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Digital Nomad
10年前から海外のあちこちを転々とし、デジタルノマドの生活を実践しているアメリカ出身のプロデジタルノマド。10代の後半からミュージシャンとして活動し、ここ10年は自身が開発した管理ソフトを世界中で展開している。デジタルノマドを通した未来論を紹介。
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HOW TO
2017.07.05

AI時代到来でベーシックインカムが人類を救う!?

財源、実現性、実施国、問題点を一挙紹介

日本でもベーシックインカムの導入はありえるのか!?

人工知能と共存するための

ベーシックインカムっていう言葉を最近よく耳にしませんか。政府が国民に現金を配るというこの政策は、ヨーロッパ諸国をはじめ多くの国で導入が実験、検討されています。なぜ、今ベーシックインカムが必要なのか!? それは、やがて訪れるAI(人口知能)時代到来にむけてなのです。それではベーシックインカムについて詳しくみていきましょう。

 Contents

 

1.ベーシックインカムってどんな意味?

2 なぜ今ベーシックインカムが注目されている?

 2.1 AIによっておこる「大失業時代」への備え

 2.2 政府の労力とコストカット 

 2.3 格差・貧困問題の改善

3. なぜベーシックインカムが検討されているの?

4. ベーシックインカムの財源ってどうなっているの?

5. ベーシックインカムの問題点

 5.1 働かない人が出てくる

 5.2 そもそもベーシックインカムをどう政府が負担するのか

6. ベーシックインカムの導入検討国

 6.1 ベーシックインカムの試験導入フィンランド

 6.2 ベーシックインカムの試験導入オランダ

 6.3 ベーシックインカムの試験導入カナダ

 6.4 ベーシックインカムの導入否決スイス

7. 日本でもベーシックインカムの導入はあるか?

8. ベーシックインカムの金額例

9. 各国のベーシックインカムの途中経過

10. ベーシックインカムを支持する著名人

 10.1 イーロンマスク

 10.2 レイカーツワイル

 10.3 マークザッカーバーグ

 

 

1.ベーシックインカムってどんな意味?

 

 

最近、ニュースで「ベーシックインカム」という言葉をよく聞きますよね。ベーシックインカム(ユニバーサル・ベーシックインカムとも)とは一言で説明すると、年齢や性別、仕事の有無に関わらず国が一律で国民に現金を給付する、というシステムです。

 

現行の制度だと、生活保護や医療費補助、子育て給付金など給付のために一定の要件を満たさなければなりません。しかし「誰にでも」支給されるという点がベーシックインカムの最大の特徴です。近年になって導入を検討する国々が増えてきました。

 

もっとざっくりとした言い方をすれば、ベーシックインカムは「何もしなくても政府があなたに決まったお金を支払う制度」といえるでしょう。

 

ベーシックインカムが導入されれば、働くかどうかが個人の自由に委ねられる可能性が高くなります。一見、夢のような制度ですが、すでに多くの国で導入実験が行われているのですよ。

 

今回はこのベーシックインカムについて、詳しく解説していきたいと思います。

 

2.なぜ今ベーシックインカムが注目されている?

 

 

ベーシックインカムの元となる考え方は随分昔からありました。しかし、どうして最近になり、再びベーシックインカムが注目されているのでしょうか。

 

大きな理由としては下記の3つが挙げられます。

 

2.1 AI(人工知能)によっておこる「大失業時代」への備え

AI(人工知能)はまさに今世紀における人類最大の発明でしょう。しかし、皮肉なことにこのAI(人工知能)が人の仕事を奪ってしまう可能性がとても高いのです。医療、教育、翻訳、自動運転などなど……AI(人工知能)は幅広い仕事をこなすことができます。人間のように疲れや感情によってパフォーマンスに影響が出ませんし、学習能力のあるAI(人工知能)は今後も改良を続け、人間の仕事の多くを代わりにこなしてくれるでしょう。例えば日本の大手コンビニ5社は2025年までにコンビニのレジをAIにして無人化を図る、と発表しています。

 

しかし、困ってしまうのはAI(人工知能)によって仕事が奪われてしまう人たちですよね。ちなみにオックスフォード大学のマイケル・オズボーン氏は今後20年以内におよそ半分の仕事はAI(人工知能)が取って代わると予測しています。

 

そんな時に失業者が町にあふれ、お金のために少ない求人に人々が殺到する……という状況を避けるためにベーシックインカムを導入するべきだという意見が近年になり、各国で増えてきたのです。

 

2.2 政府の労力とコストカット

生活保護や児童手当など、今行われている社会保障制度を維持するのにも莫大な経費がかかります。給付対象になるかどうかの審査や、不正受給を防ぐための確認には多くの時間もかかります。既存の制度を維持するために必要な人件費等を全てカットして支給額を一律にして国民に給付した方が、かえって経済的で手間が省けるというメリットがあるのですね。

 

2.3 格差・貧困問題の改善

もともとベーシックインカムは「誰もがスーパーで食べ物を買う権利があるはずだ。」という考えに基づいて生まれました。資本主義の社会で生きていく上で、お金がないと人として最低限の生活ができなくなってしまいますよね。

 

特に社会保障制度が複雑なヨーロッパでは、貧困層のセーフティネットとしてベーシックインカムの必要性が叫ばれています。また、失業保険を受けている人は比較的賃金の安い仕事しか就けませんが、その仕事に就いたら失業保険手当がもらえなくなってしまいます。そうすると働こうとする人が減ってしまいます。そこで職業の有無に関わらず支給されるベーシックインカムを導入すれば、皆もっといい暮らしをするために働こうとする、そうすることによって経済が活性化される……、という効果も期待できるのですよ。

 

3. なぜベーシックインカムが検討されているの?

 

 

ベーシックインカムが決して絵空事ではなく、現実的な制度だということが少し分かっていただけたと思います。これから先進国の多くでベーシックインカムは導入されるのでしょうか。もちろん、本格的な導入の前に小規模な試験導入が行われています。この結果、ベーシックインカムは本当に効果的なので行うべきだ、という声が高まったのです。

 

こうした実験についてはのちに詳しく解説します。

 

4. ベーシックインカムの財源ってどうなっているの?

 

 

ベーシックインカムが導入され、仕事をしてもしていなくてもあなたの口座にお金が入ってこれば生き方が大きく変わってきそうですよね。しかし、このベーシックインカムを実現するためには十分な財源を確保する必要があります。

 

多くの国で、ベーシックインカムの財源候補として挙げられているのが税収と現行の社会保障手当金です。

 

まず、日本の場合は北欧の国々と比べはるかに低い税率を引き上げることが不可欠になるでしょう。そして、ベーシックインカム制度を行うには今までの社会保障制度(生活保護や介護、児童手当)を撤廃し、ベーシックインカムに回す必要があります。すると、社会保障制度を支えていた職員は仕事を失うことになりますが、これには強い反発が予想されます。

 

加えて、どの税金をベーシックインカムに充てるか、というのが問題になってきます。例えばベーシックインカムの導入を提唱する専門家は来たるAIによる失業時代を想定していますが、もし法人税をベーシックインカムに充てる場合、AIによって働く人の数は減ることを想定しなければいけません。その場合は会社の売上げが減り、法人税の納税額は減ります。こうなると、ベーシックインカム制度自体が破綻しかねません。こうしたリスクも考慮して財源を選定する必要があるのです。

 

さらに起こりうるのは、AIが人の仕事を担うようになった場合、AIに支払う報酬は一体どこに流れるのか、という問題が生まれることです。あくまで憶測ではありますが、AIを管理する人に報酬が流れると考えられます。

 

例えば、車が全自動運転になれば、自分が車を使っていない間でもUBERなどのライドシェアサービスを使って、自分の車を無人運転させ、タクシーがわりに利用してもらうことができます。それによって得た報酬は車の所有者に入るため、所有者の所得税として国に支払われ、ベーシックインカムに充てられるのではないでしょうか。もしくはAIによって報酬を受け取る場合、AIを用いた仕事に適用される税率などが整備されるかもしれません。すると、そもそも何を「AI」と定義するのか、といった論争が起こることでしょう。

 

このように、ベーシックインカムの財源選びというのは、AIによって社会の仕組みがどう変わるかを予測しつつ行わなければいけないため、かなり慎重に行う必要があります。

 

日本の場合、ただでさえ年金制度が将来的に破綻すると懸念されているため、ベーシックインカム制度の実現を目指す上での課題は山積みです。

 

5. ベーシックインカムの問題点

 

 

ベーシックインカムには解決すべき問題がいくつかあります。テスラ社CEOイーロンマスク氏やFacebookCEOのマークザッカーバーグ氏はベーシックインカムの導入を支持していますが、ビルゲイツ氏は、導入はまだ早いとして慎重な姿勢をみせています。教育に携わる人、高齢者介護に従事する人を増やすこと自体が大切で、ただお金をばらまけばよいというわけではない。というのがゲイツ氏の見解です。

 

5.1 働かない人が出てくる

ベーシックインカムによって、働かなくても収入が入ってきます。そうすると、今まで収入を得るためだけに働いていた人が働かなくなってしまいます。すると国の経済はしっかり機能するのか、と懸念する声が出ています。

 

5.2 そもそもベーシックインカムをどう政府が負担するのか

全ての国民に給付するために、今までの社会保障制度を撤廃し、ベーシックインカムに充てるわけですが、それでも生活するのに十分なお金を確保できないのではないか、という意見もあります。ベーシックインカムは入ったものの、今まで頼っていた社会保障制度がなくなったため、かえって出費が増えてしまうのではないか、または、税率を引き上げないとベーシックインカムは成り立たないのではないか、などなど、財源の確保という面でまだまだどの国においても課題が多いようです。

 

その他にも、暴力団などの反社会的勢力にも資金をばらまくことになってしまう、海外からの移住者への給付をどうするのか、などベーシックインカム導入には慎重な議論が必要なのですね。

 

6. ベーシックインカムの導入検討国

 

 

ベーシックインカムを導入するにあたって、導入したら実際にどうなるのかシミュレーションをする国が増えてきました。ベーシックインカム導入を真剣に検討しているのは下記の国々です。

 

・フィンランド

・オランダ

・イタリア

・カナダ

・スイス

・ケニア

・ウガンダ

・カナダ

・インド

・アメリカ(カリフォルニア州)

 

実に多くの国や地域が導入を検討すべく実験をしていることがうかがえますね。実験を行う人数や支給額もさまざまですが、政府が国民に無条件でお金を渡すとどうなるのか、その試みに注目が集まります。

 

6.1 ベーシックインカムの試験導入フィンランド

フィンランドは2017年より、ヨーロッパで初めて国家全体でのベーシックインカムの導入試験を行いました。とはいってもすべての国民にベーシックインカムが給付されたわけではなく現在はランダムに選ばれた約2,000人の失業者に対して月560ユーロ(7万円)が毎月支払われています。

 

実験の目的は、国民の生産性の変化を調べるためで、毎月7万円程度を支払った場合、勤労意欲にどのような差が出るかを分析するために行われています。

 

6.2 ベーシックインカムの試験導入オランダ

オランダではユトレヒトで250人を対象に試運転が行われています。支給するのはおよそ月1,100ドル(12万円)でいくつかのグループに分けられます。グループによってインセンティブが設けられており、ボランティア活動に従事すると追加で支給されます。今後はより規模を拡大して実験を行なっていくそうです。

 

6.3 ベーシックインカムの試験導入カナダ

カナダではMincomeという名前で導入実験が行われていました。この実験は1974年から5年間行われた比較的古い実験で、導入によっても労働時間に大きな変化はみられなかったことから、ベーシックインカムを導入しても必ずしも皆働かなくなるわけではない、ということを示唆しています。

 

6.4 ベーシックインカムの導入否決スイス

2016年に世界で初めて国民投票によってベーシックインカムの是非を問いかけたのはスイスです。結果としてはまだ時期尚早ということで否決となりました。スイスでは貧困者層の人々を救うためにベーシックインカムの導入が検討されましたが、労働意欲が落ちてしまうのではないかと懸念されたため、見送りとなりました。スイスではミニマムインカムとして提案されましたが、基本的にはベーシックインカムと同じで、生活のために必要な最低限のお金は国が出す、という考え方に基づくものです。

 

7. 日本でもベーシックインカムの導入はあるか?

 

 

さあ、日本ではベーシックインカムの導入はありえるのでしょうか。オランダのジャーナリスト、ルトガー・ブレグマン氏は今後の技術革新などを考慮し、早めにベーシックインカムの導入を検討するべきだと意見を述べています。日本でも、新党日本などベーシックインカム導入を公約に掲げている政党はいくつかあります。

 

先ほども少し説明しましたが、日本は欧州に比べて税率が低いため、増税をしてベーシックインカムを捻出するやり方が検討されるでしょう。しかし、これには富裕層からの反発が予想されますし、企業も法人税が上がったとすれば、生活が保護されている人を雇う必要はないとして人員のカットに踏み切る企業も増えてくるでしょう。

 

超高齢化社会の日本においてはそもそも、納税をする若者世代が減少しているという問題があります。

 

上記の理由から、現時点でベーシックインカム制度を導入することはなかなか難しいと考えられます。しかし、今後日本の中でも生活格差が広がっていくことが予想されているので、早めの検討が必要でしょう。

 

8. ベーシックインカムの金額例

 

 

ベーシックインカムとして給付されるお金は国によって異なります。また、どれだけの金額を給付すれば勤労意欲を削がないのか、といった研究も進められています。

 

フィンランドでは試験的に月およそ7万円が支給されますが、より良い暮らしをしようと思うとこの金額では足りません。

 

また、大人か子どもかによって受給額を変える可能性は高いでしょう。スイスでは子どもが約7万円、大人には27万円というのが国民投票時に提案されたベーシックインカムの金額でした。

 

9. 各国のベーシックインカムの途中経過

 

 

世界中で導入実験が行われているベーシックインカム。その経過が気になるところです。

 

例えばフィンランドでは現在2,000人に対し試験的に行なっている約6万円のベーシックインカムによって、ストレスが減ったと報告する人が出始めています。

 

オランダのユトレヒトでの実験では、育児休暇を取る人が増えたり、子どもの進学率が上がったりしたという報告もされています。

 

10. ベーシックインカムを支持する著名人

 

 

世界をリードする実業家たちはこのベーシックインカムをどう見ているのでしょうか。日本だと堀江貴文氏がベーシックインカムの導入を支持していることで有名ですね。

 

10.1 イーロンマスク

電気自動車メーカーのテスラ社や民間スペースシャトル企業のスペースX社のCEOを務めるアメリカを代表する実業家、イーロンマスク氏は「今後、多くの仕事が人間に替わってAIで行われることを考えると、ベーシックインカムの導入は必要になるだろう。」と述べています。

 

10.2 レイカーツワイル

技術的特異点(シンギュラリティ)の専門家でAI研究の権威である、レイカーツワイル氏もAIの革新的な発達を考えるとベーシックインカムは必要になるであろうと示唆しています。そして、社会貢献への意欲を人々が失わないような形で実践していくべきだとも説いています。

 

10.3 マークザッカーバーグ

Facebook社のCEOマークザッカーバーグ氏もベーシックインカムを支持しています。20175月に行われたハーバード大学卒業式の祝辞では、「ベーシックインカムのようなアイディアを検討して、誰もが新しいことにチャレンジできるような土壌をつくるべきだ。」と言及しています。

 

いかがでしたでしょうか。ベーシックインカムが導入されることでまた今までの当たり前が変わっていきそうですね。課題は多いですが、実現されれば今までにはなかった人の暮らし方がみえてくるのではないでしょうか。

 

今後も導入実験の経過を注意深くみていきたいですね。

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