魔法使いの結婚式?ほうきが欠かせない
カナダのロマンチックなセレモニー
IKUMI from Toronto
トロントでいくつかの結婚式に参列したけれど、一番印象に残っている結婚式は友人トリの結婚式。トリはヴィクトリアの愛称。
多くの宗教が混在するトロントで、トリは魔法使いの宗教「Wicca(ウィッカ)」の信者 。ウィッカはキリスト教以前のヨーロッパで信じられた土着の多神教を復活させようと1950年代から広がりを見せた比較的新しい宗教。教会に所属する人も、個人で信仰する人も。信じていることを公表しない人が多く、世界に何人の信者がいるのか定かではない。
トリのウィッカ結婚式。まずは招待状に「ウィッカの結婚式だからそういうのが苦手な人は遠慮してね」と断りが。だけど、すべての人が問題なく出席したそう。結婚式場は芝生の上でとっても気持ちいい!
参列者みんなで手をつないで輪を作り、新郎新婦がその輪の中に入場。ふたりの腕は手をつないだ状態で縄で縛られ、輪の中心にほうきがあり、びっくり! 牧師さんが剣で空を切り、箒で掃き、セレモニーがスタート。東西南北とみんなで向く方向を変えながら、風火水土の精霊にご挨拶。手を縛られたままカップルは輪の中心に置かれた困難を象徴する三つのアイテム(火、水、ほうき)を飛び越えて駆け抜けた 。
その後、ふたりが使ったワイングラスを麻袋に入れ、石にぶつけて破壊。ふたりだけが使ったグラスを割ることで、ふたりの間の思い出・関係に他の人が入らないようにするためのおまじないだって。
結婚式の準備は、パートナーと一緒に何でもしようと決め、腕を縛った縄も一緒に結ったそう。
“Ask for forgiveness, rather than permission.”
許可ではなく、許しを求めよう。
「みんなと違う結婚式を挙げる事で誰かをアンハッピーにするかもしれないと思ったけど、きちんと説明して、できるだけの配慮をしたら、あとはそう思ったの。」
100%みんなをハッピーにはできないから、「~してもいい?」と聞くのではなく、ある程度決めたあとで「許して!」とおねだりするくらいがいい。肩の力を抜いてね、というトリからのアドバイスで今回のレポートを終わりにします。
また来月もお楽しみに!
*お断り:ここで紹介した結婚式やウィッカの儀式は友人への取材をもとにしたものであり、多様なウィッカ全てを説明する意図のものではありません。
吉田育未(よしだ いくみ)
佐賀県出身。21歳の米国留学まで愛するふるさとで育つ。 留学先のコロラドでパンクでアナーキーな人々と時を過ごしパンク音楽に目覚める。帰国後、佐賀の居酒屋で カナダ人マイケルと会い、学生結婚。 トロントへ移住。トロント大学院在学中にドキュメンタリー「ロスト・アンド・ファウンド」の制作に携わる。 現在、翻訳や通訳、リサーチの仕事に打ち込む傍ら、執筆や映画制作活動にも取り組む。カナダの文学、音楽、映画、鳥が大好き。ブログも更新中:Kitsune on the Waves
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