ありがとう永井一郎さん『サザエさん』
波平からカツオへ最後の人生訓を英訳
あのアニメの名セリフを英訳!!

去る1月27日に亡くなった声優の永井一郎さん。『サザエさん』(フジテレビ・日曜午後6時30分)では、1969年10月の放送開始から44年間、磯野家の主・波平の声を担当、「ばっかも〜ん!」と叱る、古き良き日本の父親像が多くの人に愛されていました。永井さんが演じた最終放送タイトルは『波平、親切騒動』。奇しくも波平が主人公のストーリーでした。そこで編集部は、波平がカツオに語った最後の人生訓を中心に、おなじみの名セリフを英訳。ちょっぴり頑固で温かい、お父さんのひと言を噛み締めてください。
街中でお年寄りの荷物を持ってあげている波平の様子が、カツオのクラスメート花沢さんのお父さんの目に留まり評判に。本人にとって当たり前のことが周囲に持ち上げられ、少々気恥ずかしい波平。とはいえ、カツオとお風呂に浸かりながら、こう言って聞かせます。
「カツオも人に親切にすることを心掛けなさい」
Be kind to others.
ここは伝わりやすく、「他人に親切にするように」とひと言で訳しました。ちなみに「心掛ける」という部分もしっかり表現するなら、“Bear it in mind to be kind to others.”でもOK。“Bear in mind”は、「心掛ける」、「肝に銘じる」という意味です。
そして、波平の親切が学校で評判になることを期待するカツオを、穏やかにいさめます。
「親切は自慢するもんじゃないぞ」
The kindness shows nothing to brag about.
“nothing to brag about”は、「自慢するほどのことではない」というイディオム。父親が子どもを躾ける大切なひと言ですね。
さて、ここからは波平の昔気質な父親像がうかがえる名セリフをご紹介。
マスオが新入社員から辞表を渡され困っているときには、
「近頃の若い連中は辛抱が足らんからな」
Today's young people just have to be more patient.
「近頃の若い連中は……」なんて、いかにもオヤジの常套句っぽいセリフですね。
“have to be more patient”で、「我慢が足りない」。「もっと辛抱しなさい」という意味が込められています。
お父さんの老後は私が面倒見るんだから!と言い張るワカメに目尻下がりっぱなしの波平。つい嫁にいってしまう日を想像してしまいます。
「ワカメは誰にもわたさんぞい!」
I'll never let my daughter go to anyone.
幼い娘をもつ世の父親はみんな、こういう風に思っているのでは?
一方、カツオには少々厳しい波平。えこひいきだとつむじを曲げたカツオを見て、サザエやフネも同情し、「もう少しやさしくしてあげれば」と波平に進言しますが、このひと言で一蹴。
「わしゃ、子どもの機嫌をとるようなことはせん!」
I don’t play up to my son!
「機嫌をとる」を“play up(媚びへつらう)”で表現しました。父親たるもの、これくらい頑固なほうがいいですね。
それでもやっぱり、我が子はかわいい。波平はカツオのことをこう言います。
「おろかな子ほど親はかわいいもんだ」
A dunce is all the dearer to his parents.
“dunce”とは劣等生。まさにカツオのような子どもを指します。“dearer”は「より愛おしい」という意味です。
最後は、波平おなじみの名セリフです。
「ばっかも〜ん!!」
Hey you! Naughty boy!!
“Naughty boy”とはわんぱく坊主のこと。永井さんの落とす雷は、いつも子どもへの愛情にあふれていました。
永井さん亡き後、二代目・波平を茶風林さんが務めることに。茶風林さんといえば、『名探偵コナン』の目暮警部や『ちびまる子ちゃん』の永沢くんを演じるベテラン声優です。すでに2月16日放送分から、新しい波平節で楽しませてくれています。記念すべき第一声は、「うるさいぞ!二人とも!」。サザエとカツオは、早速雷を落とされてしまいました。やっぱりこれからも日曜日の夕飯時といえば、『サザエさん』ですね。
構成・文/松本考史