外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【02】

外国語を学習することで母語が見える

「外国語が分からない者は、母国の言葉についても分かっていない。」とは、泣く子も黙る文豪ゲーテの言葉。他を知ることで自らを知る、というのはどの分野にも言えることですね。外国語を学ぶことで、日本語について考えるようになったという方も多いと思います。外国語は母語を忘れるためではなく、母語を知るためにこそ学ぶと言っても過言ではないでしょう。

母語は無意識のうちに取得する

赤ちゃんが話せるようになるのは勉強するからではありません。

文法的にこうなってるからここではこう言うべき、この発音は子音が重なっているからこうなる、なんて考えたりしません。

周りの大人や子どもが話しているのを聞き、周りで起こっていることを見て、抱っこされたりお世話されたりしてコミュニケーションを取っているうちに、徐々に言葉を覚えていきます。

 

外国語は意識的に習得する

それに対して、外国語とは意識的に習得するものです。

親が国際結婚であるなどの理由で二つの言語が行き交う環境で育ち、無意識に二つの言葉を覚える人もいます。その場合は母語が二つあると言うべきでしょう。
どちらかが母語でどちらかが外国語、というわけではありません。

意識的に新しい言語を学習し始めると、今まで無意識に話していた母語を意識的に眺めるようになります。

まるで外国語を眺めるような新鮮な目で。
他人と出会って初めて自分の特徴を理解するように。

 

外国語としての日本語

母語を客観的に見る機会は他にもあります。
その一つが母語を外国人に教えることでしょう。
成長した人に言葉を教えるのですから、赤ちゃんが覚えるのとは違います。

効率的に学習するには、その言葉がどのように機能するのか、どんな規則があるのかわかった方がいいですね。

教えるなら生徒の立場に立って、母語を外国語として見る目が必要になります。
学習者の気持ちを理解することも、必要です。
その時、外国語を苦労して習得した経験が役立つでしょう。
それは日本人の日本語の先生だけではなく、母語を教えるネイティブの先生全てに当てはまること。

自分が無意識に覚えたものを他人に教えるのですから、無意識にできることを意識化してみなければなりません。

母語で素晴らしい作品を残した文豪にして、外国語を知る大切さを語っていた。
思えば夏目漱石も大江健三郎も、その他日本の多くの偉大な作家たちが、外国語と深い関わりを持っていた、持っていることを、改めて思います。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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