IELTSオンライン講座連載【1】IELTSの勉強は何から始めれば良いのか

 IELTSテストについて解説 | パート別に問われる英語力と学習ポイントを紹介

カナダで10年英語学校を経営し、現在オンライン完結型のIELTS対策サービス「IELTSオンライン講座」で講師をしているKumikoさんの連載シリーズ。第1弾はIELTSテストの仕組みや各パートで必要になる英語力を解説。今からIELTSテストを受ける予定の方や受けたことがない方も必読のIELTS対策の始め方をご紹介いただきました。

テスト勉強を始める前に

IELTSの対策を始めるぞ!となった時に、まず行ってほしいのは
1. 情報収集
2. 目標スコアを決める
3. 自分の現在地を知る
ということです。

1の情報収集で知るべきことは
・IELTSとはそもそも何なのか、どんなテストなのか
・対策にはどれくらいの時間がかかるのか
・勉強法はどんな方法や選択肢があるのか
・その中で自分に適した勉強法は何か
といったようなことです。

いきなりIELTS対策のスクールに申し込んで、すべてを丸投げしてしまうのは、地図を持たずに旅に出るようなもので、おすすめしません。

焦る気持ちもあるかもしれませんが、まずはしっかりと敵を知ったうえで対策の計画を立てて、装備を整えて、進むべき道のりが見えている状態で、実際の対策勉強を始めましょう。

そのための情報を、この記事では提供していきます。

 

IELTSテストを理解する

IELTSのテストでは、リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングと、4つの技能の能力が試されます。

 

リスニング

4つのパートで構成されており、内容は下記のようになっています。

パート形式場面問題数時間
ダイアローグ(2人) 問い合わせ・申込など 10 計30分
+10分書き写し
モノローグ(1人) ガイド・案内 10
カンバセーション(2人~4人) カレッジ 10
モノローグ(1人) 大学の講義 10
計40問

 

音声の前に問題文を読む時間が与えられ、音声を聞きながら問題に答えていくという形式のため「先読み」というテクニックが必要とされます。

この「先読み」という形式はTOEIC®と同じですが、TOEIC®と異なるのは、問題文や選択肢が非常に長いこと 。そのため、IELTSリスニングでは、聞き取り能力とともに「読む」能力も試されます。

IELTS試験はイギリスやオーストラリアが主催しているため、イギリス英語がメインとなります。しかし、アメリカ英語も混じっています。

IELTS試験で問われる4技能の中では、比較的スコアが取りやすいため、IELTSの対策を始めるときには、まずリスニングから取り掛かるように勧めることが多いです。

 

リーディング

全部で40問あり、これを60分の制限時間で解きます。

アカデミックの場合、3つのパッセージに分かれており、各700~1000語程度(約2ページ分)のパッセージ(課題文、本文)が3つあり、それぞれに関して12~13問出題されます。

ジェネラルの場合、3つのセクションに分かれており、Section 1, 2は日常生活、ビジネス、大学生活に関する300〜500語程度のパッセージ(課題文、本文)が各セクションにつき2つあり、それぞれについて5〜7問出題されます。Section 3は各700~1000語程度(約2ページ分)のパッセージ(課題文、本文)が1つあり、12〜13問出題されます。

とにかく英文の量が多く、問題数も多いので「速読のテクニック」および「時間配分」の戦略がカギとなります。

速読といっても、とにかく英文を速く読む、というのではなくメリハリをつけた読み方でしっかりと内容を把握して問題に正解していく必要があります。

英語の単語・文法といった知識だけではなく、高度な国語力が問われる試験でもあります

学生時代に国語が得意だったり、日本語でも読むことが好きな人はIELTSリーディングも、少しのトレーニングを経るとすんなりスコアが取れますが、反面、最後までスコアが取れずに苦しむ人も多いのが、このIELTSリーディングです。

 

スピーキング

IELTSスピーキングは、試験官と1対1の対面形式です。3つのパートに分かれており、全部で最大14分。

内容は下記のようになっています。

パート形式内容問題数時間
Q&A 個人的なことについての質問 6〜10くらい 計14分(最大)
プレゼン 与えられたトピックについて説明
Q&A 一般的な議題について議論する。意見が求められる 6〜8くらい

※スピーキングテストが最大で14分になるように試験官がコントロールしているため、問題数はテストの進み具合によって試験官が調節します。

スピーキングの評価基準は4つ。
この4つの基準に沿って、学習の戦略を立てていく必要があります。 

1. Fluency and Coherence(流暢さと首尾一貫性)→沈黙、言い直し、

繰り返しが最小限で流暢性があり、質問の意図を汲み取ってわかりやすく説明できる。

2. Lexical Resource(語彙力)→幅広い語彙を正しく使える。

3. Grammatical Range and Accuracy(文法力)→幅広い文法を正しく使える。

4. Pronunciation(発音)→理解しやすいクリアな発音ができる。

 

スピーキングで多くの人が苦労するのが、英語の側面はもちろんですが、なんといってもテーマが難しいこと。

難しいというのは
「女性の社会進出を妨げる要因は?」
といったような社会問題などのテーマが難しいということもありますし
「幸せとは何ですか?」
というような、抽象的なものや
「日本で一番人気があるスポーツは何ですか?」
といったような、日頃あまり考えたことがないような、突拍子もないようなことを聞かれるので、難しいと感じることが多いようです。

つまり、英語の面だけではなく、日本語で聞かれたとしても答えにつまってしまうような問題、ということですね。

もちろん、それを英語で答えなければいけないということで二重の難しさがあります。

また、採点基準の中で、どうしても注目してしまいがちなのが「文法」や「単語」なのですが、これらは木でいうと枝葉の部分です。まずは幹の部分となる「流暢性」をしっかりと鍛えることが優先であり、この部分が不安定なまま、難しい文法や単語を使ってもスコアが伸びないという構造になっています。

日本人はスピーキングに苦手意識がある人が多く、確かにIELTSスピーキングも最後まで苦戦する人が居るには居ますが、実は4技能の中では一番、短期でスコアを伸ばしやすい技能でもあります

極端に苦手意識を持たず、採点基準をもとにしっかり学習計画を立ててトレーニングを行っていけば、目標スコアを取ることはできます。

 

ライティング

2つのタスクを60分の制限時間で解きます。
タスク1は150語、タスク2は250語の最低語数が決められています。
内容は下記のようになっています。

【アカデミックの場合】

タスク内容指定語数時間配分配点
図表の内容を説明する 150語以上 20分 3分の1
トピックに対して自分の意見を述べる 250語以上 40分 3分の2

 

【ジェネラルの場合】

タスク内容指定語数時間配分配点
手紙を書く 150語以上 20分 3分の1
トピックに対して自分の意見を述べる 250語以上 40分 3分の2

※タスク2はアカデミック、ジェネラル共通です。

ライティングの評価基準は4つ。この基準に沿って、学習の戦略を立てていく必要があります。

1. Task Response (TR) タスクの達成度→問題に対して適切に答えている。
2. Coherence and Cohesion (CC) 一貫性と統一性→内容に一貫性と論理性があり理解しやすい文章である。
3. Lexical Resource (LR) 語彙力→語彙を幅広く正確に使えている。
4. Grammatical Range and Accuracy (GR) 文法力→文法を幅広く正確に使えている。

 

スピーキングと同じで、このうち、多くの人が注目してしまいがちなのが、「文法」と「語彙」です。しかし、難しい文法や単語を使えば、良いスコアが取れるかというと、決してそうではなく、しっかりと論理が展開できていることと、一貫性があることが最優先事項です

しかし、これは日本の義務教育では習わないため、どのように対策を立てたら良いのか、皆目見当もつかない、というのが多くの人の印象のようです。

「文法」であれば文法書をやれば良い、「単語」であれば単語を覚えれば良い、というようにわかりやすいですが、「一貫性」と言われてもピンとこないですよね。

これを日本人が克服するためには、解答文の1文目に何を書いて、2文目に何を書いて、と、すべての位置を固定した枠組みが必要です。これを私は「ストラクチャー(構造)」と呼んでいます。

ライティングはIELTSの中でも最難関であり、最後まで苦しむ人が多い技能です。しかし、しっかりとストラクチャーに沿って書くことができれば、英語力はそのままで大幅にスコアアップすることが可能です。

しかし、スピーキングにしろ、ライティングにしろ、一朝一夕に流暢性や一貫性を鍛えられるわけではなく、自分で実践してみてフィードバックを受け、改善していくというサイクルを、本番までに何度も繰り返す必要があります。

これについては、本連載の別の記事にて詳しくお伝えします。

 


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IELTS対策の進め方は?

ここでTOEIC®などのスコアをもとにどうやって勉強を行ったらよいか、ケーススタディを2つご紹介したいと思います。
2人のそれぞれの状況と、それに応じたIELTSオンライン講座での勉強計画の例です。

ケース1:Aさん

TOEIC®650 / IELTSは未受験、目標は6.0

海外経験なし。IELTSの対策はどこから始めたら良いのか、まったく見当がつかない

【学習計画】
おそらく、IELTSを受けると5.0~5.5くらいでしょう。
スピーキング・ライティングは少し苦手そうです。

【1ヵ月目~3ヵ月目】
・リスニング
・リーディング
・単語 

スピーキングとライティングはとりあえず置いておきましょう。理由は、リスニングとリーディングが伸びない状態ですとスピーキングとライティング(特にライティング)は絶対伸びないですし、むしろ足をひっぱる原因にもなり得ます。まずはリスニングとリーディングで6.0に近い点数を取れるように集中してがんばってみてください。

単語は必ず、最初から最後まで毎日行います。反復して記憶を定着させます。

【4ヵ月目~】
・スピーキング
・ライティング
・単語

リスニングとリーディングがだいたい6.0程度取れるようになってきたら、スピーキングとライティングとライティングに取り掛かります。

単語は最初から最後までずっと、毎日続けます。

 

ケース2:Bさん

TOEIC®850 / IELTSは未受験、目標は7.0

スピーキングが苦手。ライティングは経験がないので自信がない

【学習計画】
TOEIC850は高い英語力です。
英語に限らず試験だったり試験勉強に慣れていらっしゃるところも強みでしょう。
IELTSについて、未受験ということですが、私の予測としてリスニングとリーディングは、初見で6.5程度は取れるのでは、と思います。したがって、リスニングとリーディングにつきましては多くの対策は必要ないでしょう。

おそらく、最後までスピーキングが足かせになってくるのかもしれません。スピーキングで7.0ってなかなかのスコアですからね。

ライティングに関してですが、リーディングができる方はライティングもそうそうこじらせることはない、というのが私の今までの経験から言えることです。地道な勉強が報われる技能でもあります。上にも書きましたように、スピーキングやライティングは添削およびフィードバックを受けるのが基本です。

【毎日やること】
・単語の勉強
・スピーキング
・海外ドラマや多読、多聴などのインプット作業

【週3回程度】
・シャドーイング
・ライティングの添削分を復習

【週1回もしくは2週に1回】
・リスニング、リーディングの過去問を本番形式で解いてみる→復習、分析
・スピーキング、ライティングの過去問を本番で解いてみる

 


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/IELTSオンライン講座講師・Kumikoさん

カナダで10年英語学校を経営。

カナダで初めて日本人特化のIELTSコースを設立。 対面での個人・グループレッスン、セミナー、スカイプレッスン、通信講座とさまざまな形式で指導してきた。明日香出版社よりIELTS対策本を出版予定。

IELTS公式運営機関であるIDP Educationのセミナー講師。

 

 

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