Dear B,

Travel Editor
旅する編集者 ファッション、ワインPRを経て旅する編集者になる。 「世の中やサービスに新しい視点や価値を加える」を軸に21世紀の新しい生き方、ライフスタイル、価値感を、執筆を通じて発信している。
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HOW TO
2017.04.22

自分に自信が持てない日本人女性に捧ぐ

フランス式 私らしい人生のつくり方(前)

「仕事が辛くて辞めたいけど、スキルのない私に転職は無理……?」

「彼氏のことあんまり好きじゃないけど親のためにも結婚すべき?」

 

なんとなく今が幸せじゃない、心にモヤモヤを抱えているけどその状況を変えるための行動に移せないという人は少なくないんじゃないでしょうか? 子供の頃から「前へならえ」と教育されてきた私達にとって、人と違う道を選ぶことや、レールを外れてしまうことはとても恐ろしいこと。生き方や価値観が多様化している現代とはいっても、選択を迫られる場面では、ついつい人の意見に頼ってしまったり、無難な方を選んでしまったりしますよね。結果、「今の人生に満足していない」「あの時の選択は正しかったんだろうか」

と自信をなくしてしまう……。

 

そんな日本の女性達に、自分らしい人生の一歩踏み出す勇気を取り戻してもらうべく「フランス人は年をとるほど美しい」「好きなことだけで生きる」などのエッセイ本を出版し、日本とフランスの架け橋として活動するフランス人作家ドラ・トーザンさんに、Dear B,編集長が「フランス式 私らしい人生のつくり方」についてお話を伺いました。

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Dear B, 編集長(以下Dear B,) 私はドラさんの10年来のファンだったので今日はお会いできて光栄です。

 

ドラ・トーザンさん(以下ドラ) パリジェンヌ流おしゃれな自分革命」読んでくれていたんですよね。うれしいです。Merci!

 

Dear B, そうなんです! 私は10年前に「パリジェンヌ流おしゃれな自分革命」を読んで、「周りにあわせるのではなく自分らしく生きていい」ということを知って人生観が変わりました。今自分らしく生きられているのはドラさんの本に出会えたおかげです。

 

ドラ そう言ってもらえてうれしいです。

 

Dear B, ところで私は現在29歳なのですが、日本では30歳前後の年齢の女性のことを「アラサー」と呼び、私の友人のアラサーの独身女子達は、やれ婚活やら結婚やら社会的なプレッシャーで気を揉んでいます。私自身、日本の女性にグローバルな広い視野で自分らしい生き方を見つけてほしいという思いでDear B,を立ち上げたのですが、今日はドラさんに悩める日本の女性達に向けて世間の価値観に縛られず「自分らしい人生をつくる方法」を伝授していただけたらと思います。

 

年齢に縛られる日本人

 

Dear B, フランスには「アラサー」のような年齢を縛る言葉はありますか?

 

ドラ フランスには日本で言われるような「アラサー」という言葉はありません。美容雑誌などで紹介されるコスメに20代向け、30代向け、40代向けというコンセプトはあるけれど、「アラサー」だからこれをやらなければならない、アラフォーだからこれといった「この年齢だから○○をしなきゃいけない」という概念は全くないですよ。だから初めて日本に来た時、広告のキャッチコピーで「40歳からの○○」とか「50歳までの○○」とあらゆるものが年齢で区切られているのには驚きました。同い年だからとか年上だから年下だから……と日本人のように人の年を気にするということもないですね。友人の年齢もほとんど知りません。

 

Dear B, たしかに日本は相手の年齢をすごく気にしますね。それにしても友人の年齢を知らないということは驚きです。

 

ドラ 私達フランス人は人と接する時に気にするのは、年齢という数字よりよりも気が合うかどうかとか好きか嫌いかということです。その人と一緒にいてどう感じるかが大事なので、一緒にいて心地良いなら年齢は関係ありません。だから私の友達は年上から若い人、子どもまでいて年齢の幅は広いですよ。

 

 

フランスでは成熟した女がモテる

 

Dear B, なるほど。年齢を気にせず友人になれるというのはとても魅力的ですね。ところで日本には「女房と畳は新しいほどいい」という諺があるくらい、若い女性が賞賛される傾向がありますが、フランスに女性は若ければ若いほどいいといった価値観はありますか?

 

ドラ 女性が若ければ若いほど良いという価値観はどこにでもあると思います。でも日本人の男性が自分より若い女性を求めるのは、年齢が若くて自分より経験が少ないと、あらゆる面において「すごい」と尊敬してもらえるからじゃないですか? 文化的なこともあって日本人の男性は同じくらい仕事ができて経験値の高い女性の扱いに慣れていないんじゃないかしら。もう少し、年齢じゃなくて人間として人を見てみたら良いと思います。

 

Dear B, おっしゃる通りです! 日本の男性が若さを求めず本質を見てくれるようになったら私達もこんなに気を揉むこともないのですが!! ちなみにフランスでは成熟した女性がモテるというのは本当ですか?

 

ドラ それは本当です。フランスでは最近特に40代の女性が人気ですよ。今の40代は若くてはつらつとしているし、しっかりとキャリアを築いていたり、経験が豊富で会話も面白いから「40代の女性が魅力的だ」と言うフランス人男性は多いですね。女性はボルドーワインと同じで段々おいしくなるんですよ。

 

Dear B, フランス人男性、素敵です!! 本質を分かっておりますね。私も年を重ねるごとに生きやすくなっていくことを感じます。より自分らしくいられるというか。

 

ドラ 年をとって良いことは、経験を重ねることで自分に自信を持てるようになることですよね。自分が好きなこと、嫌いなことも分かってきます。これが分かると自分の人生をもっとエンジョイできるようになるし、失敗しても笑えることが多くなったり、人生に余裕が出てきます。

 

 

フランスではそもそも結婚が意味をもたない

 

Dear B, そう考えると、年を重ねることは素晴らしいことですね。ところで日本では結婚するために出会いのある場所へでかける「婚活」が盛んですが、フランスに「婚活」はありますか?

 

ドラ 「婚活」というコンセプトはないけど、出会うためのイベントは色々あって、フランスでも男女の出会いのために開かれるパーティーは盛んですよ。日本人と違うのは、フランス人は結婚を念頭において出会うのではなくて、純粋にアムール(愛)を求めているということです。出会いと結婚が直結することはありません。

  

Dear B, なるほど。フランス人はそもそも結婚をしないというのは本当ですか?

 

ドラ 結婚をする人は少数派です。私の世代は結婚をすることがメリットとかアドヴァンテージであるということが全くないので、結婚しない人が多いですね。それはなぜかというとひとつは女性が経済的に自立しているから、誰かを頼りにする必要がない。もうひとつはフランスにはPACS(パックス)のような結婚と似たような制度があるからですね。PACSは、パートナーと共同生活を送る上で結婚と同等な権利を得られる制度のことで結婚よりも手続きが簡易です。こういった制度が整っていることもあって相手を結婚という法律で縛る必要がないんです。好きだから一緒に住む、一緒に住んでいて子どもができるといった自然な流れ。結婚するならその後。一度一緒に住んでみて、子どもができてから結婚するカップルは多いですよ。

 

Dear B, 確かに女性が自立していたら結婚にあまり意味がないというのは日本にも言えることかもしれません。

 

ドラ そうですね。フランスには白いウェディングドレスや結婚式に憧れる女性ってあんまりいないんですよね。ただアムール(愛)は大事です。一緒にいたいとか一緒に住みたいとかいい恋愛をしたいという気持ちはあるけれど、結婚という形にはこだわりはもちません。フランス国内において婚外子が全体の60%なので、結婚している両親の方が少ないんです。だからといって信頼や絆がないというわけではないですよ。

 

 

フランスには専業主婦がいない

 

Dear B, なるほど。日本でも働く女性は増えていますが、いまだに家事は女性が担当するものという考えは消えません。そのあたりフランスはいかがですか?

 

ドラ 日本には未だに専業主婦というコンセプトがありますよね。70年代以降フランスでは専業主婦というポジションはなくなりました。子供が0歳から3歳まではだいたい仕事を休んで、子どもが3歳になった頃には仕事に復帰をします。男性だから女性だからといったジェンダーの区別もなく、日本のように共働きだけど家事は女性が担当するといったこともありません。家庭内で、男性が料理好きだから料理を担当するとか、男性よりも女性の方が上手だから掃除するとか、お互いが得意な方にパート分けをするだけで男女の役割の区別というものはなくなってきています。

 

日本は女性の管理職少ないから
女性の働く環境が改善されない

 

Dear B, なぜ日本人は共働きでも女性が家事を担当するかというと、男性の方が稼ぎが多いからという理由が挙げられるという話を聞きます。賃金の面でも日本社会はまだまだ男女平等が実現されていません。特に女性の場合、日本は仕事に復帰しにくいというのがあります。産休などの制度はもちろんあるんですけど、出産を機に会社を辞めてしまった時点で正社員にはなれないんですよね。

 

ドラ そこが問題ですよね。フランスは育児を理由に一度仕事をやめてしまっても、正社員にもなれるし、管理職にもなれます。フランスは管理職の約40%が女性です。上司の約半分は女性なので、フランスの男性は女性が上司という環境に慣れています。女性だからとか男性だからとかより、その仕事をきちんとできるかどうかが大事です。日本は管理職に女性がいないということが、日本の女性が産後仕事に復帰できない原因だと思います。

 

Dear B, その通りですね。女性は出産するからといってキャリア組から外されてしまうことがあると聞きます。これは子育てで会社が期待している時間数を労働にあてることができないことが原因のようです。

 

ドラ そうですね、日本でもワークライフバランスという言葉が言われるようになりましたが、全ての原因は日本人の時間の使い方にあると思います。女性がフルタイムの仕事に戻りづらいのも元を正せば仕事においての時間の使い方に原因がありますよね。日本人は時間の使い方が下手だと思います。人生の時間をどう使うかということが大事ということに気づいていないのでしょう。仕事も家庭生活も、生まれてから死ぬまでこの時間をどう使うかだと思います。

 

後編に続く……。

 

撮影:株式会社REGION

撮影協力: 神楽坂キートス茶房

 

ドラ・トーザン(Dora Tauzin) 

エッセイスト。国際ジャーナリスト。フランス・パリ生まれ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連広報部勤務後、92年からNHKテレビの「フランス語会話」5年間レギュラー出演。慶應義塾大学講師を経て、現在は「アンスティチェ・フランセ東京」、「アカデミー・デュ・ヴァン」などで講師、また日本とフランスの懸け橋として、新聞・雑誌への執筆や、講演、テレビ・ラジオのコメンテーターなど多方面で活躍中。主な著作として、『ドラがみつけた外国人の東京スタイル』、『東京のプチパリですてきな街暮らし』、『フランス人は「ママより女」』、『パリジェンヌ流今を楽しむ! 自分革命』、『パリジェンヌのパリ20区散歩』、『フランス人は年をとるほど美しい』『好きなことだけで生きる』など。2009年、文化庁より長官表彰(文化発信部門)。2015年、レジオンドヌール勲章シュヴァリエを受章。

HP: http://www.doratauzin.net/

FB: https://www.facebook.com/dora.tauzin.official/

 

書籍情報

 

フランス人は年をとるほど美しい

フランス式いつでもどこでも自分らしく: 自由で幸せな「時間の使い方」 (知的生きかた文庫―わたしの時間シリーズ)

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