教室では、落ち着きがなく、授業中まともに座っていられない生徒が何人もいます。そのため、先生はそういった生徒に時間を取られて、中身の濃い授業ができないらしいのです。特にアメリカでは“ADHD”(注意欠陥/多動性障害)の生徒が多く、5人に1人がADHDの診断を受けているとさえ言われます。その結果、ホームスクールで学んだ子どもの方が、公立校に通う生徒よりも進んだ知識を身につけていても不思議ではないのです。
ADHDといえば、私の生徒にも1組います。授業では二人の注意が逸れないように、アニメや動物のトピックを考えて進め、話題が意外な方向に飛んでしまっても、ある程度二人に主導権を握らせて臨機応変にやっています。大変優秀な子たちなのですが、何人ものクラスメートと一緒に画一的な授業を進める普通の学校では、やはり支障があるようで、今年地元の高校からの勧めでロサンゼルスにあるADHD専用のエリート校へ転校していきました。
ちなみに、転校先の日本語クラスでは、二人の日本語習得レベルはクラスのうんと先を行っていると言われたそうで、教えた私は鼻が高いです。

 

★まとめ★

日本から海外赴任などでアメリカに来た場合、教育スタイルが随分違うため、ちょくちょく「それはどうか」と引いてしまったり、とまどったりする場面があるかもしれません。でも大丈夫。正解はひとつではないのだもの。そして、アメリカは多様性の国。自分たちの思う通りに生きるのが許される国なのです。肩の力を抜いた“Laid back”でのんびり行きましょう。

 

That’s it” これでおしまい。カリフォルニアは片田舎の小さな語学教室の話を書かせていただきました。何か参考になったり、興味を覚えたりしていただければ幸いです。“Thanks for reading!

 

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構成・文/e-sheep


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