英語力で人生を切り拓く! Vol.1
投資家 清木哲哉氏(前編-2)

Cheer up! Interview
~企業人・エグゼクティブ編~

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――日常生活で困ったことはありますか?

 

一番困ったのは、パーティでアメリカ人がジョークを言った時に笑えないことでしたね。特に楽しい場ではみんな早口で話すので、聞き取れなくて話題についていけずポツンとなることも多かったです。

ニューヨークには色んな人種の人がいて、日本人と比べると、どの人も一様におしゃべりだと感じましたね。特にインドやシンガポールなどのアジア人は、なまりのある英語でもお構いなしに話しまくるので、彼らが何を言っているか理解できないことが多かったです。

 

また一方で、英語ができない人もたくさんいて、英語が話せなくても許されるような雰囲気がありましたね。そんなニューヨークでの暮らしで英語が上達したとはいえないかもしれませんが、自分の考え方にはかなり影響を与えられました。日本にいた頃は、無意識に日本流の考え方や常識を当然のことと思っていましたが、海外に行くとそれは必ずしも通用しないことに気づかされます。「日本の価値観や考え方はあくまで広い世界の中の一つに過ぎない」と相対化することができ、国や人それぞれの違いを個性として受け入れるようになりました。

 

また、コミュニケーションのとり方も日本とは違って、基本はディスカッションをして相手を説得していきます。共通の基盤が無いので、日本のように互いの気持ちや言葉の微妙なニュアンスを汲み取りつつ……という様なやり方は難しく、基本的には物ごとのロジック(論理)を組み立てて話さないと、相手に伝わらないし説得できません。

 

――日本とは文化が全然違いますね。

 

日本を離れてみて気づいたのは、日本は特殊な国だということです。例えば飲食店のサービスも、日本ほどクオリティの高い国はありません。日本だと大衆的な飲食店でも質のいい接客を受けることができますが、高級店はともかくアメリカの大体の飲食店は、悪く言えばセルフサービスに毛の生えた程度のサービスしかしてくれません。私たちが馴染んできた、日本のクオリティが当たり前ではないことが、アメリカに行くとよく分かります。そこそこの高級ホテルでも洗面所の栓が壊れていて水を溜められない……とか、普通にありますから。

 

アメリカの生活は不便ですよ。特に世界一便利な都市といえる東京に住んでいると、欲しいものはすぐに買えるしインフラ整備も完璧ですし、至れり尽くせりじゃないですか? でも海外に行くと普通に不便な思いをしますから。例えば、コンビニが無いので夜中に買い物ができないですからね。また、クレジットカードの間違った請求が来るとか、電話会社の変更手続きをしても反映されないこともあります。そういう解決しなくてはいけない問題がたくさんおこるので、問題に対処する力は身につきます。

 

ニューヨークで最初に苦い思いをしたのは、車を買いに行った時です。ディーラーで買うのですが、アメリカのディーラーというのはとんでもない人達で、スタッフの対応が日本と全然違うんですよ。スタッフに(こいつは英語ができない=カモだな)と思われたせいで、「キャッシュで払う」と主張しても、「ローンでないと売れない」の一点張りで、最後は根負けして無理矢理ローンを組まされたこともありました。直ぐに返済はしましたが。そんな風に、何か物ごとを進める時にいちいち日本では有り得ない交渉が発生したりするんです。それに対処するには英語力が必要ですから、できないと大変ですよね。

 

――海外で生活するって大変ですね。

 

でも、不便そうに思えるアメリカにも、いい部分はあります。

例えば、日本みたいに気を遣わなくていいということ。日本では「誰々にどう思われる」「この人がこう言っているから、本当は他にやりたいことがあるけど合わせよう」とか、空気を察して気遣いし過ぎる部分があるじゃないですか。アメリカは基本、そういうことがないですから、伸び伸びと自分の意思を主張することができます。逆に主張しないと意思が無いものと見なされますが。そういう環境で生活することで、世界の人と渡り合う逞しさは身につくのかなと思います。

 

英語力を評価され転勤したニューヨークで、日本の価値観にとらわれないマインドを身につけた清木さん。グローバル化が進む時代のビジネスパーソンにとって、違いを受け入れる柔軟性と、ロジカルな交渉力が重要といえそうですね。

後編では、英語力の必要性、また、英語力で広がる人生の可能性について詳しく伺います。

 

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撮影/山川俊行 取材・文/甲斐真理愛(共に編集部)


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