「あなたの幸福度は何%ですか」

世界幸福度調査～チリ人編～

ここ数年でチリワインが日本で人気を集めていますね。あまりお酒が飲めない筆者は詳しくはないのですが、ソムリエをしている知人に聞くと、安価で質の良いものが多いとのこと。読者の方の中でも、きっとチリワインファンの方もいるでしょうね。飲食繋がりで、南米大陸では、肉大国のアルゼンチンやブラジルを筆頭に、肉食の国が多いのですがチリでは魚介類がとても有名です。南米大陸を地続きに移動しているバックパッカーたちは「魚介が食べれるからチリに行こうかな」という話題が出るほど、有名で魅力的な場所なのです。さて今回の幸福度調査は、チリ人のおばあちゃん。長い間専業主婦をしていたべシーは、若いころからお裁縫が得意で自分やご主人、子供たちの服を仕立てていたそう。そして60歳を越え生活に少しゆとりを持てたと同時に、長年の夢だった小さな服屋さんを開きました。べシーのお店を手伝っている女性の紹介で出会うことができたのですが、その時に筆者は初めてワインがおいしいと感じました。お酒は場の雰囲気によって全く味が変わる気がします。楽しいおしゃべりと、おいしい肴があると格別ですね。べシーはとても快活で、時には女友達のように、時には母のように、話をしてくれました。実は筆者のおばあちゃんも裁縫上手で雰囲気も似ており、こっそり南米のおばあちゃんだと思っています。さて今も小さな夢を叶え続けている彼女の幸福とは……？

べシー/女性/77歳/チリ人

ーあなたはどのくらい幸せですか(100%のうち何%幸せか教えてください）

80%。本当はもっと、ものづくりの技術を上げたいし、お店も広くしたいし……年甲斐もなく、今更あーしたいこうしたいっていう欲がすごくあってね。でも私には体力も時間も限られている。もっと早くに人生の老いとか残された時間を真剣に見つめる事ができたらよかったのにと思うわ。若いころしてきた寄り道はすべてが無駄だったとは言えないけれど、時間が無限だと思って生活していた時代を、ほんのわずかでもやり直したいと思う気持ちはあるの。でも、そう思える今の充実した生活も幸せなのよね。

ーあなたを自分が幸せと思わせるものは何ですか？

私の作り上げたものを気に入ってもらえたとき。自分に価値があると思える瞬間よ。夜更かしして作ったり、やり直したり。ひとつの服をつくるにしても、すごく時間と心が込められているの。工場で作業的に作っているものと違って、デザインから縫製まで自分で行っているでしょう。自分の子供のように大切よ。だからそんな私の子供たちが私の手から離れて誰かに大切にしてもらっているって、うれしいわ。私自身、若いころは学校の行事や、好きな人と会うときや、人生の大事な事があるときは、一生懸命時には緊張しながら服を選んで着た。作り手にも着る人間にも思い入れがあるものに携われるって幸せよね。

ーあなたの人生でいちばん大切なものは何ですか？

大切なものが多すぎて、でも結構もう手元にはないような気がするわ。年を取ると、シンプルな考えで暮らしをしていると思うでしょう？　体の不調はあるけれど、案外頭の中は若いころと変わらないものなのよ。思っていたおばあちゃん像と自分があまりに違うもの。赤ちゃんの頃から、少女になって、お母さんになって、全部繋がっているの。だからどんどん思い出や大切な人や物がふえていって、っでも失うものも多くて。若い子のように早口で話すことは無くなってしまったけれど、年寄りの方が頭の中の事柄が、随分多いからなのよ。

ーあなたの国の人々は幸福度が高いと思いますか？

ひと様の事はわからないわ。私が知っている限りの人々は、大体の人は幸せそうよ。この前、14歳の孫娘がそれこそ死んでしまいたいっていうくらい落ち込んでいたの。何かと思ったら、好きな人にパートナーができてしまったらしいのよ。本人は真剣だし、もちろん大切な事柄で笑ってはいけないけれど、かわいらしいなと思ってしまったわ。幸せかどうかって、年齢や性別によって本当に様々ね。

ーあなたの国の幸福度を上げているもの、下げているものは何ですか？

南北にとても長い国で、地域によって気候も全く違うの。そこがこの国の特徴で利点ね。それぞれ取れる産物も違うし、季節が楽しめるわ。世界にあまりない特別なことね。

悪い所は、昔に比べてどんどん空気が悪くなっているわ。私が幼いころに比べたら、信じられないくらい車が増えているし、暮らしぶり自体も全く変わってしまったから仕方がないのかもしれないけれど。それで少し人間も変わってしまったみたい。自然のものは必ず未来の子たちに必要な形で受け継がなくてはならないから、大切にしてほしいわね。