大学の国際化と学生支援による、
グローバル人材育成の取り組み

文部科学省担当者に聞く!

近年、小規模な企業でも海外に市場を求める動きが活発になり、「グローバル人材」という言葉も、かつてのように外資系企業や一部の日系企業だけで聞かれる時代ではなくなってきました。優秀なグローバル人材の需要がますます高まるなか、文部科学省では、そのような人材を輩出すべく、大学および学生への支援を通じて、様々な取り組みを進めています。今回は、その取り組みについて、文部科学省高等教育局の有賀 理さんにご教示いただきました。

 

――政府が取り組むグローバル人材育成事業について教えて下さい

 

少子高齢化の進行に伴い、国内の市場が縮小していく可能性があります。また、輸出産業で国が潤うという時代は終わり、現代の日本経済は、海外に投資をし、その利益を国内に還流するという先進国の経常収支のパターンにシフトしています。そんな時代の流れを受け、グローバルに活躍できる人材の育成が急務とされています。政府も様々な取り組みを模索し、『海外で活躍できる日本人の輩出』を急いでいます。しかし、残念ながら日本の大学の国際的な評価は、途上国の急速な追い上げにより、相対的に下落してきているのが現状です。

そこで、大学の国際競争力の強化を早急に進めるべく、文部科学省ではグローバル人材育成に向けて、『大学への支援』と『学生への支援』の2つの方向からアプローチを行っています。

 

――ではまず、「大学への支援」について教えて下さい

 

前年比約37億円増の約127億円(平成26年度予算)を『大学教育のグローバル展開力の強化』についての各プロジェクトに組み込み、そのうち約60%にあたる77億円を、『スーパーグローバル大学創成支援』に充当します。“スーパーグローバル大学”には、我が国の国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や先導的試行に挑戦し、日本社会の国際化を牽引していく大学を選定したいと考えています。“世界ランキングトップ100”に入るような大学を対象に、海外の大学とのジョイント・ディグリープログラムの導入や、外国人教員の採用や英語による授業の増加、海外キャンパスの展開などをすすめ、学生のグローバル対応力強化のための環境と留学のためのチャンスを増やすべく、様々な制度やシステムの改革を促進していきます。

 

――今までの「国際化」への取り組みと何が違うのでしょうか?

 

もともと文部科学省が実施している日本の大学の国際化のための施策は、“外国人留学生の受入れ”を増やす『グローバル30』から本格的に始まりました。本事業では13の大学(国内)が対象として選ばれ、海外の学生にとって魅力的な授業や環境を整え、日本の大学をより国際的にすることで、日本人学生と外国人留学生が切磋琢磨して成長するという取り組みです。今後は外国人の受け入れだけではなく、『グローバル人材育成推進事業(『GGJ(Go Global Japan)』)などの、“日本人の海外留学”を促進する取り組みを強化したいと考えています。TOEIC等の点数や海外に留学する日本人の数などを具体的な数値目標として掲げ、成果につなげていくよう尽力していきます。

また、教育プログラムの国際化としては、平成23年度より日本・中国・韓国で大学の単位を相互に認定し、成績や学位を共通の枠組みで行う『キャンパスアジア中核拠点形成支援』や、発展が著しいASEAN諸国大学との大学間交流プログラム支援が進められています。さらに、平成26年度からはロシアやインドの大学を対象とした交流支援も開始となり、海外大学との交流をより一層深めていきます。

 

――欧米の大学に留まらず、アジア諸国大学との交流にも力をいれているということに、時代の変化を感じます。これらの取り組みを成功させるため、国と大学との連携はどのように行われるのでしょうか

 

日本の大学自体は諸外国の大学と比較しても優秀で、優れた研究成果なども残しています。しかし、国際的な認知は不十分で、諸外国の大学との連携や交流も一層強化していく必要があります。スーパーグローバル大学創成支援において、我々が各大学にお話をしているのは“必ずこのようにすべき”ということではありません。10年後20年後、日本の大学が国際的に競争力をもつためには、どのような対策が必要か、それをしっかり大学側が考えてほしいということなのです。国際化の視点からの前向きな変化のために、例えば人事制度や教務システムの改革も必要であれば、国として支援します。このように、教育現場の声に沿って施策を進めていくことで、表面上の目標に留まらず、実際に競争力のある大学教育を築いていくことができると考えています。

 

――なるほど。大学の制度を整えるだけで解決することも沢山ありそうですね。では次に、「学生への支援」について教えて下さい。

 

学生への支援としては、大学への支援額の約3倍にあたる355億円を予算に組み入れています。国際的に活躍するためには、語学力だけではなく、『異文化への理解』『日本人としてのアイデンティティ』が重要です。これらを体得するには、異文化を背景に持つ人との交流が不可欠だと考えています。学ぶ意欲と能力のある日本の若者には、留学の機会を準備・支援すべく、その費用負担の軽減を図ると同時に、留学のきっかけとなるように、支援プログラムの広報活動にも力を入れていきます。

また、日本で受け入れる留学生の数を倍増する計画もあります。日本人が海外に行くだけではなく、“日本の大学で学びたい”と来日する外国人学生が増えるような体制も整えていかなければなりません。海外からの留学生受け入れについては、30万人を目標として設定しており、これを戦略的に進めるべく『留学コーディネーター配置事業』というプログラムもスタートします。

 

グローバル人材育成に、国をあげての取り組みがなされていることがわかりました。大学教育の改革により、さらに多くの日本人が国際社会で活躍・貢献するようになることを期待しています。

 

取材・文/坂口弥生

 

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