「あなたの幸福度は何%ですか」
世界幸福度調査~アイスランド人編~
筆者の勝手な持論ですが、温かい地域の国の人々は心身ともに豊かで、逆に言えば寒さの厳しい地域はそれだけでハンデを負っているのだ。と長年推定していました。自身が極寒の地域で暮らした事があり、雪深い冬の暗さや、車や暖房設備の燃料費など、上げたらきりがないほどの大変さを身をもって体験したことがあったからです。ところが、数年前アイスランドを訪問した際に、その考えは一変しました。アイスランドはその名の通り、とても寒い地域に浮かぶ島国です。年間平均気温は5度前後、驚くことに夏でも零度を下回ることもあるそうです。常夏が大好きな筆者は、数日間の滞在だけでも、寒い国だし、行くのやめようかな……なんて、しり込みをしていました。しかし長年の夢だったオーロラを見るために、意を決して行ってみると、確かに突き刺すような寒さはあるのですが、国の人々に穏やかな笑顔が溢れていることに驚きました。失礼な話ですが、寒い地域の方々って、険しい表情をしているイメージがあったのです。とにかくこの国は自然が豊かで、国土は小さくコンパクトながら自然がとてもダイナミック。フィヨルドや、氷河など、寒いからこそみられる自然の芸術を、目で見るというよりはからだ全体で感じることができます。そんな環境に身を置くこの国の人々はそれら自然の全てを愛し、楽しみ、工夫して生活していると感じました。今回のインタビューは、一児の母である、カトリーン。出会ったときは独身だった彼女も素敵なママになり、考え方、人生観、幸福感も変わってきたようです。では、彼女のお話を聞いてみましょう。
カトリーン/女性/34歳/アイスランド人
ーあなたはどのくらい幸せですか(100%のうち何%幸せか教えてください)
100%
向上心がないように感じるかもしれないけれど、今とても満ち足りて生活しているのよ。
ーあなたを自分が幸せと思わせるものは何ですか?
ひとりの時間。子供がまだ小さいから、ひとりで自分だけの為に使える時間って本当に少ないの。だから考え事をしたり、少しだけ読書をしてみたり針仕事をしたり。1日の中でほんの1時間でもそんな時間があるとしみじみ幸せを感じるわ。家族の為に忙しくしているのは決して苦痛ではないけれど、精神的に詰まってしまう事があるから。こういう時間に小さな幸せを感じるの。よく考えてみると今だけではなく昔からそうだったのかも。学生の時や独身で働いていた時も、ひとりの静かな時間でストレスを減らしていたところはあるわ。外を歩いてみたりオーロラや雪を眺めてみたりするのは心が落ち着くもの。テレビなんかでほかの国の混雑した首都なんか見ると、「みんなよくイライラしないわね」って感心するの。私はそういう生活はできないな。
ーあなたの人生でいちばん大切なものは何ですか?
家族ね。子供が生まれて、家族の繋がりがさらに強くなったと思うの。私の親族も、彼の親族も、子供が繋いでくれて絆がとても強くなった。子供が生まれただけで私の生活や人生は一変したわ。今まで気づきもしなかった事、両親や、社会がしてくれていた優しさや、温かい眼差し、沢山の事を知ったの。今までも感じることはあったけれどさらにありがたさもわかった。家族はなくてはならないものだし、助け合って、みんなで幸せを分け合って生きるものだわ。自分の事なんかより大切だし、家族の為に自分も大切にしなきゃと思うようになったわ。
ーあなたの国の人々は幸福度が高いと思いますか?
高いわね。人口が少なくて小さな国だけど、満ち足りているわ。政策や方針についても国民投票で私たちに選ぶ権利がしっかりあるの。治安がいいし。治安がいいという事は、犯罪に走る程追い詰められたかわいそうな人がいないって事よ。財政破綻で危ない時期もあったけれど、正直あの時も報道されていた程の悲壮感はなかったし、今現在も影響は少ないわ。国民が政府をしっかり選び、その政府も国民の為に働きかけた結果だと思う。あまり不満を漏らす人もいないし、みんなのんびり自分たちのペースで生きているわよ。
ーあなたの国の幸福度を上げているもの、下げているものは何ですか?
先人たちも含めて、人々の知恵がこの国を活かしていると思うわ。寒くて厳しい時もあるけれど、みんな工夫して生活しているの。食べ物が少ない土地だけれど、料理の種類は多くて各家庭に伝わる伝統の味がとてもおいしいし。寒いからこそ見られる美しい景色や、温かいと感じられる温泉。みんなで真面目に、楽しんで豊かに生きることを追及しているのよ。家の中が温かいだけで幸せだわ。それは、昔からの知恵で作り上げられたものだから。
幸福度を下げているのかわからないけど、私が感じる問題点は新しいものが受け入れられにくいということ。人口が少ないし、離れた地域にあるし、お年寄り世代も元気だからなのかな。例えば、外国の新しい技術や物も、得体のしれないと言ってあまり受け入れられないのよ。私は外国人の友人も多いし、外国の製品なんかでも羨ましいな、アイスランドにもあればって思うもの沢山あるんだけれど、需要がないからなかなかそういったものはこの国に入ってこないの。だからこそ伝統が守られる部分はあるのかもしれないけれど、挑戦するのもいい事だと思うんだけどね。
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