外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【47】

学校の英語今昔
少人数クラスは常により効果的か

学校の英語教育の変わった点、変わらない点について、現役高校生の親の視点から書いています。学校や地域による差もありますので個人の経験ではありますが、実際に見聞きしたことを元に考えています。前回から、主に少人数クラスについての体験と考察です。

英語の授業をすべて少人数クラスにする必要はあるでしょうか

少人数クラスの方が効率的な学習もあれば、少人数である必要がない学習もあります。このシリーズで前に書いた「少人数クラスとカリスマ講師、そして宿題の時間」でも少し触れましたが、もう少し具体的に見てみましょう。

スピーキングの練習が大人数でできないのは明らかですが、先生の説明が重要な文法の導入など、少人数であることより説明の質が求められる授業もあります。また、リスニングの練習となるディクテーションは、人数を少なくしてもあまり意味がありません。少人数でなければならない授業とその必要がない授業があるのではないでしょうか。

 

映画を見るのも勉強のうち

子どもが通っていた学校では、時々みんなで英語圏の映画を見ていたようです。映画を見るということは、言葉だけではなくその国の暮らしぶりや習慣に触れるということです。もちろんネイティブの普段の発音を聞くことにもなります。

ところがこの「大人数授業」が廃止され、英語の授業はすべて少人数クラスに。子どもたちはおかんむりでした。「英語の授業で唯一好きな時間だったのに!」という子もいました。

なぜこのような変更があったのか、私は知りません。誰かが「これでは勉強にならない」と言ったのでしょうか。誰かが先生が楽をしていると思ったのでしょうか。映画なら家で見られると言った人がいたのでしょうか。

確かに映画は家でも見られます。家でも見られる映画を、学校でクラスのみんなや先生と一緒に見るなんて、素敵ではありませんか?子どもたちはきっと、休み時間にさえ見た映画について話し合うでしょう。おもしろいと思った子も、つまらないと思った子も。授業で意見を言うのが苦手な子も自由に感じたことが話せるかもしれません。

それに、どんな映画を見るのが英語的成長のために役立つか、判断できる保護者ばかりではないでしょう。思春期の子どもたちの方でも、保護者が勧める映画を素直に見るとはかぎりません。

 

わからない部分があっても全体的に把握するという経験

「わからない単語や文法、口語表現がたくさん出てくる映画を見て何になる?映画は教材ではない。」という意見もあるかもしれません。

しかし、映画が英語の勉強になる理由は、まさにそこにあります。

「使える英語」とはどういうことでしょうか。わからない単語や発音があっても、全体的な文脈が掴めるということではありませんか?

現実に英語を聞いたり読んだりするときには、知らない単語や文法的に破格な表現も出てきます。すべてを明確に説明してもらわなければ気が済まないという癖がついてしまうと、実際には英語が使えなくなります。

知らない表現が混ざるのはもっと勉強が進んでからでいいと思うかもしれませんが、いつ導入しても慣れるのに時間がかかるのは同じことです。「知らない単語があるとどうしてもそこで止まってしまう」という大人は驚くほど多いのです。だとしたら、最初から「知らないこともある世界」に馴染んでいた方が、本人たちにとって有益でしょう。

一学期に何回か、現実を疑似体験するために映画を見ても、誰も損をしないと思います。さらに、映画が英語を学ぶモチベーションを高めてくれたら、それ以上の収穫はないでしょう。

 

ライタープロフィール●外国語人

英語、フランス語、外国語としての日本語を教えつつ、語学力に留まらない読む力、書く力を養成することが必要であると痛感。ヨーロッパで15年以上暮らし、とりあえず帰国。この世界の様々な地域で日常の中に潜む文化の違いが面白くて仕方がない。子育て、犬育て中。TOEIC®985点
https://www.znd-language.com

 

 

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