順天堂大学セブフィールドスタディプログラム
ヤマシンフィルタ セブ工場を訪問
順天堂大学 国際教養学部 セブフィールドスタディプログラムの工場見学をレポート
順天堂大学国際教養学部が2年生以上を対象に新規の試みとしてセブを主体としたフィールドスタディプログラムを実施(実施期間:2023年9月10日~20日)。現地企業訪問や学生交流などを通して文化の違い、貧困、ジェンダー、保健医療に関する問題に取り組みました。ここでは日系企業であるヤマシンフィルタ株式会社のセブ工場を訪れた際のレポートをお送りします。
順天堂大学国際教養学部セブフィールドスタディプログラムについて
順天堂大学国際教養学部では、1年生時に4週間のセブ留学プログラムが用意されており、多数の学生が参加しているためセブに対して理解・経験を持つ学生が多いのですが、
今回のフィールドスタディプログラムでは、留学と言う一方向でセブを捉えるのではなく、どのような生活を行っているか、貧困問題、ジェンダー、保健医療に関する問題に取り組み、アクションを起こす課題提起型プログラムで、初開催の今回は2~4年生までの8人の参加となりました。
今回訪問するヤマシンフィルタとはどんな会社?
神奈川県横浜市に本社を置くヤマシンフィルタ株式会社。東証プライム(旧 東証一部)上場の会社ですが、聞いたことがある人は少ないのではないでしょうか。実は皆さんの生活に直結するものすごく重要な製品を作っている会社なのです。
ここでフィルタと言えばなにが思い浮かびますか。電気・電子回路やITでも○○フィルタという用語を見かけますし、身近なところではコーヒーをドリップするフィルタでしょうか。
ヤマシンフィルタが開発・製造・販売しているのは主に建設機械用の油圧フィルタで、世界トップシェアを誇っています。なので、彼らのフィルタ無しでは建設機械の大半が動かず、世の中の建設・土木作業が止まってしまう、そんな重要な役割を果たしている会社なのです。他の取り扱い製品や企業情報についてはこちらのヤマシンフィルタHPをご覧ください。
https://www.yamashin-filter.co.jp/
ではなぜセブなのでしょうか?日本の会社なので日本で製品を作っているのでは?と思う方もいると思いますが、実は早く(1989年)からグローバル化を目指してセブに進出し、今ではセブ工場の生産数が一番大きく、人数も一番多いとのことです。
工場の場所
工場があるのは、セブ島の隣のマクタン島内の経済特区エリア。
通常セブと言われて思い浮かぶ場所は実はマクタン島にあり、高級リゾートホテルなども周りにあるので、こんな所に経済特区が存在しているのか?と思ってしまいますが、近隣にマクタン・セブ国際空港があるのと、国際的な港があるので工場の立地としては非常に便利な場所になります。このエリアにはプラモデルで有名な田宮模型を含め日本企業がなんと数十社も進出しています。
工場見学に出発
ホテルから学生8名、教員2名と私の総勢11名が車に乗り込みヤマシンフィルタ セブ工場(以下、ヤマシンセブ)に出発!
ホテルから工場まで約40分の道のり、数年前は渋滞がひどかった印象ですが、主要道路が整備されているのとマクタンとセブを接続する3本目の橋も完成し、随分と渋滞も減った様子ですね。
車に揺られながら橋の下を見ていると先日の見学先である水上スラムが見えました。
この橋を越えるとすぐにヤマシンセブのある経済特区に到着です。
到着~会社説明
いよいよマクタンの経済特区MEPZ(Mactan Export Processing Zone)に到着。
こちらは経済特区のゲート。ここからすぐのところにヤマシンセブがあります。
ヤマシンセブに到着しました。代表の加々美さんはじめ皆さんが待っていてくれました!
なんと、工場の入り口にはウェルカムメッセージが!うれしいですね。全員が会議室に入ったところで、早速、代表の加々美さんから会社や環境の説明をして頂きました。
加々美さんのユーモアも交えながらの説明の中で、何を作ってどのような取引があるのか、会社としてSDGsに対してどのような取り組みを行っているかなど、今回のフィールドスタディプログラムにマッチするようなことも説明して頂き、緊張していた学生もどんどん話に引き込まれています。
ここで学生がびっくりする説明がありました。なんと従業員数525名に対し女性比率は70%、平均年齢は30歳!日本の一般的な工場では考えられない比率です。会議室なのであまり学生はピンときていませんが、後々実感することになります。
工場見学
この工場にいる日本人従業員は3名とのことで、どのように500人を超える現地従業員の方と働いているか、学生は興味津々です。
YAMASHINの帽子をかぶって工場見学に出発です。みんなで帽子をかぶると気持ちも一体になってなんだかチームみたいになりますね。
工場は何棟かに分かれているのですが、まずは様々なオペレーションを行っているオフィスから紹介してもらいましたが、働いている方のほとんどが女性。会社説明でも話があった70%が女性とのことをここでも認識。管理職も女性の方が多いです。
フィリピンではこのような職場が多いのですが、日本の環境とだいぶ違うので学生は興味津々で質問をしています。
次にフィルタを製造している現場に移動です。フィルタろ材がロールに巻き取られているところから、紙を貼り付けたり、ギザギザに折り曲げたりして厚みのあるフィルタに整形します。機械化されている部分と手作業の部分がありますが、セブ工場では人の作業が多めとのこと。
自動化と手作業の割合を調整しながら製品を作る、と言うのも重要なところなのでしょうね。
工場では物を運ぶのは男性が多いようですが、作業している人は女性が多いです。フィリピンは女性が頑張る国なのですね。中には溶接をしている女性の姿も見られました。皆さん笑顔で明るいのがこの工場の特徴です。
こちらはKaizenの掲示板です。Kaizenは日本語の「改善」です。
この言葉は世界の製造業の共通語となっていて、製造、品質、環境などからどの部分が効率化できるか、働いている方からの提案などを掲示してカイゼンを行うそうです。
学生は当然初めて見るものですが、日本語がこのような形で浸透しているのは彼らにとっては新鮮なのではないでしょうか。
工場見学は次の棟に移動します。
こちらの棟はフィルタを収めるケースを作ったり、実際にフィルタをケースに収め製品化をしている棟です。
こちらは巻き取られていた鉄板からフィルタのケースを作る工程です。
鉄板が延ばされてフィルタ用の穴が開けられます。
ここでは、フィルタをケースに入れて製品化する作業を行っています。このケースは別の海外工場から運ばれてきているとのこと。色々な国と連携して製品を作るんですね。
こちらは簡易フィルタを製造している現場です。出来上がったフィルタはこのような感じになります。
次は出荷棟に移動します。
イメージで言うと一般的な体育館の数倍!たくさんの製品が出荷を待っています。
航空貨物を使用したり、船便を利用できるのが、この経済特区の特徴でもあります。
船便の荷物を運ぶ40フィートコンテナ(約12m)がたくさん並んでいます。船便の場合、海が荒れてしまうと出荷が遅れたりするので天気予報が気になるとのこと。無事に出荷されると良いですね。
ここまでで、フィルタの元になるろ材からフィルタを作り、フィルタケースに収め製品完成、そして梱包、出荷までの一連の流れを見ることができました。
現地従業員の方との交流
約1時間の工場見学を終えて、ミーティングルームに戻ってきました。
次は加々美さんに加えて現地従業員の方との交流です。
ここでは英語での質疑応答です。学生は緊張しているせいかなかなか質問が出ない状況ですが、そんな中でも現地従業員の方々は一生懸命質問を引き出そうとしてくれます。
この方は日本語で挨拶してくれました。日本で勉強したわけではなく、フィリピンで勉強したとのこと。もちろん英語にも堪能です。同じような年齢の方を選んでくださっているのですが、学生は圧倒されそうです。がんばれ!
加々美さんや現地従業員の方のサポートもあり、みんなだんだんと話せるようになりました。学生は個々の課題テーマを持ってこのプログラムに参加しているので、企業の環境問題や雇用、水質問題だけではなく、工場以外のSDGsの質問、例えば食生活の質問などをしていましたが、それにも優しく答えてくれていました。
最後に今回の工場見学のメンバー全員で記念撮影です。もうみんな気持ちも打ち解けあって楽しそうな感じですね。
ランチパーティー
工場見学の締めくくりは用意してくださったランチパーティーです。従業員の方々と学生は交互に座りどんどん仲良くなっていきます!
大勢の前で英語を使って話すのは少し恥ずかしかったかもしれませんが、同じような年齢での会話は国境を越えてしまいますね。
終了時間になっても席を離れたくない学生ばかり。本当に良い工場見学でした。ヤマシンフィルタ様、本当にありがとうございました。
工場見学を終えて(学生の感想)
- めったに見られない工場見学が経験できたので良かったです。事務室では女性しかいないことに衝撃を受けました。その後のランチ交流会も非常に良かったです。
- 日本人の視点から、実際に住んだ感想やフィリピンの方の特徴が聞けてよかったです。
このような機会がなければ絶対に見られないような工場設備や女性が重要職で働く姿などが見られてとても興味深かったです。ランチの際の交流もとても楽しかったです。
- 従業員の組織図のようなものが表に掲示されていることに驚きました。
またマネージャーなどの上の役職はほとんどが女性であり、男性は主に力仕事を任されていることがわかりました。
- 会社の概要やSDGsへの取り組みを伺い、実際にどのような人がどのような役割を担っているのか自分の目で見て学ぶことができました。さらに、従業員の方々と質問をしあったり、お話しする時間もあり、大変充実していました。
- 工場は男性が多く働いているイメージだったので、非常に驚きました。特に、管理職はほとんどが女性の方で衝撃を受けました。
- ランチタイムの際にヤマシンフィルタで働いていることは幸せかと質問しました。
ここで働いていることは幸せであるという答えをいただきました。現地の人にとって、ヤマシンフィルタの存在が雇用の提供となっているだけでなく、やりがいのある仕事として重宝されているということを感じ取ることができました。