E質問箱【3】英語で「今行くってば!」
は、comeとgoのどっちを使う?
ケンブリッジ大学認定英語教師
ケネス宮本が英語の疑問にお答え
外国人との会話中に、会社での商談の時に、ささいな英語の疑問がわくことってありますよね? そんなあなたの疑問に、ケンブリッジ大学認定英語教師のケネス宮本がお答えします。日頃ふと浮かんだ疑問、ぜひ気軽にメールで質問をお送り下さい。
Helloooooooooooooooooooooooooooo!!
楽しいゴールデンウィークを過ごされましたか?
仕事に戻ったばかりの方々も多いことと思います。
こうして読んでいただけてるのは光栄なことです。
Thank you for coming!
来てくれてありがとう!
と皆さんに感謝したくなったのは、今回のご質問を見たからです。
★質問はこちらでーす^^
先日英会話番組みてたら、comeも「行く」という意味があると言ってました。
↑これは知っていたんですが、じゃあ goと comeの使い分けはどういう風にすればいいんでしょうか?
comeと「来る」、二言語間の宿命的な「意味範囲の違い」を知っておこう
この疑問は、英語に慣れていく上で絶対通る道ですねー。
comeにも「行く」という意味がある、と考えると、うん、混乱しちゃうと思います。
「行く」という意味がある、ではなくて、「行く」と訳すべき場合がある、と言った方が正しいです。
なんでこんな現象が起こるのか、と言うと、「意味範囲の違い」があるからなんです。
英語のcomeと日本語の「来る」は、まったく同じ意味をもつ言葉じゃない、ということ。
例えば、日本語で「きく」という単語がありますよね。耳を使う「きく」ですが、それを漢字で書くと、
「聞く」 耳で音声を受け取る
「聴く」 内容を意識して耳をかたむける
「訊く」 尋ねる、問う
などというように、意味によって書き分けることがあるじゃないですか。
これは、元々の日本語(ヤマト言葉)の「きく」は意味範囲が大きい、ということです。
中国語では違う動詞として扱われてる行動が、日本語では「きく」のひと言で表せてます。
ふたつの異なる言語を比べると、こういうことは実にたくさんあります。
異なる言語では、単語の意味の出どころ・成り立ちが違うことが多いからですねー。
だから辞書を引くと、「①こんな意味、②こんな意味、③こんな意味…」と、よく使われる意味から順番に並べられて目安になっている、というわけです。
これを、ご質問のcomeに当てはめて厳密な言い方をすると、comeは「来る」という意味の言葉ではなく、「来る」と訳せる場合が多い言葉だ、ということなんです。
goとcomeを対照研究してみよう
では、ご質問のお答えに入りましょう! そのために、ちょっと皆さんとエクササイズ。
次の日本語を英語にしてみて下さーい!
1 このあいだ、映画を観に行ったよ
2 今度の夏は北海道に行きます
3 先月、クリントン氏が日本に来ました
4 うわあ! マンホールから水が出てきてる!
どうでしょうか?
僕の英訳例は、以下のようなカンジ。(あくまで例です。違う書き方もアリですよー)
1 I went to the movies the other day.
2 I’m going to Hokkaido this summer.
3 Mrs. Clinton came to Japan last month.
4 Holy! Water is coming out of the manhole!
これらを見た限りでは、①②の「行く」がgoで、③④の「来る」がcomeとなってて、違和感ナシだと思います。
発言してる人の視点で、その場所から「離れる」のが「行く」で、逆にその場所まで、もしくはその方向にむかって「近づく」のが「来る」ですよね。
ではでは、次の日本語も英語にしてみましょーう!
a. あなたも明日、ウチらのパーティーに来る?
b. うん、行きたい!^^
c. ねえ、こっちきて! 急いで!
d. 分かったよ! 今行くってば!
いかがでしょうか?
僕の英訳例をお見せますと…。
a. Do you want to come to our party tomorrow?
b. Yeah, I want to come!
c. Hey, come here! Hurry!
d. Okay! I’m coming now!
こんな感じですー。^^ ここでは、4つの文の全部にcomeが使われてますよね。
a.とc. はどちらも日本語が「来る」だから問題ないはず。でも、b.とd.は、日本語では「行く」と言うところです。
どういうことかと言うと、comeには、「話し相手のいる場所に行く、その方向に向かう」、という意味もあるんです。
例えば、友達との電話などでも、
Are you at the train station?
I’m coming in a minute.
駅にいるの?
すぐ行くよ。
なんてことを言うのはよくあること。相手のいる場所に行く、その方向に向かうからcomeになります。
あと、第三者のことを話していても同じことが言えます。
ちょっと、サラさんとクリスくんの会話を見てみましょう。
Sarah: Hey, Chris. It’s Danny’s birthday this Thursday, right?
サラ:ねえ、クリス。木曜日ってダニーの誕生日でしょ?
Chris: Yeah, he’s having a birthday dinner. Are you going?
クリス:うん、誕生日の夕食会をするって。サラは行く?
Sarah: I am. Are you?
サラ:うん(行くわよ)。クリスは?
Chris: No, I can’t. I’ll be out of town that day.
クリス:行けないんだよー。その日は出張にでてるんだ
Sarah: Oh, shame. Well, I’m going anyway.
サラ:あら残念ね。まあ、なんにしても私は行くわ
Chris: Okay. I’ll tell him you are coming. He’ll be happy.
クリス:分かった。君が行くって言っとく。あいつ喜ぶよ
チャンチャン。^^
ここでの最後のcomingは、ダニーくんのいる場所が視点になってるからです。
あと補足ながら。
クリスくんが最初にAre you going?「行く?」と言ってますが、これは彼自身が夕食会に行かないからだと思ってもよいです。
彼も行くんだったら、自分がその場所にいるのでAre you coming?「来る?」って言うのも自然になります。^^
日本人以外のノンネイティブも混乱する、英語の独特な一面かも
このgoとcomeの関係について、西洋の方々でもお国によっては知らなかったりします。
ニガテなのは日本人ばかりではないんですよー。^^
僕がロンドンに住んでいた時に、スペイン人の友達数人が、みんなが一緒に住んでいる家でのパーティーに僕を誘ってくれたことがありました。
当日、僕は彼らの住まいの最寄り駅に着いて、事前に約束した通り、それを携帯電話のショートメッセージで相手に伝えました。
そして、ひと言、こう返事がありました。
We are going.
これには「えっ、どこに行くの?」と困惑しました。
僕がいるところではなく、どこか他の場所に行くと思わせる文だからです。
でも2~3秒して、「ああ~、We are comingって言いたいのか」と悟りました。
goとcomeの使い分けに慣れてないんだな、スペイン人はむしろ日本人みたいな言い方をするのか、と理解して、まさかスッポカされたのかという心配は消えました。笑
こんな感じでどうしょうか~?^^
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ライタープロフィール●ケネス宮本
アメリカ、イギリスなどで計7年の海外生活経験をもつ生粋の日本人。英語教師、翻訳・通訳、コラムニスト。雑学(科学全般・歴史・芸術など)が大好き。色んな言語をカタコトで話すのも大好き。取得資格:ケンブリッジ英語教師資格(CELTA)ほか語学系。