海外就職研究家 森山たつをさん
「海外で働く選択肢を知って欲しい」
~世界視野をもつグローバルリーダー~ Vol.02
ビジネスの急速なグローバル化が進む今、英語を学び「企業のグローバル化に備えたい」「世界規模の仕事がしたい、海外で働いてみたい」と考える人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、日本で唯一の海外就職研究家・森山たつをさんに、海外就職の現状やメリット・デメリット、日本人が海外で就職するために必要なスキルについてお伺いしました。また、こちらのコラム(海外就職研究家が教える、海外で働くために必要な“英語力”とは)では、海外で働くには実際にどの程度の語学力が必要なのかを業務の種類別に解説しています。是非チェックして下さいね!
取材・文/甲斐真理愛(編集部)
「日本の雇用に夢が持てない今こそ、 海外で働く選択肢を知って欲しい」
——アジアを中心に就職や転職活動を経験してきた森山さん。海外で働こうと思ったきっかけとは?
大学卒業後、製造業向けのITの仕事をしていたんですけど、予算の削減などでその仕事が減ってきちゃって。それで、「今のスキルを活かして新しい仕事に就くにはどうすればいいんだろう」と考えた時に浮かんだのが、海外での就職だったんです。最初はやっぱりアメリカとかヨーロッパで仕事を探したのですが、正直、厳しくて。
——なぜ、厳しいと感じたのでしょう?
アメリカやヨーロッパで日本人に求められる仕事の多くが“グローバルジョブ”と呼ばれる規模の大きいハイレベルな仕事だからです。例えば、「大企業製品の世界物流網の仕組みを考える」とか。スキルも無しにいきなり目指せる仕事でもないし、世界で1番優秀な人たちが集まる場所で外国人と英語で議論する必要があるため、語学力もTOEIC満点は当たり前。すごく高いレベルの知力・経験・語学力が必要となる場合が多いです。
——グローバルに働くといった時に、まず、アメリカやヨーロッパでと考えがちですが、その壁は高そうですね。
本当にそうです。じゃあほかに、雇用のチャンスが多い国はどこかなと考えたら、東南アジアに日系企業がたくさんあって、そこでの仕事なら語学力はさほど必要とされないし、雇用が拡大している状況なのでチャンスが多いと。特に今は、日系自動車メーカーの部品をつくる工場がどんどん増えているので、そこの現地スタッフを統括するマネージャー的な仕事に、日本人が求められています。 給与は、仕事内容やそのときの相場によって変わってくるので一概にはいえないのですが、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム。このへんの国の日系企業の仕事だと10万から20万円はもらえて、尚かつ現地の物価が安いので、それなりにリッチに暮らせると思いますよ。
——夢のある話ですね! ちなみに、海外で働くデメリットってなんでしょう?
空気や水が合わなくて体調を崩すこともあるでしょうし、あとは、その国のやり方、文化を受け入れられないとやっていけない。例えば、喫茶店で3種類のドリンクをオーダーしたら、東南アジアでは必ず1つは間違っていますから(笑)。日本のやり方、仕事のクオリティから離れられない人は辛いでしょうね。
——日本の仕事のクオリティはすごく高いと思います。でもその分、労働環境が過酷ですよね…。
本当に過酷だと思います。だからこそ、「海外で働く」選択肢があることを知ってほしい。例えば、労働環境があまりに悪くて、「このまま日本で働き続けたら死ぬ」って時に「じゃあインドネシアに転職しよう」とかそういう選択がとれるわけで。 逆にインドネシアの経済がクラッシュして働く場として適さなくなる可能性もありますが、その時は、また日本で働けばいいじゃんと。色々選択ができるわけじゃないですか。
——確かに日本一点ばりにしておくよりリスク回避できますね。では、海外で働くために必要なスキルってどんなことでしょうか?
東南アジアでもどこの国でも、まずは役にたつのが英語です。これはあるに超したことはない。プラス必要なのが仕事のスキル。海外では特にスキルのみで判断されることがほとんどなので、今、自分がやっている仕事のスキルをいかに高めておくのかが重要ですね。それは別に製造業に限らず、例えば小売りの店長をやっているなら、在庫管理を効率的にやるノウハウを極めるとか。本当に「何ができるのか」が重要だと思います。グローバルに働くって日本で働くのとすごく違うような言われ方をしていますけど、さして変わらないですよ。求められていることも一緒です。周りの人と上手く力を合わせて目標を達成する。その周りの人の国籍、言葉が違うから英語や現地語、現地の文化やビジネス習慣を覚える必要があるというだけです。