世界規模で事業展開している秘書に聞く
「秘書に求められる英語力と適性」
アメリカでは、4月の第4水曜日を「Administrative Professionals Day(秘書の日)」と呼び、上司が秘書を労うためにランチに誘ったり、花やプレゼントを贈ったりするそうです。日本でも外資系企業を中心に、少しずつ定着してきているのだとか。そこで今回は「秘書の日」にちなんで、海外に幅広く事業展開している企業の役員秘書として勤務している方に、秘書の仕事と英語力の必要性について伺いました。
お話し頂いたのは…
国内数社で役員秘書を経験し、現在は上場中堅メーカーに社長秘書として勤務している、秘書歴約20年のSさん。仕事で英語を使う機会も多く、日頃から自身の英語力に不満を感じ、一昨年、一週間の休暇を取得して、ロンドンにある語学学校の社会人向けクラスに参加。
――これからのビジネス現場で求められる能力として、「英語」の重要性はどんどん高まっていくことが予想されますが、秘書の仕事ではどの程度の英語力が求められるのでしょうか?
現状では日本で働く秘書全員が、英語力必須というわけではありませんが、近い将来国内のどんな組織に属する秘書やアシスタントも、業務上で英語を使う頻度が増えることは必至だと感じています。早かれ遅かれ、二ヶ国語以上の他国語スキル(トライリンガル以上)も求められる日も来るのではないかと予想しています。
――何がきっかけで、留学に踏み切ったのですか?
学生時代に交換留学生募集試験を受けたこともあったのですが、費用面等で断念し、「自分の稼ぎで、いつか留学してみたい」と思っていました。社会人になって、海外現地法人や取引先、外国人スタッフとの英語でのコミュニケーションが増えるにつれ、自分が言いたいことを的確に表現できなかったり、簡単な業務連絡メールだけでも半日以上を費やすことがあったりと、英語力不足ゆえに仕事が捗らないことに不満が募る一方でした。
長年、それを早く克服したいと思いながらも、苦手意識から英会話は避け続け、公立の学校で日本人英語教師から習った典型的な受験英語の知識でしのいできましたが、ようやくまとまった休暇が取得できたので、念願をかなえるべく思い切って行ってきました。
――留学後、業務内容に変化はありましたか?
特に変化はありませんが、行く前よりも英文メールや儀礼文書作成に割く時間は短縮し、国際電話の応対や外国人スタッフとの英語によるコミュニケーションも円滑になったように感じています。現地に行くまでは、「英語のみで会話」にかなり尻込みしていましたが、間違いを気にせず、最後まで話を続けられるようになったのは、大きな成果だと思っています。
――語学力以外に求められる能力はありますか?
現在でも、会計・法律・経済・人事労務といった経営全般に関する幅広い知識は必要とされますが、今後はそれに加えて、何かしらの専門知識や経験も求められるのではないかと思います。また、「数歩先」の可能性を想定しながら動くことも求められますので、先ほど申し上げた具体的なスキルのほかに、いくつかの適性も必要でしょう。
■洞察力:周囲に目を配り、相手の言動行動を推測できる
■想像力:相手の立場や判断の違いがもたらす結果に、思いを至らせられる
■行動力:本やウェブサイト等では知り得ない情報を、能動的に収集できる
■ストレス耐性:長期休暇が思うように取得できず、孤独で緊張を強いられる環境でも、公私をうまく切り替えられる
■柔軟性:与えられた指示に迷ったり、意に添わなかったりしても、多面的思考で臨機応変に収められる
といったところかと思います。「秘書」というと、ドラマや雑誌で見るような華やかなイメージを持っている方が多いように感じますが、実際はデスクワーク以外にも、役員が仕事に専念しやすい人的・物的環境作りに奔走したり、「何も起こらない事が当たり前の状態」を維持するために裏方に徹したりと、泥臭い仕事です。
また、秘書的スキルは社会人の素養となりつつあり、ITの進化につれて需要は減っていますが、「需要がある、求められる人」でいるためには、「誰にでもできる仕事」に「自分なりの付加価値」を加えて、「自分にしかできない仕事」として差別化を図ることも手段の一つだと思います。その「付加価値」を、日々の仕事に昇華させることは不断の努力を要しますが、それはどんな仕事に就いても、同じではないかと思います。
取材・文/Cheer up English編集部