外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【21】

英語力と言ってもいろいろある

「英語力をつけたい」というのは、正確に言うとどういうことでしょうか。ある人にとって、それは英語の偏差値を上げるためでしょう。別の人にとっては字幕なしで洋画が見られることかもしれません。「英語力」とひとことで言ってもいろいろですね。

「文法はできてもしゃべれない」は昔の話?

かつては、「日本人は文法や読解は得意でもしゃべれない」とよく言われたものです。最近は、少し事情が変わってきたように思います。手軽に受けられるオンライン英会話の流行もその一因かもしれません。

英語を話すことに抵抗がなく、どんどんしゃべれる。が、文法的なミスも多く、書いてみると間違いだらけ、というパターンも増えています。

 

親の一方がネイティブの場合

国際結婚の子どもたちの話を前も書きましたが、家族の中に英語を話す人がいれば、子どもたちは自然に英語が話せるようになります。しかし、たとえ親がネイティブでも、読み書きは自然にできるようにはなりません。

知人のアメリカ人女性はフランス人と結婚してフランスに住んでいました。大学で英語を教えるようになり、親が英語のネイティブだという学生たちを担当しました。しかし、彼女は愕然としたと言います。彼らはもちろん英語がペラペラなのですが、読み書きとなると英語圏の小学生レベルだったからです。

自分の子どもたちには英語の読み書きもできるようになってほしいと思った彼女は、幼いときから英語の本を一緒に読み、英語で文章を書かせるようにしました。そのおかげで、成長した子どもたちは「話す」、「聞く」、「書く」、「読む」の4技能でバイリンガルになりました。

 

どんな英語力をつけたいのか

英語を学習するとき、また子どもに英語を習わせるとき、どんな英語力をつけたいのかイメージしておいた方がいいでしょう。親がネイティブの子どもたちでさえ、自然に4技能が身につくわけではないのです。

単にスピーキングといってもいろいろあります。英語で接客ができるようになりたいのか、ビジネスでプレゼンテーションができるようになりたいのか、外国人に道を教えられるようになりたいのか、それとも留学先で自分の意見が言えるようになりたいのか。

リーディングにしても、金融情報を速読できるようになるのと、シェークスピアを味わえるようになるのとでは語彙も勉強方法もまったく違います。

 

4技能はそれぞれ影響し合う

そうは言ったものの、4技能は互いにまったく関係がないわけではありません。

リスニングの練習でシャドーイングやオーバーラッピングをすれば、スピーキングにも即役立ちます。

正しく書くためには、リーディングで良い英語をインプットするのが不可欠です。「これ使える」という表現に出会ったら、メモして覚えておくといいですね。

しかし、漫然と読んでいるだけ、聞いているだけではなかなかアウトプットまでいきません。作文に役立てよう、スピーキングに役立てよう、という意識が大切です。

 

あなたは、どんな英語力をつけたいですか?

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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