“ゆとり世代”はアメリカにもいる?
意外と知らない世代の呼び名
構成・文/山川俊行(編集部)
『団塊』、『バブル』、『ゆとり』、『さとり』……、日本人にとっては馴染みのある言葉ですが、海外でも“ゆとり世代”のような、同じ時代に生まれた集団を指す呼び名があるのだとか。そこで今回は、歴史をさかのぼって、アメリカにおける世代の呼び名をご紹介します。
歴史に翻弄された貧乏くじ世代『Lost Generation(ロスト・ジェネレーション)』
ロスト・ジェネレーションは、1880年代から1890年代生まれの世代です。20代の青年期に、第一次世界大戦(1914年)に遭遇。お国のためにと勇んで出征した彼らですが、毒ガスや火炎放射器などの大量殺戮兵器を用いて繰り広げる残酷な争いを目にしたことで、「全ては国家と経済の発展のため」という従来からある社会の価値観を信じられなくなります。そうして、生きる指針を失い、社会のなかで路頭に迷った若者たちを指し、いつしか“失われた世代”と呼ぶようになりました。
時代の反逆者『Beat Generation(ビート・ジェネレーション)』
ビート・ジェネレーションは、第一次世界大戦が起きた1914年から、世界恐慌が起きた1929年までに生まれた世代です。大量消費、庭付きの家、明るい家庭など、国家から押し付けられた理想的なアメリカ国民像に成り下がることを拒否した青年時代の彼ら。その多くが、社会からドロップアウトし、小説や詩、ジャズなどの芸術分野に身を投じ、誰からも束縛されない自由な生活を追い求めました。この動きは、後に続くベビーブーマー世代に引き継がれ、ヒッピームーブメントの世界的な盛り上がりに結実することに。
「Love & Peace」に酔いしれた『Baby Boomers(ベビーブーマー)』
ベビーブーマーは、第二次世界大戦終結直後、戦地からの帰還兵の増加に伴って出生率が上昇した1946年から1959年に生まれた世代です。幼少期から青年期にかけて、キューバ危機やベトナム戦争といった国家の大事件に接し、権威を妄信することの危うさを思い知ります。そうして、既成の概念にとらわれない姿勢と、教育水準の向上で高い自立心を確立した彼らは、全米で反戦運動を展開。「Love & Peace」、「Back to nature」を標榜し、ヒッピームーブメントを巻き起こしました。
何事にも熱くなれない傍観者『Generation X(ジェネレーションX)』
ジェネレーションXは、1960年から1974年までの14年間に生まれた世代。ヒッピー運動の衰退とベトナム戦争の終結で生じた「しらけムード」のなかで10代を過ごした彼らは、成人を迎える時期にアメリカの国内不況で、深刻な就職難に遭遇。そのため、政治や社会に対して冷めている人が多いのが特徴なのだそう。ちなみに、“X”とは、カナダの作家が記した同名小説の題名に由来していて、「前の世代の大人たちが理解できない未知なる世代」という意味があります。
アメリカ版ゆとり世代『Millennial Generation(ミレニアル・ジェネレーション)』
ベトナム戦争集結からベルリンの壁崩壊に当たる、1975年から1989年に生まれた『Generation Y(ジェネレーションY)』と、1992年から2010年生まれのバブル崩壊後に誕生した現代の若者『Generation Z(ジェネレーションZ)』をあわせた世代を指す言葉です。この世代は、幼少期からインターネットに親しみ、SNSへの参加に積極的。また、先の見えない不況のなかで、仕事において野心や上昇志向をもたないことも特徴。『Millennial』には、新世紀が訪れた2000年以降に社会に進出する世代、という意味があります。
歴史を振り返ると、どの時代でも若者たちは前世代が築いた壁にぶちあたり、そのたびに新たな生き方を模索しています。日本では、『ゆとり』はネガティブな意味で捉えられがちです。でも、あの古代ギリシャの大哲学者・プラトンでさえ、「最近の若い者はなんだ……」とぼやいていたと言います。それほどまで、「最近の若い者は……」とうそぶく大人と、その言葉を苦々しく聞く若者たち、という構図は、歴史上繰り返されているのです。大人たちには自分の世代が築いた壁を乗り越えようとする若者たちを評価する『ゆとり』があってもいいのかもしれませんね。
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