ドラ・トーザンに聞く
「フランス式常識に縛られない恋愛作法」
“日本とフランスの架け橋”として活躍する国際ジャーナリストのドラ・トーザンさん。昨年(2016年)出版した『愛される男の自分革命: 人生が100倍輝くフランス人の極意』(徳間書店)をもとに、Dear B,読者へ向けてふたつの質問をしてみました。
後編 ドラ・トーザンに聞く、「フランス式常識に縛られない恋愛作法」
Dear B,ライター(以下Dear B,) 前編のインタビューでは、女性に時間とエネルギーを使える男性こそフランス人が考えるイイ男ということでしたが、後編は実践編。フランス人の常識に縛られない恋愛作法について伺いたいと思います。
ドラ・トーザンさん(以下ドラ) はい。よろしくお願いします。
型にはまった恋愛の日本人
もっと自由なフランス人
Dear B, フランス語を勉強していて気づいたのですが、フランス語では恋も愛も同じ言葉「アムール」で表しますよね!? それでは使う人によって恋と愛の意味で、とらえ方のズレが生じませんか?
ドラ その答えを知るには、まずフランス人の恋愛に対する考え方について説明する必要がありますね。日本では好きな人ができると、デートから結婚までお決まりの流れがありますよね。交際期間中だから「恋」しているとか、家族になったから「愛」してる、といった具合に「恋」と「愛」を分けているようにみえます。だからズレが生じないわけですよね。
Dear B, もしかして、フランスでは違うのですか?
ドラ フランスには日本のような決まりごとがありません。そもそもデートはアメリカからきた概念で、フランスには存在しない言葉です。だってAmour(アムール)って、もっと自然なものでしょ? デートをしなければ恋できない、結婚しないと愛せないというわけではありませんよね。おっしゃる通りズレが生じることもあるかもしれませんが、決められた枠の中でしか恋や愛が感じられないのって寂しくありません? それを気にするよりも「自由」にAmour(アムール)を楽しむ方が大切! というのがフランス人の考えかしら。
Dear B, えええ! 決まりごとがない、デートという言葉がない、さらにはもっと自由に……! 衝撃的な内容ばかりでパニックです(笑)。ではどうやって好きな人と仲良くなっていけばいいんですか?
ドラ 稀にドラマティックな出会いもありますが、だいたいは友達のホームパーティーに行った際にお互い番号を交換して、今度コーヒーに行きましょう! とか、映画館に行ったり、レストランに行ったりして仲良くなっていきます。フランス語ではランデブーと呼びますけど。ここで重要なのは、デートという決められた枠組みで会っていないことです。だってお互い興味があれば自然に仲良くなっていきますよね。好きという感情は自然に生まれてくるものです。もっと自由に、型にはまらないで行動してみてください。キーワードは「自由」ですよ! Liberté!
フランス人はデートに誘わない
Dear B, 相手に関心があるから、一緒の時間を楽しむという感覚でしょうか?
ドラ その通りです。日本の恋愛に対する考え方はすこし固いですよね。それってお互いプレッシャーになると思うんです。男性はデートコースを入念に準備したり、女性も普段買わないような服を買っちゃったり。女性にイニシアティブをとる気持ちは大切ですが、そこまで肩をはらずに、好きな相手と一緒にいることを楽しめばいいと思いますよ。
自分らしく自由な関係をつくる
フランス人の恋愛作法
Dear B, 先ほどのドラさんのお話にもありましたが、日本人は「自由」に恋愛を楽しむことが苦手で、これはカップルや結婚生活にも言えることだと思います。フランスでのカップルや結婚生活について近年の傾向を教えて下さい。
ドラ フランスではカップルによって様々なコンセプトがあります。最近友人のゲイ・カップルが3組結婚しました。彼らの関係はとても古風で、10年、15年ぐらい生涯を共にしています。彼らのように本当にクラシックなカップルもいますし、同棲をせずに好きな時に会って、一緒の時間を共有するだけの夫婦もいます。結婚せずにひとり暮らしする人も増えてきているんですよ。自由にコンセプトを選択できるということは、それだけ可能性があるということです。何からも縛られずに、もっと自分の好きな関係を築いてみてはいかがでしょう。
Dear B, なるほど。「恋愛はこうしなくてはいけない」「結婚はこうでなくてはならない」という世間の常識にとらわれず、自分達らしい関係を構築していけばいいのですね! どうしても形式ばった恋愛を選んでしまいがちな日本人。ドラさんのおっしゃるとおり、私達もフランス人のように肩肘はらず、もっとリラックスしてもっとオープンマインドに恋愛を楽しんでみてもいいのかもしれません。
取材・文 / 金子 良
撮影 / REGION
撮影協力 / 神楽坂キートス茶房
前編 ドラ・トーザンに聞く、「フランス人の考えるイイ男とは?」
ドラ・トーザン Dora Tauzin
エッセイスト。国際ジャーナリスト。フランス・パリ生まれ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連広報部勤務後、92年からNHKテレビの「フランス語会話」5年間レギュラー出演。慶應義塾大学講師を経て、現在は「アンスティチェ・フランセ東京」、「アカデミー・デュ・ヴァン」などで講師、また日本とフランスの懸け橋として、新聞・雑誌への執筆や、講演、テレビ・ラジオのコメンテーターなど多方面で活躍中。主な著作として、『ドラがみつけた外国人の東京スタイル』、『東京のプチパリですてきな街暮らし』、 『フランス人は「ママより女」』、『パリジェンヌ流 今を楽しむ! 自分革命』、『パリジェンヌのパリ20区散歩』、『フランス人は年をとるほど美しい』『好きなことだけで生きる』など。2009年、文化庁より長官表彰(文化発信部門)。2015年、レジオンドヌール勲章シュヴァリエを受章。
HP http://www.doratauzin.net
書籍情報
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