外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【01】

外国で暮らすと母国が見える

外国で暮らす理由は人それぞれです。自分で行きたくて行く人。仕事や家族の都合で仕方なく行く人。きっかけが何であれ、そこでは慣れ親しんだものとは違う習慣、言葉、規則が待ち構えています。それは、今まで自分がどっぷり漬かっていた自国でのやり方を見直すきっかけになるでしょう。

当たり前だと思っていたことをまじまじと見つめること

筆者は二十代後半になるまで日本から一歩も外へ出たことがありませんでした。
その後、留学、仕事でフランスやアメリカへ。
そしてフランスで結婚、出産。
結局フランスとベルギーに15年以上住むことになりました。

海外に住んでいて休暇で日本に帰り、日本人の知人と話して気づいたのは、日本で行われていることが世界基準だと思っている人もいれば、逆に自分の国は比べようがないほど特殊だと思っている人もいるということ。これは別に日本に限ったことではなく、フランスで生まれ育ったフランス人も同じようなものです。

他人と出会わなければ、自分がどんな人間かなかなか分からないものです。私自身、先入観を持っていたと思います。また、人はひとりひとり皆違うのだから、国籍なんて関係ないとも考えていました。

実際に永年外国で暮らすことで、少し客観的になる機会が与えられ、それほど単純ではないということもわかりました。もちろん、機会が与えられたからといって即客観的になれるわけではなく、人間には自分が見たいものしか見ないという傾向もありますが。

 

外国で暮らしても、仕事や勉学の輪の中に留まっている場合と、その国の日常に深く足を踏み入れた時とでは差があります。
同じ職種や立場の人々には、国を超えた共通点があります。
仕事や勉学の世界には、生活臭さというものもありません。

本当にその国の普段の姿が知りたかったら、スーパーや市場で買い物をしたり、トマトを手に取ったら裏が腐っていたり、前の客が長々と店員さんと話しているのはなぜか考えたり、街で犬を散歩させたり、子どもを公園に連れて行ったり、道を聞かれたり、小学校の先生と話してみたり、子どもの友達を家へ呼んだり、アパートを借りてみたり、大家さんと交渉したり、おなかをこわして近所のお医者さんに行ったり、おなかの風邪にはコーラが効くと友人たちに勧められたりしてみないと…

ビックリしたり、感心したり、イライラしながら、逆に日本はなぜああなんだろう?と思う。
当たり前だったことが当たり前ではなくなる。
その時初めて、当たり前と感じていたものをまじまじと見つめることになります。

 

よく「外国に行くとかえって自分の国の良さがよくわかる。」と言いますね。
それはたぶんその通りですが、悪いところもよくわかるし、良くも悪くもないこともよくわかります。

時に、日本にいながらにして日本はなぜこうなんだろう?と思うこともあります。
内側にいながら既に外側からの目を持っている人にとっては、外に行って驚くことも少ないかもしれません。それでも、幼い頃から無意識のうちに慣れてしまっていることというのはひとつふたつあるものです。

それが海外生活であぶり絵のように姿を現す。
すぐには見えなくても時間差で、あなたを驚かすこともあります…

長年住んだから、実際に行ったことがない人より何でもわかっていると言うつもりはありません。一度もその国に足を踏み入れたことはないが、その国の歴史や文化について勉強し、それについてよく考えているという人もいます。そういう人もやはり、別の意味でその国を深く知っているのでしょう。

実際に住んでいれば、今その国で起こっていることを直接見て肌で感じることはできますが、その出来事の背景はというと、住んでいるからわかるわけではありません。

実際に異国の日常を体感した人。コンセプチュアルに異国を学んだ人。
どちらも、異国を見ることで自国を見つめ直していることには変わりがありません。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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