外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【08】

英語と言ってもいろいろある

英語はブリテン諸島で生まれて世界を旅し、方々で根を下ろしました。それぞれの地方で少しずつ異なる発音や表現があるのも当たり前ですね。今では、どれが「本当の」英語だとか、どれが「訛っている」とも言えない状況です。

パパはスコットランドの人

ブリュッセルに住んでいた時のことです。息子が仲良くなったA君の家族はイギリス人の一家。お父さんはスコットランドの出身でした。ブリュッセルはベルギーの中のフランス語圏です。A君のお母さんはフランス語でお仕事をしていましたが、お父さんはフランス語ができません。そこで、お父さんとはいつも英語でコミュニケーションを取ることになりました。

ところが何というショックでしょう!

私には彼の英語がほとんど聞き取れないのです。息子の大事な友達の親御さんですから全身を耳にして必死で聞くのですが、それでもわかりません。イングランド出身の友人の英語は私にとって聞きやすかったので、同じイギリスの中でもこんなに違う、というのは驚きでした。一体いくつ英語を勉強したらいいのか。

幸いにも、私が話す英語はA君パパにも分かってもらえました。ネイティブはどんな英語でもわかるのかな、と私は考えました。なぜかはわかりませんが、たまには、私にもA君パパの英語が分かることもありました。因みに学校はフランス語だったので、子ども同士はフランス語で話していました。

発音の違いは実は、地方や国によるものだけではありません。俳優やテレビのアナウンサー、語学の先生の発音はクリアで、一般的に聞き取りやすいです。(映画の場合、俳優でも演技で口ごもったり、俗語を連発したりするシーンはやはり聴きにくいですが)同じ国や地方でも、人による違いもあります。

 

アメリカ英語かイギリス英語か、はたまたオーストラリア、カナダの英語か

TOEIC®には、アメリカ英語だけではなく、カナダ、イギリス、オーストラリアの英語が入っています。英語を公用語とする国はまだ他にもありますが、アメリカ英語だけとかイギリス英語だけにするより、はるかにInternationalの名に相応しいと言えるでしょう。

A君パパに私の日本人的な英語を理解してもらったこともあり、私は英語のネイティブ同士は国が違っても、お互い全部理解できるものと思っていました。ところが、実際はそうでもないようですね。もちろん人にもよると思いますが、8割程度の理解らしいです。それを聞いて、なんだか少しホッとしました。

 

アナウンサーも訛っていい(少しだけ)

イングランドとスコットランド、東海岸と西海岸など、同じ国の中でも発音に違いがあります。今BBC(英国放送協会)では、アナウンサーが地方のアクセントを完全に隠すことなく、個性として尊重しているという話を聞きました。もちろん、視聴者に理解できる程度に、でしょう。まったく訛りの無い無菌状態の発音は、実は現実の世界には存在しないアクセントなのかもしれません。

そのことをまざまざと感じさせられるのは、人気番組「笑点」で「アナウンサー大喜利」をする時です。アナウンサーの皆さんもユーモアのセンスはあるのですが、笑点の舞台に上ると、喋り方のきれい過ぎるのがバレてしまう。同じことを言っても現実味がない。はっきり言ってしまえば白ける。そう感じるのは私だけでしょうか。

落語家とアナウンサー。どちらも喋りのプロ。しかし一方は個性を強調し、他方は個性を出しすぎないようにしているのですね。ニュースを落語みたいに読まれたら、確かにちょっと困ります。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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