2024年夏 順天堂大学セブフィールドスタディプログラム 株式会社コーワ セブ工場を訪問
セブ島での工場見学・交流プログラムで株式会社コーワ様を訪問しました
今年で2回目の開催となった順天堂大学国際教養学部セブフィールドスタディプログラム(実施期間:2024年9月1日~8日)。今回も現地企業訪問や学生交流などを通して文化の違い、貧困、動物愛護に関する問題に取り組みました。今回、企業訪問に際し、ご協力いただきました株式会社コーワ セブ工場(TOA KIKO CEBU CORPORATION、以下コーワ)の訪問レポートです。
順天堂大学国際教養学部セブフィールドスタディプログラムについて
順天堂大学国際教養学部では、1年生時に4週間のセブ留学プログラムが用意されており、多数の学生が参加しています。
一方、セブフィールドスタディプログラムでは、2年生以上の学生を対象に、文化の違い、貧困、ジェンダー問題などに関する問題に取り組み、アクションを起こす課題提起型プログラムとなっており、今回が2回目の開催となり、3年生4名の参加となりました。
このようなプログラムの中で、邦人企業が色々な問題を乗り越え、実際に運営されているかを見学することが今回の企業訪問の目的となります。
今回訪問する株式会社コーワとはどんな会社?
LED照明の優位性にいち早く気付き、製品を開発してきた株式会社コーワ。LEDを使用したスポットライト、ダウンライトのOEM生産を行い、特に住宅用ダウンライトの分野では国内トップレベルの市場シェアをもっています。
商品の企画から設計、品質評価そして生産まですべての工程を自社で行い、生産は国内工場及びセブ工場で行っており、競争力も高い会社です。
取扱製品や詳しい企業情報は、株式会社コーワ(http://www.kowa-lighting.co.jp/)をご覧ください。
工場の場所
工場があるのは、2023年の企業訪問と同じくセブ島の隣のマクタン島内の経済特区エリア(MEPZ:Mactan Export Processing Zone)。高級リゾートホテルの近く、空港や港にも近く便利なエリアに位置しています。この経済特区内には日本企業がなんと数十社も進出しています。
このエリアは歴史も古く、進出してすでに30年以上経過している企業も多いです。
工場見学に出発
宿泊先のホテルからコーワまでは50分ほどの道のり。
学生4名、教員2名が車に乗り込みコーワセブ工場に出発します。
ホテルはセブシティにあり、コーワは橋を渡ったマクタン島にあります。距離にするとそれほど遠くないのですが、二つの島を結ぶ橋は2本。出発した時間帯は、ちょうどラッシュの時間帯と重なっており、何か所も渋滞ポイントがありましたが、ほぼ時間通り工場につきました。
なんと工場の正門には順天堂大学の訪問歓迎のバナーが飾ってあります!旅先でJuntendoの名前を見るのはいつも嬉しいものですね。
そして、車を降りると現地の方から日本語で「おはようございます」の声が。日本語でのあいさつは初めてです。
会社説明
今回の訪問に関して、工場長 今関様だけでなく、日本から代表 入江様、総務部 澤様にも参加いただき、コーワ セブ工場の説明を行っていただきました。
まずは会議室を使用して、入江様からコーワの事業内容やセブ進出の歴史を教えて頂きました。
セブ工場が設立されたのは1989年とのことで、設立時点の経緯は今となっては代表も詳細がわからない、とのことでしたが、日本はちょうどバブル真っ只中だったために、人件費を抑えるために進出したのではないか、というお話でした。
それほどまでに進出から時間が経過しているのですが、セブ工場には設立時の社員がいらっしゃるとのこと!フィリピンでは長く勤める社員がいる会社がなかなか無い中、30数年勤務されている方がいらっしゃるのはびっくりです。
また現在セブ工場で働いている方は約230名、これは日本の従業員数よりも多いそうです。
日本とセブでどのような分担をしているかの説明です。
セブ工場では主に照明器具用部品の生産を担当しており、日本側の工場ではセブ工場やその他の工場から調達した部品を使って最終組み立てを行っているとのこと。当然ながら輸送時間なども考慮して製品を作ることを想定されているのですが、時には飛行機を使っての貨物輸送も行っているとのこと。
現地従業員の方から、英語での会社紹介も行って頂きました。やはりこういうプレゼンテーションは外国に来ている、と言う感じがして良いですね。途中冗談なども入って、楽しいプレゼンテーションでした。
コーワはSDGsへの様々な取り組みも行っており、スポーツフェスティバルも行われているとのこと。セブで揃いのユニフォームを着て運動会!楽しそうですね。
セブ工場の位置づけ
照明器具を作り上げるためには、プレス、スピニング、ダイキャストなどの金属加工そして塗装等たくさんの工程が必要です。セブ工場では日本に比べて安い人件費をフルに活用することで低コストで部品が生産でき、それが市場競争力のある商品に生かされます。
また、人件費の安さだけでなく、若い人口が豊富なフィリピンの特性を生かすために、フィリピンから日本の工場へも毎年十数人が交代で出向されているそうです。
工場見学
一通り説明が終わった後に、いよいよ工場見学のスタートです。今回はスタート地点が製品完成部分(スポットライト)となっており、遡るように見学をするとのことです。いつもと違うパターンですね。
まずは仕上げの部分から。ダウンライトやスポットライトの部品を組み立てられています。
この部品が日本に出荷され、最終的な製品になるとのこと。
奥で作業されている方々が製品の組み立てや検査、梱包を行っています。
こちらは製品倉庫、出荷を待つ製品が並んでいます。箱詰めされた製品が右の写真のコンテナで港や空港に運ばれるとのこと。船で運ぶか、飛行機で運ぶかは天気や納入状況などで判断しているとのこと。海外ならではですね。
コンテナの左上にはバスケットゴールが見えますが、セブの工場はバスケットコートが用意されているところが多いですね。このように運動をして社員の仲が良くなるのは良いですね。
次に塗装ブースです。こちらの部屋は塗装物にゴミやホコリが付かないように隔離されています。部屋の中は明るく、窓が大きくとられた構造になっており、塗装が見やすくなっている様です。
部品はハンガーにセットされ、焼付塗装を行うものもあります。ハンガーにぶら下がっている部品がどんどん機械の中に入っていきますね。
ハンガーのメンテナンスも行うための部屋も用意されており、製造のメンテナンスが多岐にわたっているのがわかります。もちろんこの部分も現地の従業員の方が作業されています。
工場で使用されている水は、カルシウム分が多いため処理を行い工場で使用できるレベルにしているとのこと。水処理施設棟のそばにはヤシの木があり、「早く熟れないかなぁ」と。
その他に大きなマンゴーの木もあります。マンゴーが実る時季には社員たちで取り合いになります。会社で熟れたマンゴーの実を食べるのってなんだかわくわくしますね。ほんとうに南国らしいです。
次に見せて頂いたのはアルミニウムの塊(インゴット)です。各々の学生が手に持ってみて重さを確かめています。学生からは「おもーい」との声があがっていました。これが溶かされて製品に変わっていきます。
こちらのるつぼでアルミニウムのインゴットが溶かされて、ロボットアームで次の機械に注がれています。離れて見ているのですが、ここからでも熱さが伝わってきます。
人の手が介在しないのは安全性が高いのではないでしょうか。
この扉の向こうでドロドロに溶けたアルミニウムから部品が整形されています。
ガラス窓からでも熱気が伝わってきますが、見たことのない光景なので、皆さん興味津々で覗き込んでいます。
次のエリアは、鉄板の加工です。こちらはロボットが自動的に鉄板を加工していきます。
ロボットが自動的に一枚の板から複雑な形を整形して(NCスピニング加工)いくのは、面白くてみんな真剣に見ています。
こちらはロボットでやっている作業をフィリピン人の職人さんが手作業で行っています。
実際には、こちらの職人さんの動きをロボットで作業させているのでしょう。部品の数や大きさなどでロボット、人のどちらを使うかを選択しているとのこと。セブの工場で働く人は女性が多いのですが、このエリアは力作業が多く、全員男性の方が作業されていました。みなさん手製の道具を作って作業されていて、職人さんと言う感じです。
全てロボットに置き換えるのではなく、職人技を残して少量多品種に備える、というのも工場生産の面白いところなのではないでしょうか。かつては日本の各地で行われていたことが、ここセブで行われているのも興味深いところです。
作業エリアはここまでで、おおよそ1時間ほどの工場見学でした。学生の考え方や人を捉える目が開始時からは変わっているように見えました。
こちらは工場内の従業員用の食堂です。現地の方が食べるご飯が並んでいますが、おいしいので日本の従業員の方もたまに食べているとのこと。こういうところでも社員の交流が進むのでしょうね。
学生は日本で売っている乳製品を見つけて親近感がわいたようで、食堂で購入してみて、工場見学の終わりにプチ乾杯しています。
海外赴任者・現地従業員の方との交流
工場見学を終えて、質問コーナーです。
工場見学や工場の中に入ったことが無い学生がほとんどで、質問だらけの交流になりました。例えば、現地従業員の働き方、暮らし、クリスマスパーティーや、日本とのやり取り、トラブル発生時の対応など、海外ならではの問題などもあり、それらを乗り越えながら日本とセブとのやり取りを行っているとのこと。
やはりコミュニケーションのなかでは、英語は大切、話のとっかかりには日本の歴史を知っておくことも大切とのこと。そしてなんでも食べる、と言うことも海外赴任では重要だそうです。
次は、現地従業員の方とのお話です。
ここでは、英語で現地従業員の方の働き方や暮らしなどを聞いてみます。
大学で習った英語が通用するだろうか、また見学時に疑問に思ったことなどが英語で聞けるだろうか、不安だった学生ですが、従業員の方の笑顔が不安を払しょくしてくれます。
フィリピン人の英語力は非常に高く、単語だけでの質問などもちゃんと理解しようとしてくれます。時にはお互いがスマートフォンを使って、コミュニケーションを図っています。これが現代風のコミュニケーション術なのではないでしょうか。
海外で働く、コミュニケーションをとると言うことは、英語だけではなく教養やコミュニケーションのバックグラウンドをしっかりと持ち、物怖じせず飛び込んでいくというのが重要なことを学んだと思います。
ランチパーティー
コーワ様のご厚意でランチパーティーを開催して頂きました。
社長様の掛け声のもと、ジュースで乾杯です。
一緒に食事をすると、さらに心が打ち解けますね。コロナを機にリモートですることが増えましたが、働いている方と一緒に仕事や食事をして人と人との心が通じ合うのではないでしょうか。
学生はこれまでに訪れた訪問先(ゴミ山やスラムなど)を現地の方に説明したり、写真で見せたりと、各々が作った今回のプロジェクトなども説明し、意見を聞きながらプロジェクトを完成させていきます。
最後はみんなで会社の前で記念写真です。
今回の貴重な機会を与えてくださいました株式会社コーワ様、本当にありがとうございました。
工場見学を終えて(学生の感想を一部抜粋)
- 日本人従業員、現地従業員の皆様がとても優しく、PCを使用した説明でもわかりやすく企業説明をしてくださってわかりやすく、とても感動しました。
- 初めて工場の中に入り、どのように製品がどのように作られていくか、一つの製品を作り上げるのにも何人もの手を経て作られていくかが良くわかりました。
- 現地での仕事内容を見て、日本との役割分担やコストの削減などを知る良い機会になりました。