柔術インストラクター MAX増沢さん
「英語ができればチョイスが増える」

Successful Interview!
~英語力を活かして働く~ Vol.06

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――そして卒業後に就職し、ロサンゼルスに海外赴任したのですね

 

はい。本来ならパナマに行かされる可能性が高かったのですが、本当は一番行ってみたかったアメリカに、運よく行けました。しかし、ここで予想外のことがおきました。私は、イギリス英語を話すことが個性だと思っていたので、それまで会社でもイギリス英語を意識して使っていました。 ところが、アメリカに行ったらフレーズも違うし、単語の使い方も違う。同じ英語でも違う文化なんです。これは衝撃的で「俺英語しゃべれない」という状態になってしまい、人前で英語をしゃべれなくなってしまいました。
ほかにも、初めて部下しかも年上で女性の部下をもったり、食生活が変わったうえに運動ゼロとなって太ったり、どんどんストレスがたまり精神的に参ってしまいました。
さらには、私の周囲でとても悲劇的な事件も起こり、「ここは自分のいる国じゃない」と思いましたね。
そのような状態から、極端に刺激的なことをやって抜けだそうと思い、柔術をやろうと思ったんです。

 

――なぜ柔術だったんですか?

 

もともとプロレスが好きだったので、UWFインターナショナルの安生洋二が、ロサンゼルスのヒクソン・グレイシー柔術アカデミーへ道場破りに行き、返り討ちにあったことが記憶にあったんです。それ以来、ロサンゼルス=グレイシー柔術というイメージがあったんですよ。しかも、私の通勤経路にグレイシー柔術アカデミーがありました。
もちろん、最初は道場を見つけても怖い印象があって通おうとは思いませんでした。しかし、ストレスにさいなまれるなか、荒療治を受けるつもりで通うことにしたんです。幸いラグビーをしていたので、肉体的な痛みには強かったですし。
ちょっと誤算だったのは、ヒクソン・グレイシーの道場ではなく、弟であるホイス・グレイシーの道場だったんです。ですが、テレビなどでホイスの実力も知っていたので、ミーハー的にはうれしい部分もありました。そこから、ホイスと僕は師匠と弟子としての関係が始まりました。 結果的には、ストレスも解消され、太っていた身体も痩せました。また、道場の仲間は仕事が関係ないので信頼関係が築きやすく、普通に会話を楽しむことができました。それがきっかけで、アメリカの人たちと抵抗なく会話もできるようになりました。

 

――英語で柔術を習うのは大変そうですが?

 

身体の部位とか動かし方の英語は、日常会話や仕事では使うことはありません。しかし、練習のなかでは繰り返し使われるし、インストラクションというのは何回も説明してくれるので体験しながら理解できます。なにより、日常会話よりも興味のあることだからわかりやすかったですね。
また、ホイスはスターとはいえ、道場を出れば友達として扱ってくれました。彼らブラジル人はポルトガル語の特徴で“R”を発音しない特徴があったりしましたが、ネイティブじゃないぶん会話は楽でしたね。

 

――英語力を身につけたことが、ご自身のキャリアにどう影響したと思いますか?

 

英語を身につけたことによってチョイスが増え、結果的に自分が興味を持つ仕事に就きやすくなったと思います。また、行く場所が増えたり、会話をする対象が増えたりしましたね。欧米人は人と話すのが好きなので、エレベーターに乗り合わせたり、バーで隣に座ったりしても話が始まります。それを、自分もできるようになりました。そのことで、日本人相手でもかしこまらずに話しかけられるようになったし、付き合いがしやすくなったと思います。

 

――日本で道場をされているとのことですが、英語を使う機会はありますか?

 

英語でクラスのインストラクションができるのが、私のスキルのひとつです。幸いなことに最初から英語でインストラクションを受けたので、英語で説明できますし、意味を理解しているから日本語でも説明できます。会員の中には外国人の会員の方もいるので、使う機会はたくさんありますよ。

 

――ちなみに、なぜMAXと名乗っているのでしょうか?

 

大学2年のときにバイクでオーストラリア大陸を横断するツアーに参加したんです。そして映画「マッドマックス」でスタントマンが事故で死んだシーンを撮影した場所を走っているときに気分が高揚してきて、「俺をMAXと呼んでくれ」と言い出したんです。それからは、モーテルでもスーパーでも、行く先々でMAXと名乗り、周囲もMAXと呼ぶようになりました。
その後、イギリス英語では本名の「ケイスケ」が「カイスケ」になってしまうので、MAXという名前は、ちょうどよかったです。

 

――逆に、今後は英語力がないと、どのような影響がでると思いますか?

 

自分が英語に興味をもったころは実際に手を出す人は少なかったですね。ですので、結果的に、英語を学び取った人は、ほかの人から突出する可能性は高かったように感じます。
現在は、小学生から英語を学ぶようになるなど環境が違います。これにより、少なからず英語力を高めるでしょうし、昔ほど英語だけで突出することはできなくなるかもしれません。
しかし、道場では英語で指導や会話をしても「ぜんぜん意味がわからない」という人がほとんどで、世の中はそれほど簡単には変わらないかもしれないので、まだチャンスはあると思います。

 

――最後に読者に応援メッセージをお願いします。

 

人と会話をするのが楽しいと思えるのであれば、日本人だけでなく外国人と話せれば、自分とまったく違う常識を持っている人と話せるのでおもしろいと思いますよ。
今はインターネットがあるので能力さえあれば、会話のチャンネルは増えてきます。日本だけの価値観の中で「こうなりたい」だけでなく、ほかにもチョイスがあることに気づくことができるかもしれません。
たとえば、日本の田舎でねぎを作っていることをカッコイイとは思わないが、フランスでねぎを作るのはカッコイイと思う人がいるかもしれない。実質的には同じでも、チョイスが増えるわけです。 みなさんも、ぜひ人生の選択肢を増やしてください。

 

 

■プロフィール
MAX 増沢
東京都墨田区出身。大学卒業後、商社勤務を経て柔術の道を志す。グレイシー柔術アカデミーでホイス・グレイシーに師事。同時に全米でパワーヨガの始祖、ブライアンケスト元でパワーヨガのトレーニングを積み、帰国後に「MAX柔術アカデミー&ヨガスタジオ」を開設。現在も、同スタジオにて、インストラクターを務める。
大会出場歴も豊富で、2012年世界マスターシニア黒帯階級で準優勝のほか、日本では2008年に、全日本マスター&シニア柔術大会(茶帯 体重別無差別)で優勝するなど、国内外で多数の入賞経験を持つ。

MAX柔術アカデミー&ヨガスタジオ
http://maxjj.com/
東京都墨田区太平2ー7ー4 第一寺田ビル1階
電話 : 080-3450-9585
講師 : MAX 増沢(Max Masuzawa)
Eメール:info@maxjj.com
■JR総武線 錦糸町駅(北口)
■地下鉄半蔵門線 錦糸町駅(出入り口3)徒歩5分

 

 

撮影・取材・文/さいとうよしかず(編集部)

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