英語力で人生を切り拓く!Vol.2
外資系ファンド代表・安達保氏(後編)

Cheer up! Interview
~企業人・エグゼクティブ編~

英語力を身につけたことによって、人生の充実を果たした人々を直撃するインタビュー連載。
アメリカの大手プライベートエクィティファンド(企業投資、事業再生)『カーライル・グループ』の日本代表などを務める安達氏に、英語学習法や留学経験などについて伺った前編に続き(前編はコチラから⇒英語力で人生を切り拓く!Vol.2 外資系ファンド代表・安達保氏(前編))、後編では、グローバル企業でどう働き、どんなスキルを身につけてきたのかについて。
また、世界で活躍するために、英語力にプラスしてどのような能力が必要なのかについてお伺いしました。

 

――英語力を活かしてグローバルな企業でご活躍された安達さん。MBA(経営学修士)を取得した後に、世界最大のコンサルタント企業として著名な『マッキンゼー・アンド・カンパニー』に転職されますが、そのきっかけは?

 

それまで得てきたビジネスの知識をもう少し実地的なレベルで使えるようになりたいと考えて選びました。例えば、経営やマーケティング、ファイナンスビジネススキルの質を上げていきたいとも考えていたので。
当時のマッキンゼーには世界的なコンサルタントとして活躍する大前研一さんらがいました。そんな方々と切磋琢磨しながら物ごとをどう分析するか、分析したことをどうやってまとめて、経営者に対してプレゼンテーションして実行に移すのか……など、実地的なビジネスの勉強になりましたね。

そんな業務経験で得ることも多くやり甲斐を感じましたが、(でもしょせんは、黒子だな)とも思っていました。自分で経営しているわけではないので、やっぱり限界があると。いくら自分が「これがいい!」と思って提案してもクライアントの会社の社長がダメといえば、意味のない無駄な作業になってしまいますから。
僕は人に「こういう風にやったらどうですか?」というより自分でやった方がいいと思う時がたくさんあるので、アドバイスするよりも実業する立場に戻りたいと思っていました。
例えば、DDIで事業を立ち上げた時は本当に楽しかったです。自分が動いたことによって結果がちゃんと出るわけですから。そういう仕事にもう一度戻りたいと思っている時に、GEキャピタルから「日本の事業を拡大するので力をかして欲しい」と声がかかったので転職しました。

 

――GEやマッキンゼーなどのグローバル企業では、どんな能力が必要でしたか?

 

外国人の考え方や立場を理解してコミュニケーションする能力が必要でした。グローバルに活動したいのなら、例え英語が完璧でなくてもちゃんとコミュニケーションしようとする姿勢をみせないといけません。
僕は昔から外国人がたくさんいる環境で働いているので外国人に抵抗がなく、緊張することもないですが、海外の異文化を受け入れることに否定的な方もいますよね。「日本の考え方が正しい」「日本の大和魂を忘れちゃいかん」という具合に。それはそれで立派ですが、やっぱり相手のことを理解しないと絶対にダメなわけですよ。
僕はそんな“海外との相性”みたいなものを自然と構築することができたので、外国人とも全く違和感のない付き合いが出来ていると思います。
日本人はコミュニケーションを苦手とする人が多いと感じます。そもそも学校の教育で、一方的に先生が話したことをメモにとって勉強して……という具合で、ディスカッションなど意見を交換し合うことに慣れていませんから。そんな自覚のある方はいきなり大勢の中で意見を言うのは難しいと思うので、一対一で意見を言い合う練習をして発言力を鍛えていけばいいと思います。

その他、日本人としてのアイデンティティをもつことも重要だと感じました。海外では日本の時事的な事柄や文化についてよく聞かれますよ、当然知っているだろうからと。それに答えられるような知識が必要です。例えば、僕のような立場だと「日本の経済はこれからどうなるのか」「日本の企業はどう変化していくのか」などに対して、自分なりの意見をもっているかということが非常に重要です。もっていないと誰も相手にしてくれないですから。

 

――グローバルビジネスに必要なのは英語力だけではないということですね。

 

英語というのはあくまでもツールです。なので、それはある意味、当たり前に出来なくてはいけないことです。そして、それを活かして好きな仕事や大きな仕事ができるかどうかというのは本人の実力です。どれだけ懐の深い人間であるかとか、そういうことに関わってきますよ。
だから英語がそんなに上手くなくても実は人間的な魅力がすごくあれば、大きな仕事がグローバルに出来ることだって僕はあると思う。英語力がゼロじゃダメだけど、英語ができれば他の能力も活かせるということです。

例えば、僕は英語を勉強したことによってアメリカ留学や、インターンで働くことができました。それが僕の人間としての幅を広げましたし、外国人と話すには違うカルチャーのことを理解しながらコミュニケーションしないといけないことも体感できました。また、今僕がやっている事業の本部はアメリカにありますし、世界中にいる投資をしてくれる企業の方と英語でコミュニケーション出来るのも、色んな国で色んな人たちと接してきたからです。
だから、英語が出来るということは人間の幅を広げることは間違いなくて、それをどう使うかは本人のやる気次第だと思います。「英語は人生の幅を広げるベース」という風に考えてもらうといいと思います。

 

今後、日本の市場がこれ以上大きくなることはまずありません。そんな中で、日本の企業や日本人が成長していこうと思ったら、国境を越えて働かなくてはならないのです。これからの日本を支えるみなさんには、英語を勉強して世界を広げて欲しいと思います。

 

●プロフィール 安達保氏

米系大手プライベートエクィティファンド『カーライル・グループ』マネージングディレクター兼日本共同代表。
東京大学工学部卒。マサチューセッツ工科大学スローン・スクールにてMBA取得。三菱商事株式会社に10年間勤務。在籍中、1984年から1987年の3年間はDDI(第二電電、現KDDI)に出向。同社の立ち上げと長距離電話サービスの開始に貢献。1988年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。1995年には同社パートナーに就任し、主に製造業、ハイテク企業の製品市場戦略、企業ビジョンの策定に従事。1997年にGEキャピタル・ジャパンに移籍。東邦生命、日本リースの買収等を担当した後、日本リースオート(現日本GE株式会社GEキャピタル)代表取締役社長に就任。2003年にカーライル・グループに参画、日本代表に就任。同社の日本における事業拡大を主導。他、株式会社ベネッセホールディングス及びヤマハ発動機株式会社の非常勤取締役。2009年1月から2011年6月まで日本プライベート・エクイティ協会の会長を務める。現在副会長。

 

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英語力で人生を切り拓く!Vol.2 外資系ファンド代表・安達保氏(前編)

 

取材・文/甲斐真理愛(編集部)


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