支援ではなく協働で人々の生活を変える
世界が注目する21歳の社会起業家
世界で暮らす 旅をしながら生きる
新しい生き方開拓者 10 人
「世界で暮らす 旅をしながら生きる 新しい生き方開拓者 10 人」は旅をライフスタイルに取り込みながら、人生の時間を充実させる新しい生き方にフィーチャーした特集です。世界を旅しながらできる仕事の創り方、海外での過ごし方、パッキング術や、英語力などのハック術やその新しいライフストーリーに迫ります。「いつか世界で活躍がしたい」、「世界中を移動しながら仕事がしたい」というあなたは必読です。
開拓者5
平成の起業家・牧浦土雅(まきうら・どが)さん
1993年、東京都生まれ。イギリス・ボーディングスクール出身、ブリストル大学中退。19歳という若さでe-Education Projectルワンダ代表に。そこからさらに国際協力機関と農民を繋げる事業も牽引。2014年1月、TED『世界の12人の若者』に選出。今、最も注目されている若手起業家。現在は東南アジアを中心にデータ関連の実験と事業を東京大学空間情報科学研究センターと共同で行っている。NewsPicks Paper『40歳以下の日本人イノベーター』。AERA『日本を突破する100人』。
オフィシャルHP:http://www.dogamakiura.net/
――ドガさんが海外に興味を持ったきっかけは何ですか?
母親が画商をやっている関係で、幼いころから海外にはよく連れていってもらっていました。僕の名前が「土雅」なんですが、これは「エドガー・ドガ」っていうフランスの有名な画家からきていて、それを日本風にして「土雅」って。だから生まれた時から海外が視野に入っていました。それもあって13歳の時にひとりで渡英した時も、海外に対して特別な感じは無かったですね。でも発展途上国には高校生くらいの時から興味がありました。
――なぜ、途上国に興味があったんですか?
1番最初に行った途上国のインドで違和感を覚えたんです。お金を持っている国の人たちより、経済的に裕福ではない彼ら彼女たちの方が幸せそうに見えたんです。学校ひとつを例に挙げても、インドの生徒たちは学びたいという意欲がとても強くて、とても楽しそうに勉強するんです。それを見て、お金のある人たちより貧困と呼ばれる国の人たちの方が幸せに見えて。その違いが面白いなって。所謂パラドックスてやつですよね。
――東アフリカで教育事業を始めたきっかけは?
僕の恩師でもある藤原和博先生から紹介してもらったんです。イギリスのボーディングスクールを卒業して、大学に入学する1年間でギャップイヤー(高等学校卒業から大学への入学、あるいは大学卒業から大学院への進学までの期間のこと)を取ったんです。当時2012年、前年の東日本大震災で僕はイギリスの学校から支援活動をしていた流れで、ギャップイヤーでも東北で手伝えることはないかと思い、先生に相談したら「お前みたいな志を持った人たちはたくさんいるし、今は東北でできることがあまりないから俺が支援しているNPO活動をやってみろ」と言われて紹介されたNPO e-Education が、ルワンダでの立ち上げメンバーを探していて、ルワンダに飛ばされました(笑)。藤原先生が導いてくれたんです、良い意味で。
――東アフリカではどのような活動をしていたのですか?
最初は、1994年に大虐殺があった東アフリカの中央寄りのルワンダで、DVDを使った映像教育のNPOの事業をやっていました。質の良い先生の授業をDVDに撮って、地方で満足な教育が受けられない生徒たちにDVDを届けるという事をしていました。簡単に言えば東進ハイスクールの途上国版。僕らはこれを途上国版ドラゴン桜、なんて呼んでいたり。
そういった活動をしながら地方の農村へ行った時、ものすごい量の売れ残りの穀物が積まれていたんです。一般的にアフリカって飢饉とかのイメージあるじゃないですか。なのにここにはたくさんの農作物が余っていて。輸送チャネルがなく、地方の穀物を買い取る政府すら、そこに入っていけない程の道路設備なので、穀物をたくさん作ってもどこにも輸送できないんです。そんな話を聞いてから国連の方と話す機会があったんです。その当時ルワンダでは隣国のコンゴ内戦が激化して、大量の難民がルワンダに流れて深刻な食糧不足を抱えていると聞いて、「地方にはこんなに穀物が余っているんですよ、これを輸送すればいいのでは?」と提案したら、向こうもキャパオーバーらしくて。だったら僕たちがやりますよって言ったのがきっかけです。足りている所から足りていない所の輸送チャネル、販路を創るということを気づいたらエチオピアやらタンザニアやらに広がっていって。それを2014年の5月までやっていました。商社の原型みたいな。
――それから東アフリカ事業には区切りをつけたんですね
そうですね、ずっとやっていくつもりはなかったので、こういう活動をやっていく中で一番大切なのは現地の人に受け継ぐ事だと思います。その体制も整ったのでルワンダでの活動から手を引きました。
――現在は、東南アジアでデータ関連事業をされているドガさん。具体的にどのようなことをなされているんですか?
バンコクで東大と一緒に様々な人の個人データ、位置情報の提供をして頂く代わりにお金以外の恩恵を還元していく事業を行っています。個人データを頂いて第三者に提供し、ブローカリングで売買利益を設けるという事ではなく、頂いたデータから何が必要を解析してなにかしら対処ができるようにします。
もうひとつは、「個人情報=危険」という固定概念を打ち砕きたいと思っています。特に日本では個人情報が前に出過ぎたがゆえに、個人情報に対するハードルが高くなっています。そういうのを崩していきたい、上手く安全に利用してパーソナルデータを活かすことによってこんな素晴らしい社会が実現できますよっていうのが僕たちの最終形ですかね。
――ドガさんみたいな斬新なアイデアって、どの様に生み出すんですか?
それは勘違いされがちなんですけど、そんなに発想は得意じゃないんです。ノリがいいんですよ。結構いろんな人のアイデアに乗っています(笑)。アイデアを実際の形にしていくのが僕の仕事なんですかね。
あとは常に忙しくしていたいですね。メリハリつけたいんで日本に滞在している時は、都内に居るのは週に2日とか。環境を変えてメリハリをつけます。
――テクノロジーに関心があるドガさんは今後10年ごとかどんな風にテクノロジー事業が変わっていくと思われますか?
ミーハー的にいうとIOT(※)みたいな感じになるんじゃないですかね。アレもこれもインターネットに繋がっていくと思います。いわゆる脳波で。すべてがコネクトされる事によってデータが大量に入ってくるそれをいかした社会ができ上がってくると思っています。
(※)IOTとはコンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々なモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり、相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行う技術。
――ドガさんが今注目している面白い事って何ですか?
テレビ番組ですね。日本でやっているエンターテインメントのコンテンツをもうちょっといじりたいなって思っています。テレビだけにとらわれずユーチューブとか。最近ライブ番組でTwitterのハッシュタグを付けてツイートするみたいなことが進んでいますよね。
事業的に面白いのはやっぱり「ドローン」ですかね。最近ドローン関連のニュースが多いじゃないですか、官邸にドローンが落ちていたり。ドローン云々いっている身としては、ついにそんな時代が来たか! って感じです。
――TEDの動画で流帳に英語を話されたドガさん。どうやって語学を身につけたんですか?
慣れですね。あの動画を撮ったのがまだ10代だったので今はもっとうまく話せますよ(笑)。緊張してたし。次に出るとしたらもっと勉強します。9~10分とかだったら丸暗記します。前回もほぼ丸暗記でしたし。あとは当日のお客さんの感情を見てコメントするくらいで。
小学生の頃は英語が苦手で、宿題も父親にやってもらっていた程(笑)。イギリスに行くという事になって、渋谷の「キャタル」っていう英語塾に通いました。ここは面白い塾で、単語カードに単語を書いて、その裏に意味と例文を書くんですよ。そこまでは普通なんですけど、最初何もわからない状態で行って、簡単な童話の本を渡されてそれを先生と一緒に読んでいくんですよ。教科書みたいなものはなく、本と単語帳だけで。童話は本当に簡単なピーターパンみたいなものでドンドンレベルが上がっていくんです。
――今後の活動ビジョンは?
今後は個人データという大きな概念から少し絞って交通系で、人々の軸になることをやりたいので、インフラをやりたいなと思っています。物流会社を始めるとか鉄道会社を始めるんではなくて、そういう人たちに必要とされるサービスを創りたいと考えています。いろんな人の位置情報を集めることで、ここに道路を作るとか、ここに鉄道を引くことによって意味がある、これだけの経済効果が得られるような。そこから人々にとって役立つ、そういう人たちの生活を変えるような事業をやっていきたいです。東南アジア全域で。
また、僕は30歳を超えてから政治の世界に行きたいんで。やっぱ国外ばっかに行って切に感じましたけど、日本人として日本を変えたいですね。もっとこう、フレキシブルに、シンプルに、柔らかくしたいですよね。ネットで投票できるだけじゃなくて人々の政治に対する意識や考え方変える、みたいな。スウェーデンなんかは若者にお金払ってでも投票に行かせるとか。そのくらいの意思がないと選挙に行かないですからね。でも日本では難しいですよね。政治家に需要がないんで。今の政治の構想自体を変えていきたいです。
――ドガさんにとって世界ってどういうところですか?
遊園地とかじゃないですか? ジェットコースターみたいな恐怖感もあるし。エキサイティングなものが多いじゃないですか。結局はみんな安全にシートベルトをつけてジェットコースターに乗るので、危険だけど絶対死なない。死ぬことはないんだから挑戦し続けることが大切ですね。
――海外に仕事行く際に持っていく三種の神器とは?
フリスクは絶対持っていきますね。飛行機なんかでフレッシュしたい時にとてもいいですよ(笑)。あとはオードムーゲの化粧水ですね、飛行機とか乾燥するんで。日焼けした時とかも使えます。最後はモレスキンのノートブックかな、PCとか電源切れた時とか困るので。
相手に会わせますね。相手がPCとか使っていなかったりする場合はこれに書き留めます。書く方がイイですね、書くとやっぱり覚えるんで。
インタビュー・文/間宵ひろみ
構成/高石真帆