外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【48】

学校の英語今昔
教育方法の変化と先生の準備時間

学校の英語教育の変わった点、変わらない点について、現役高校生の親の視点から考える最終回です。さまざまな試みが導入されている一方、今の先生は昔に比べて圧倒的に忙しそうです。先生が忙しすぎると生徒にどんなしわ寄せがあるのか心配ですね。

部活、そして事務作業

かつて部活といえば、その部の活動内容が好きで、熟知している先生が担当していました。運動部の先生は、教える教科は何であれ、そのスポーツを自分でもやっていたり、美術部の先生は自分で毎年展覧会に絵を出していたり。それが普通だと私たちは思っていました。

今は、自分がしたこともないスポーツの部活を担当させられ、自腹でスポーツ教室に通う先生もいるようです。

さらに、日本の学校では事務作業まで先生にさせています。これは果たして効率的なことなのでしょうか。教えるのに必要な能力と事務作業に必要な能力は同じではありません。

夜遅くまで先生が学校に残っていたり、休日出勤しているのを見ると、これで優秀な若者を教師として確保できるのかと心配になります。

 

教材研究と授業の準備時間

ちまたの語学学校や塾でさえ、授業の倍以上の時間を準備にかけるのは当たり前です。経験がない先生がより多くの時間をかけるとは限らず、ベテランでもしっかり準備をする先生が良い授業をするようです。

入試や資格試験の傾向は変わりますし、毎年やってくる生徒は違うのです。目の前にいる生徒が必要とする授業をするためには、ベテランでも毎年判を押したように同じ授業をするわけにはいきません。先生が事務作業や部活に追われ、教材研究や授業の準備に十分な時間が取れないとしたら、本末転倒でしょう。

新しい教授法を導入するにあたっては、先生にも相応の準備時間が必要です。その時間を仕事の時間として確保できなければ、カリキュラムを変えても生徒が受ける恩恵は少ないでしょう。

以前テレビで、アクティブラーニングを導入する小学校の先生が取材を受けていました。それを見ると、新しいメソッドを導入する都度、現場では新たな準備が必要だということをつくづく感じました。

 

アクティブラーニングとは

アクティブラーニングが何を意味するかを理解するには、「アクティブ」の反対が何かわかれば簡単だと思います。

この場合、activeの反対はpassiveです。activeにもpassiveにも色々な意味がありますが、対立する言葉として使うと、activeは「積極的な」「能動的な」、passiveは「受動的な」、「消極的な」という意味になります。

学習者が教師に与えられたことをただ覚えるだけというのが「受動的な」学習法だとすれば、学習者が自分から何かすることによって学習するのがアクティブラーニングです。ですから、一言でアクティブラーニングといっても、方法はひとつではありません。多種多様な実践があります。

少人数クラスでのディスカッションもアクティブラーニングなら、生徒が行う発表もアクティブラーニングです。

 

中学英語のアクティブラーニングの試み

子どもが通っていた中学校では、英語の授業で「発表」というのがありました。自分自身のこと、自分が経験したこと、自分が考えたことについて、英語で準備して発表するのです。

私自身が中学生だった時には、そのような授業はありませんでした。当時は「自分のことを自由に」といっても自由英作文くらいのもので、それも学校ではなく近所の小さな英語塾で書かせてもらえたくらいでした。

「書かせてもらえた」というのは、それがとても楽しかったからであり、自分が書きたいことを書くために使った単語や文法は、決して忘れることがなかったからでもあります。

 

授業としての「発表」の効用

発表を準備する時間に問題集を進めたとしたら、おそらく何十ページも進めることができるでしょう。しかし、次の週には忘れているかもしれません。

自分が書きたいこと、言いたいことを今持てる英語力でどう言ったらいいか。それを調べ、先生に教えてもらい、書いて、クラスの前で緊張しながら話す。そうやって達成感を味わったり、反省したりしたら、それは間違いなく大きな経験となるでしょう。「教わったこと」や「教科書に書いてあったこと」はなかなか覚えられないものです。しかし、自分で考えて発表したことやクラスメートの反応、先生のコメントは、何十年たっても忘れないのではないでしょうか。

 

ライタープロフィール●外国語人

英語、フランス語、外国語としての日本語を教えつつ、語学力に留まらない読む力、書く力を養成することが必要であると痛感。ヨーロッパで15年以上暮らし、とりあえず帰国。この世界の様々な地域で日常の中に潜む文化の違いが面白くて仕方がない。子育て、犬育て中。TOEIC®985点
https://www.znd-language.com

 

 

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