外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【45】
学校の英語今昔 単語学習
日本の英語教育では実際に英語が使えるようにはならないという反省から、さまざまな改革が進められてきました。前回から、現役高校生の子を持つ保護者の目線で英語教育の変わった点、変わっていない点について書いています。学校や地方による違いもあると思いますが、自分が生徒として体験したことと、子どもが体験中の学校の英語を比べています。
定期テストの内容は変わったのか
参観日を別にすれば、家族が子どもの受けている教育内容を客観的に知る手立てというのは、家に持ち帰る宿題やテストくらいでしょう。
定期テストは教科書や授業をもとに作られるものです。学習指導要領や教科書が変わったのだから、筆記テストの内容も変わっているにちがいありません。会話が重視されるようになったのだから、覚えなければならない表現も、前より会話表現が多くなっているのでしょう。
定期テストの形式は変わったのか
しかし、子どもが持ち帰るテストの形式は、30年前とほぼ同じようです。
最初に単語のテストがあります。与えられた英語に対応する日本語を書くか、日本語の単語に対応する英語を書くものです。
しかし、ひとつの英単語に対応しうる日本語はいくつもあります。ひとつの日本語に対応する英語もいくつもあります。では、どれを書いても正解になるのかというと、子どもが通っていた学校の場合、その学期に学校で習った意味を書かなければバツでした。
定期テストは範囲が決まっているのだから当然だという意見もあるでしょう。しかし、英語として正しいものをバツにするというのはどうでしょうか。
正しい答えはひとつだという錯覚
新しい教育では、正しい答えは必ずしもひとつではないということも教えようとしているようです。ひとつの英単語にひとつの和訳というのは、それと逆行しているのではないでしょうか。
大人の英語のやり直しをお手伝いする機会の多い私にとっては、こうした英単語学習こそが最初のつまずきの原因に見えます。大人になっても、ひとつの英語表現にひとつの日本語が対応すると思っている人もいます。英語的発想と日本語的発想のズレが乗り越えられない人もいます。
ひとつの英単語にひとつの和訳としておいた方が、先生にも生徒にも楽なのかもしれません。私にしても、最初からひとつの単語のたくさんの意味や使い方を教えるべきだとは思いません。ただ、このような単語テストによって、子どもたちは非効率な学習法を身に着けてしまいます。
スペリングをテストしたいのだったら、ディクテーションという手もあります。意味を覚えさせたかったら、英文に空所を作り、文全体の意味が通るように単語を書かせてもいいのです。日本語を介在させたかったら、単語ではなく短いフレーズにした方がまだいいでしょう。
多くのことを覚えるより、学習の仕方を身に着けた方が一生の宝となるはずです。
ひとつの英単語にひとつの和訳というテストは、もう廃止してもいいのではないでしょうか。
ライタープロフィール●外国語人 | |
英語、フランス語、外国語としての日本語を教えつつ、語学力に留まらない読む力、書く力を養成することが必要であると痛感。ヨーロッパで15年以上暮らし、とりあえず帰国。この世界の様々な地域で日常の中に潜む文化の違いが面白くて仕方がない。子育て、犬育て中。TOEIC®985点 |
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