『ビリギャル』著者・坪田信貴氏に直撃
自身も実践した英語習得メソッドとは?-2

 

――では、語彙力を増やすための具体的な方法を教えて下さい。

 

『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』にも記述していますが、わからない単語を全てメモしておき、1日の最後に紙の辞書で調べました。英和辞典を上手に使って分からない単語を地道に潰していくのが語彙力アップのポイントです。

 

英和辞書の効果的な使い方は、「調べた英単語に線を引く」ことと、「4種類の線を使い分ける」ことです。手順はこうです。

 

①学習中にわからない単語が出てきたら、メモしておく。

②1日の最後に、メモをしておいたわからない単語を全て辞書で調べ、その英単語の意味の全項目に、「赤の下線」を引いて音読する。
※この時に、単語を覚えようとする必要はありません。なぜなら、この段階では各単語の重要度や優先順位はわからないからです。

③すでに「赤の下線」が引いてある場合は、前に1度辞書で引いた証。2度目は、赤の下線に重ねるように「波線」を引きながら全項目を音読する。

④「波線」を見つけたら、すでに2度引いた証。今度は丸で全項目を囲みながら音読する。

⑤囲みを見つけたら、頻出で何回も引いているのに覚えていない英単語ということ。「これが最後だ」と思って集中して、音読しながら蛍光マーカーを引く。

 

これを繰り返すと、何回も引いているのに覚えていない英単語が見えてきます。「もう3回目じゃん」「4回目じゃん」という意識になりますよね。人は心理学的にも意識しないと覚えられないので、丸をつけたり、マーカーをつける段階で意識するようにしましょう。

 

丸印までつけた英単語は、レポート用紙などに「英単語」「品詞」「意味」「それぞれの用例」を書き、テレビの横やトイレ、冷蔵庫の扉などに貼るとさらに効果的です。僕は、テレビ横にコルクボードを置き、そこに覚えたい単語を書いたメモを貼っていました。当然、テレビを見ながら英単語を覚えるのは無理がありますから、30秒とか1分のCM時間に覚えるんです。〆切り効果と言いますが、タイムプレッシャーがかかると、記憶力が上がります。英単語を覚えるという行動は後回しになりがちですが、このように日常生活の中にあると、自然とやってしまう。水を飲むたびに冷蔵庫のメモを音読していたら、イヤでも覚えますよね(笑)。これが、思わぬ成果をもたらしてくれます。この方法で、僕は1年で約8000語の英単語を身につけることができました。8000語といえば英検準1級とか、TOEIC®740点程度は取れるレベルです。

 

それから、英単語の“本当の意味”を知ろうと努めました。辞書には、1つの単語に複数の意味が書かれているので迷うかもしれませんが、ここにヒントがあります。

 

例えば「library」という単語。辞書を引くと、複数の意味が書かれています。

1、 図書館、図書室
2、 書斎
3、 蔵書

 

英単語の文化背景がありますので、「library=図書館」とイコールで結んで1対1対応で覚えていくのは間違いなんですね。英語と日本語は、1対1で対応している訳ではありません。「library」に複数の意味があるということではなく、「library」の本当の意味を知るためのヒントが日本語で複数書いてあると捉えます。つまり、図書館、図書室、書斎、蔵書という日本語から、「library」とは「膨大な知識を蓄積したもの」だといったイメージをもつことが大切なのです。1単語に複数の意味があると思うと暗記も大変だし嫌気がしてきますが、もともとの意味があって、それをさまざまな日本語で表現して、真の意味をつかむためのヒントを出してくれているのが辞書だとわかれば、おもしろくなってきます。

 

――次に、文法の勉強法について教えて下さい。

 

はい。次に挙げる1例は、受験生にもよくお話することです。

① She plays tennis.
② She should play tennis.
③ He can play tennis.

 

この3つ文の違いは何だと思いますか?

 

①は事実ですね。それに対し、②の「should」は、誰が思っているのかといえば「私」なんですよね。つまり主観です。③の「can」も、②と同様に「私」、主観が入ります。日本語で言えば「~すべきだと思うね」「~できると思うよ」という感じです。こういうことも知るとおもしろくなりますね。

 

また、日本人がミスする分野の8割は、「SV」「時制」、「名詞の単複s・es」ですから、自分が何を間違えるのかリストアップしながら学習していけば、できるようになります。

 

――では、社会人が英語を習得するのに良い勉強方法はありますか?

 

初心者にも上級者にも共通して良い方法がありますよ。それは、自分にとって最高のシチュエーションを想像して、英語で1人2役の1人芝居をする学習法です。例えば、アンジェリーナ・ジョリーが好きだったら、彼女と出逢うシチュエーションを勝手に想像して、1人で彼女と自分の2役になりきってセリフを言い合う。この方法は、大量に話す機会を増やすことにつながり、また様々なシチュエーションを設定することで幅広い語彙や会話ができるので、語彙力の向上にも大きく役立ちます。僕はリラックスできるお風呂の中で実践することが多いです。時々妻に怪しまれますが……(笑)。英語力が下がっていないと言われるのは、これを日頃から自分でやっているからなのかもしれませんね。さらに会話を進めたいと思ったら、予めシチュエーション別の単語などを準備して、自分のテンションの上がるシチュエーションを設定して練習すると良いと思います。

 

言語を習得するのに、大抵は3年位かかります。でも、いったん英語ができるようになると、外国のドラマや映画を10倍以上楽しめるようになるし、外国人の友人と真剣な会話もできるようになる。そこには人生の豊かさが広がっています。

 

■プロフィール

坪田信貴(つぼた・のぶたか)
青藍義塾代表取締役 塾長。学校法人大浦学園 理事長。これまでに1000人以上の子どもたちを個別指導。心理学を駆使した学習指導法で、生徒の偏差値を短期間で急激に上げることに定評がある。初の著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)が話題。

 

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話
発売日:2013/12/26

 


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