外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【28】

TOEIC®は実際に役に立つのか?

TOEIC®の正式名称はTest of English for International Communication(国際コミュニケーション英語能力テスト)です。日常生活や仕事でコミュニケーションのために使う英語ということですから、実際に役に立たなければ困りますね。しかし、TOEIC®高得点も実際には英語が使えないというウワサも飛び交っています。どういうことなのでしょうか。TOEIC®の「実用性」について考える2回目です。

TOEIC®の問題は重箱の隅をつつくようなもの?

TOEIC®が実際に役に立つかどうかを問題とするとき、1一番やり玉にあげられそうなのがパート5かもしれません。文法や語彙を問う穴埋め問題が並んでいます。重箱の隅をつつくような問いがありそうな雰囲気ですね。

しかし、実際には細かい知識を問う問題は少なく、英語の構文や前置詞の性質を掴んでいれば解ける問題も多いです。

 

TOEIC®パート5はライティングの勉強にもお勧め

パート5は、英語のライティングを上達させたい人にもお勧めです。ライティングには、文章全体の構成のほか、文構造が英語として成り立っているかということも大切なポイントとなります。それを練習するために、パート5はもってこいです。

最近ライティングの個人授業で、文構造に苦闘している生徒さんがいました。TOEIC®パート5を練習として使ったところ、「今まで曖昧だったことがクリアーになってとても気持ちがいい。」と喜んでもらえました。パート5を勉強することによって文構造の理解が進み、正しい英文が書けるようになったのです。もちろん、話すときも正しく話せるようになりました。

ライティングには語彙や文章構成力も必要で、対処法は人によって違いますが、パート5は文構造を理解するのにお勧めというわけです。

 

TOEIC®に出る話題、出ない話題

TOEIC®のリーディングに出てくる文章といえば、ビジネスメールやビジネス関係の記事、広告、配達物の不在票、見積り書、ホテルや店からの連絡など、実際に英語圏で暮らしたり、仕事をしたりするときに必要なものばかり。まさに実用的な英語です。

実用的といっても、家族間の連絡や学生同士のメール、恋人同士のやりとりなどは出てきません。TOEIC®の語彙には学生同士が使う俗語も入っていません。キャンパスライフにTOEIC®は役立たないかもしれませんね。留学に役立つのはやはりTOEFLの方でしょう。

TOEIC®には子育ての話題もないので、高得点者でも「鬼ごっこ」を英語で何というか知らないということは十分あり得ます。

また、政治問題や宗教が出ることもありません(市長選の話題くらいは出ますが、候補者の政治的立場などは話題となりません)。生死にかかわる病気や事故もTOEIC®の世界にはありません。

つまり、TOEIC®が実際に役立つかどうかは、何を「実際」と呼ぶかによっても変わってくるというわけです。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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