外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【16】

「お客様は神様」という考えは出国カウンターで捨てよう

海外旅行で買い物や食事のとき、店員の態度が横柄だと感じる方も多いようです。お土産屋さんなどは別かもしれませんね。「Konichiwa!」という片言の日本語と笑顔に釣られて、ついつい財布の紐を緩めてしまうこともありそう。店員が親切じゃないと感じるときは、もしかすると現地のマナーを知らないだけで損をしているのかもしれません。

店員も客も人間同士

ヨーロッパに住んでいてたまに日本に帰ってきたときは、店に入るとつい「こんにちは!」と言ってしまったものです。
あ、ここは日本だった、あいさつしちゃった、と赤面する私に、しかし店の人も満面の笑顔で返してくれました。
やっぱりあいさつされるのが不愉快な人はあまりいないようです。

 

サンフランシスコのテイクアウトで

「あそこの肉屋でおいしいハムを使ったサンドイッチを売ってるんだ。お昼に買おうよ。」とアメリカ人の友人。
「いいね。」と私。
友人は続けて
「いいか?すぐに注文するなよ。まず “Hi, how are you doing? ” と聞くんだぞ。」
人気の店らしく長蛇の列。なるべく早くすませたほうがお店の人もありがたいんじゃないかな?と思うのですが、見ているとどの人も、まずあいさつを交わしてから買っていきます。忙しいのでものすごい早口で “How are you doing? ” を言うのですが、誰ひとりあいさつを省略しません。

考えてみると、忙しいからと言ってあいさつもしないのでは自動販売機と同じ。殺伐とした世の中になってしまいますね。

 

パリのクリーニング屋さんで

急いでクリーニングを出して出かけなきゃ、と焦る私の前で、長々と話し続けるおば様。店員は私の方に目で合図をしつつも、おば様の話の腰は折りません。日本ならおしゃべりは一度わきへ置いて、仕事をしてくれるところです。優秀な店員さんなら、おしゃべりしながらも手を動かすでしょう。私はイライラして待っていましたが、ふと思い直しました。

なぜ私はこんなに急いでいるんだろう。後で出したっていいのに。そもそもここまで時間に余裕がないのはおかしいのかもしれない…

 

店員と客のコミュニケーション

店員さんの大切な仕事って、できるだけ速くお金を受け取って物を渡すことでしょうか。東京で生まれ、東京で育った私は、おしゃべりで時間を無駄にしないでサッサと用事を済ませるのが良いことだと思っていました。しかし、お客さんのおしゃべりの相手をすることで、パリのクリーニング屋さんはコミュニティーの大切な役割を果たしているのだと思います。

高級ブティックでも事情は同じで、店員さんと話し始めるときは、必ず「こんにちは」とあいさつした方がいいでしょう。相手は人間なのですから。

 

モンスタークライアントが来ると警官が助けてくれるベトナム

日本でアルバイトをしながら学んでいるベトナム人の学生がこう話していました。
「何も悪いことをしてないのに、店長からお客さんに謝るよう言われた。ベトナムなら、酷い客が来れば警官を呼んでくれるのに。

私はまだベトナムに行ったことがないのでよくわかりませんが、彼が言いたいことは理解できる気がしました。つまり、店員さんは賃金と引き換えにサービスを提供するわけで、店員さんとお客さんは平等です。

 

世界には異なる文化があり、店員さんとお客さんの関係にしても、日本に近い国、フランスに近い国などさまざまです。が、楽しい旅のためには、「お客さんは神様」という考えは出国カウンターで捨てていったほうが無難でしょう。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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