E雑学【7】海外ドラマ・映画を英語学習
に役立てるために知っておきたいこと②
実際どんなふうに使えば役立つ?
活用ポイントを分かりやすく紹介

留学や旅行、海外に行く時や海外にいる時に知っておきたい情報、さらには英語の上達法などさまざまな情報をケンブリッジ大学認定講師であり、海外滞在、留学経験のあるライター、ケネス宮本がご紹介します。海外に行く時や現地で知っておくといいお役立ち情報などをご紹介します。
「使える」と思える単語や表現ひとつでも拾えたら勝ち!
ドラマや映画で学習する時は、以下のことを心得ておくとよいです。
全部を聞き取る・憶えるなんて無理だし不必要
英語を学習している人なら、知らない言葉や表現にはちょくちょく出くわしますよね。
ドラマや英語では、それがドドーと出てきては流れていってしまいますから、分からなくて同然です。
しかも、詰まるところは特定の仮想世界ですから、そのセリフを全て極めても「自分の実際世界」で使えるものは限られます。
僕はよく学習者さんに「ひとつ知っては喜んで、ひとつ分かっては喜んで、ひとつ使っては喜んで、をやっていけば積み上がっていくよ」とアドバイスします。
本当にそうなんです。
「1回何かを観て、単語ひとつ・表現ひとつでも理解できたら良い勉強」だと思ってしまいましょう。
理解できたら、メモをとったり、独り言してみたり、なるべく早く実際の会話で使ってしまいましょう。
ドラマ・映画には「書き言葉」が混ざっている
僕たちの日常の会話を、そのままドラマや映画のセリフにしたら、どうなると思いますか?
言葉数が多くダラダラして、聞き返しや反復もあって、時間ばかりが過ぎるものになります。
ドラマや映画では、セリフをダラダラさせずに的確に伝えるために「書き言葉」が多用されるんです。
例えば、どの映画か忘れちゃいましたが、こんなセリフを聞いたことがあります。
I can’t conceive of it!
そんなこと考えられない!
conceive of itは「その概念をもつ」ということですから、I can’t even imagine it.「そんなこと想像もできない」みたいな意味だと思えばよいです。
その場面では非常に的確、かつ人物の感情にも合った短くて鋭い表現ですが、僕が日常でこんな文語的な言い方をする人に会った経験はゼロです。
まったく同じことを言うにしても、せいぜいI’ve never had a concept like that.「そういった概念をもったことがない」なんて言い方になります。より長いでしょう?
このように、「日常で使われない単語・表現もたくさんある」ことを知っておきましょう。
それを自然に聞こえるようにするのが、俳優さんの仕事の一部でもあるわけですね。^^
では、心得ができたところで、勉強法を見ていきましょう!
教材としての海外ドラマ・映画の有効的な使い方は?
繰り返しになりますが、ドラマや映画を観るのは小説を読むことに似ています。
小説だったら、1日に1ページでもけっこうな勉強量。
書籍1冊には、内容の知識・語学の知識のどちらもありますから、半年・1年をかけてでも価値があるほどの情報量があります。
また、最初の本でそれだけ時間をかけると、読み終わるころにはもの凄い英語の知識を獲得してることになるんです。
当然ながら、次の本を読むのもより楽になってます。
こういったことが、ドラマや映画にも当てはまります。
それを踏まえて、語学教材としてのドラマ・映画の使い方を見ていきましょう。
まずはストーリーや場面展開を知る!
すでに観たことがある作品、何度も観ている作品なら話は別です。
新たに観る作品でしたら、1回目は語学であることを捨てて(むしろ語学のために)、ストーリーそのものを楽しむ・知る時間にしましょう。
ストーリーや場面展開が解ってるほうが、英語そのものに集中できるし、セリフを理解しやすいからです。
やはり書籍でも同じことが言えます。日本語で読んだものを英語で読むんです。
僕は中学の時にミステリー小説「そして誰もいなくなった」を読んで、ちょうど10年後に英語の原書And Then There Were Noneを読みました。
ストーリーは大雑把ながら憶えてましたし犯人も分かっていましたが、作者アガサ・クリスティさんの表現力の豊かさに感動しましたし、めっちゃ英語の勉強になりました。
同じ作品を何度も観る! そして観る時間を区切る!
読書百遍義自ずから見(あらわ)る。
同じ本を何度も読み返していくと意味・真意が解ってくる、という故事ですね。
ドラマや映画も、何度も観る・聴くことでセリフ中の単語や表現が「染み込む」ことになります。
そのためにも、好きなドラマ・映画を教材にするのがイチバン。^^
毎回1時間や2時間も時間を作るのは大変ですし、1回につき長くても15分ぐらいに留めるなど、ご自分の都合や集中力の持続にあわせるのが良いでしょう。
これはちょうど、小説の1章(ないし数ページ頻度の区切り)を読む感じです。
僕は昔、「1章・1区切りを2回読む」というやり方もしました。
1回目ではどうも理解できなかった部分が2回めでは不思議とすんなり分かったりします。
英語のドラマ・映画で英語の字幕オン!
日本語の字幕は、ストーリーを理解するためのもの。
英語の字幕は、視覚的に聴覚をサポートして、セリフで使われている「英語」を理解するために非常に有効です。
DVDなどでは多言語の字幕が用意されている場合が多いですよね。
この機能を使って視覚的に言葉をキャッチすると、「この言葉はこうやって発音するのか」と感動さえするはずです。^^
ちなみに、字幕は画面スペースなどの関係で、実際のセリフより短い場合が多いです。
DVDなどでも、Subtitles: English (for hearing impaired)「字幕:英語(聴覚障害者用)」と特別な目的があっての字幕なので1字1句が忠実ではありません。
ですが、実際のセリフと同じ単語を使いながら文を短くしてる場合がほとんどなので、言葉の理解を助けるのは確実です。
じっくり観なくてもナガラ学習
普段の生活のなかで、特に観るわけでもなくドラマや映画を流しておきます。
すでにストーリーを知ってる作品なら特にやりやすいでしょうし、意識してなくとも「英語漬け」を助けます。
僕は海外でテレビをわざとつけっぱなしで家事や読書をしてました。
時折「なに?」とか「こう言ってる」とか、ピンとくることがあると「英語生活に馴染んでる」って実感したものでしたよー。^^
台本は素晴らしい「読・話」表現の宝庫!
ドラマ・映画のスクリプト(脚本・台本)を読んだことはありますか?
それらがネット上で拾えるんだから、まったくいい時代になったものです。
ドラマ・映画のスクリプトなら、画面スペースの都合で短くなったセリフもそのまま読むことができます。
ちょっと検索したら、こんなサイトがありましたよ。^^
・The Internet Movie Script Database(映画の台本。英語サイト)
台本のなかで、場面設定や人物の動きが書いてある「ト書き」では、極めて簡潔・的確かつ鮮やかな文章的描写がされてます。
人物の名前とともに書かれている「セリフ」の部分は、もちろん多くが「話し言葉」の勉強になるものです。
ト書きの部分もひとつひとつが短く、セリフと交互に書かれてるので、読んでいても小休止・気分転換になる感じで苦になりにくいのが特徴。
(ただし作品の冒頭部ではたいてい場面設定が多く書かれて人物のセリフが少ないです)
ト書きをちゃんと読むのは読解の上級者向けではありますが、ストーリーを熟知してる作品ならセリフを読むだけで場面が解るはず。
映像作品の方と比べて、「本当にこう言ってる!」となるのは当然なことなのに新鮮に感じます。
また、映像作品には見られない部分があって、「ここは撮影で変更があったのかも知れない」などと推理するのも台本の楽しみのひとつです。^^
個人的な余談になりますが、簡潔・的確かつ鮮やかな描写を旨とした脚本というものは読み物として最高の形態のひとつだと思います。
また僕は、ある映画の台本を読んで涙がでるほど感動してしまったこともあります。
そして、「そりゃそうだ。それが反映して映像作品になるんだから、まず作る側を感動させるのが脚本なんだ」と思いました。
いかがでしょうか?
長い記事になっちゃいましたけれど、海外ドラマ・映画というものが、もっと気楽でいい、使い方もいろいろある、と感じてもらえたら嬉しいです。
ぜひ、英語の上達法のひとつとして、ご自分にあった形で役立ててくださいね!^^
ライタープロフィール●ケネス宮本
アメリカ、イギリスなどで計7年の海外生活経験をもつ生粋の日本人。英語教師、翻訳・通訳、コラムニスト。雑学(科学全般・歴史・芸術など)が大好き。色んな言語をカタコトで話すのも大好き。取得資格:ケンブリッジ英語教師資格(CELTA)ほか語学系。