イタリア男はロマンス至上主義
Tinderで巡る外専世界旅行記
Tinderの歩き方
〜男で世界一周してみた〜
日本には一定数の「外専」と呼ばれる女達がいる。
外専=外国人専門
これは、海外で育った帰国子女を指すわけではない。日本で育って、日本人に囲まれてきたどこにでもいる普通の女達が、ある日を皮切りに外国人(とくに西洋人)しか愛することができない女に変貌してしまうのである…。
Tidital Nomad 明美(ティジタル・ノマド)
アメリカ発の出会い系アプリTinderを使って、男で世界一周を企てる30歳独身実家暮らし。Tinder で世界各国の男をPickしては、彼らから世界情勢とその国の今を聞き出す根っからのジャーナリスト気質。
前回のお話
今回のお相手:イタリア人エンジニア(32)
-ビギナーズラック-
Tinder という顔で選べる出会い系アプリを見つけて以来、帰宅電車では乗車時間の20分の間に最低200人の男をスワイプするのが日課になったの。1分で10人の男を見極めるという計算。
1人の男にかけられる時間は"6秒"。
のんきにマイペースになんて言っている暇はない。若かったはずの私も既に30(みそじ)。日本では、最も女を高く売れる年齢が過ぎてしまったのは100も承知だし、来年には最後の海外婚活の砦であるワーキングホリデーの門もおろされてしまうわ。
今頃は、ロサンゼルスのプール付きの豪邸で、シャンパンをかたむけているつもりだったのに…。まぁ過去を悔いてもしょうがないわね。大事なのはこれからよ。人生には1秒でも遅ければ、1スワイプ怠けたせいで、運命を取り逃がしてしまうことだってある。1人残らず日本にいる外国人メンズの顔を6秒に力を込めて本気でスワイプするのよ。
最寄り駅のアナウンスが戦い終了の合図。家までの道は結果を確認するの。
右に(♡)をスワイプするのは、だいたい200人中10人弱ね。
審査基準は
・イケメンか
・英語教師ではないか
・きちんと挨拶文が書いてあるか
・プロフィールが日本語じゃないか
ちなみに年齢のレンジについてはあらかじめ設定をすることができるわ。
若すぎても結婚をゴールに設定している私のモチベーションからは、時間を無駄にしてしまうから日本なら男が最も結婚したい年齢の33歳〜40歳に絞っているわ。
「日本語がないプロフィール」というのは、日本に慣れきった外国人を警戒しているから。今までの経験上、外国人が日本に慣れていいことってないのよね。心から日本を愛して来日してくれた人間ならいいかもしれないけど、ほとんどの外国人(特に白人)は、母国では起き得なかったモテぶりに勘違いしまくるのよ。だから日本に慣れる前に早めに刈り上げて、彼の国へ一緒にリターンするというのが私のストラテジー。
そんなマイルールの元、今日は7人ほどつり上げたわ。
アメリカ、イギリス、スウェーデン、フランス…。まるで世界旅行ね。
イタリア人エンジニア(32)
その中でもひときわ光るイタリア産の伊達男。プロフィール写真は、なんと水着姿。ジューシーな肉体を惜しげなく披露しているわ。今晩のメインターゲットは彼で決まり。補欠の1人を残して、5人からのメッセージはスルーさせてもらう。そして、伊達男のからの”Hi”という挨拶に丁寧に返事を打つわ。
ー火曜日 20時 恵比寿駅ー
彼はどうやら今月初めて日本に来たという新人さん。私の得意分野だわ。こっちに住み着いちゃう前に、他国へ移動するようにしむけるのも私のプランのひとつ。新人さんに限っては、待ち合わせもレストランも私が決めるの。
決め手は、①雰囲気がいい ②2人で5000円以内 ③アジア料理 のみっつ。
①はデートなのだから言うまでもなく。②は割り勘にされた時の出費を考えて。③つめは、せっかくアジアに来たんだから異国感を味あわせてあげたいという気遣い。
渋谷のように喧噪もなく、落ち着いた店の多い恵比寿。料理は可もなく不可もなくだけど、雰囲気は抜群の川のほとりの一軒家アジアンレストランcociにしたわ。
恵比寿駅に現れた彼はイタリアの風を隠しきれていない、日本の景色からは圧倒的に浮いたThe イタリア男だった。細長い輪郭、絶妙なバランスの無精髭、高すぎる鼻、4重の二重にくりっとした目。ぱりっとしたシャツがまたイタリアっぽい? でもTinderの写真はサングラスもしているし、だいぶ盛っているわね。セクシーさは20%減量ってところ。なんだか田舎のおじいちゃんを思い出すような、安定感があるわ。まぁ私も人のことは言えないけど…。
ガパオライスとタイのビールを頼んで、彼はイタリアなまりの妙に単語の語尾をパスタのようにぐるぐる伸ばす英語で身の上を話始めた。自動車のエンジニアで、技術を磨くために日本に来た。日本にくる前は、オーストラリアや他のアジア諸国にも住んだことがある。
母国イタリアは、不況で業界での再就職がなかなか難しくなっている。だから自分は、その道のスキルを磨く必要がある…とものすごく全うなことを言っているわ。
現時点で、ルックス&日本に来た動機に関しては合格。
1時間ほどの食事を終えて、2件目へ。お手洗いに行っているうちに会計は済んでいて、感激よ。これができる男って下心100%の既婚者のおじさんくらいしかいないのよ。世の男達に声を大にして言いたいけど、お手洗いに立ってる間にお会計をしてくれるだけで、女からは7割増しくらいの評価を受けることができるのよ。不細工メンズも実はイケメンなんじゃないかと思ってしまうくらいの効果よ。
Tinderを初めて1回目のデートでこんなハイスペックの男と出会えるとは…。ビギナーズラックってやつかしら。
「君はステリーナ(お星様)さ」
春の夕方。2件目はオープンテラスのカフェをチョイス。彼は「本当は食前酒なんだけど」といいながらリモッチェロを頼んで、私も飲んだことはないけどそのオーダーを真似してみたわ。レモンシロップに砂糖を10杯、ウォッカをロックで注いだような喉が暑くなる酒。まるでイタリア人男のよう…。
ここからはハイピッチ。端からみたら完全恋人同士だと思われるようなベタベタ具合よ。髪や体を毎秒触ってくる。そして視線はまっすぐ私を見つめる。そんなに凝視されたら穴があくわよ。
そしてどこからともなくイタリア語で「きらきら光る夜空の星を」と歌いだし、「君は僕のステリーナだ」といいながら頬をなでるの。会って数時間で、星になるってどんなだよと思いながらも、なんだかここがローマのような気がして来たわ。
炸裂マンモーネ(マザコン)
その後もなんどかデートを重ね、「明日は僕の誕生日だから一緒に過ごしてほしい」と言われ連れてこられたのは、目の前に東京タワーがそびえ立つザ・プリンスパークタワー。前にはアメリカ人ときたわなんて過去を振り返りながら、些細な発言でそれがバレないように注意をはらった。
部屋に着くと彼はライトアップした東京タワーをスマホでパシャパシャ。私に写真に入るように言って、東京タワーと彼と私の写真を連写する。
「この写真全部マンマに送るんだ。ママは僕が誕生日にひとりで日本にいるんじゃないかった心配してるだろうから」
イタリア語で、マザコンはマンモーネというらしい。
ホテルの廊下やロビーでマンマに送る写真の撮影会は夜中まで続いた。
ーイタリア旅行の結末ー
結局、誕生日の後に何度か会って私達の関係は友人に落ち着いたわ。私としては、彼が結婚を前提に考えるには、頼りなかったことが恋人にならなかった理由ね。
日本では稼ぎはないように見えたのに、なぜこんなにイタリアと往復ができるのだろうと不思議がっていたら、マンマに援助してもらっていることを打ち明けてくれたわ。ヨーロッパの不況の国ではよくあることのようだけど、なんだかげんなりしてしまったの。
でもそれ意外はルックスも性格もよくて、自分の好きなことにまっすぐな素敵な人だったわ。
やたらロマンチックだったり、視線が濃厚だったり、マンモーネ第一主義のイタリア人男は愛すべき存在。結婚となると少し不安だけど、恋人には申し分ないと思うわ。私がもう少し若かったら彼を選んでいたかもしれないわね。次回はドイツへの旅をリポートするわね。チュース!
Top Photo via Patrick Feller
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