外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【17】

中学英語を見くびるな!

「学校で習う英語なんて実際には何の役にも立たない」という声がある一方で、「一般の会話なら中学英語で十分」という人も多いようです。実際のところ、どうなのでしょうか?

実際に役に立つ英語とは?

「役に立つ英語」と言ってもその中身は千差万別です。海外旅行で地元の人とコミュニケーションが取れるのでしょうか。英語の論文が読めるのでしょうか。自分の意見を英語で正しく書けるのでしょうか。ネイティブと俗語でジョークが言えるのでしょうか。

 

構文や文法はどんな英語でも変わらない

英語の基本的な構文や文法は、外国人に道を教えてあげるときも、ウィルス学の論文でも、ベストセラーのエッセイでも、パソコンのマニュアルでもハリー・ポッターでも同じです。そしてそのほとんどは、中学校で習うものです。

普段の会話や大統領のスピーチも、基本的には同じです。確かに話し言葉となると、文法的に破格になることもあります。逆に格調高いスピーチでは、修辞的な表現が多くて中学文法をはみ出すこともあります。それでも、大部分は中学英語の知識でカバーできる範囲です。

 

崩れた表現にも元がある

学生仲間で話しているときなど、あまりきちんとした話し方ばかりしていたら白けるということもあるでしょう。しかし、崩れた表現も、正式な表現から派生していることが多いようです。また、普通じゃないからクールだとしたら、普通を知らなければどこがクールなのかわからないでしょう。

普通を知らなければ特別な表現を味わうことはできません。文法的に破格な表現を使った文学作品にも同じことが言えます。破格であるから効果が生まれるとしたら、それが破格であることすら知らないようではお話になりません。

 

語彙に関しては、中学英語は中学レベル

構文や文法ではなく語彙の話になると、大人は中学英語とは別の語彙が必要になるでしょう。TOEICTOEFL、英検準一級以上の試験を受けるにも、中学生の単語帳では足りません。大人が仕事や生活で必要な語彙は、消しゴムや筆箱、定規ではないからです。(外資の文具メーカーに勤めれば別ですが)

 

中学英語をマスターしている人は少ない

理科、社会、国語、数学…中学校で学習したことを全部覚えているという人はとても珍しいのではないでしょうか。そう考えると、義務教育の間に実にたくさんのことを学ぶカリキュラムになっていますね。

中学英語にしても、すでに仮定法過去や関係詞といった複雑な文法が出てきます。大学入試にもそのまま役立つくらいです。

仕事のための英語力をはかるというTOEICに頻出するのも、文法的には中学英語のレベルで解ける問題です。学校できちんと英語を学習した人はその点有利です。後は、学校で習わなかった各国英語のリスニングや語彙などを、基礎の上に積み重ねていくだけでTOEIC対策ができます。

 

学生のとき英語をきちんと勉強しなかった人はどうしたらいいか

では、学生のときに中学英語を身に着けなかった人はどうすればいいのでしょうか。大人になってから中学生用の参考書を引っ張り出す必要はありません。先ほども書いた通り、語彙や話題が中学生用ではあまり意味がありません。今は幸い大人用のやり直し英語の本がたくさん出ています。自分に合ったものを探してみましょう。

本当に基礎の基礎からやり直したいという方には、こちらがお勧めです。

中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく(学研教育出版)

 

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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