外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【04】

母語と母国語、一字違いで大違い

かつて日本では母国語という言葉が多く使われていたように思います。今は母語と言われることの方が多いようです。この2つの言葉、どこがどう違うのか簡単に見ておきましょう。

母国語から母語へ

英語のmother tongue の訳のようにして使われていた「母国語」ですが、motherにもtongue にも「国」という意味はありません。このことへの反省から「母語」という言葉が使われるようになったのではないかと考えられます。

 

母国が同じでも母語は違う場合

例えば、かつてブラジルやアルゼンチンに移住した日本人の子どもたちが、家庭で最初に覚えたのが日本語だとします。その場合、彼らの母語は日本語になります。家庭を取り巻く社会の中で話されているスペイン語やポルトガル語を覚えれば、それは2番目の言語になります。隣にミゲル君という代々アルゼンチン人の子どもがいるとしたら、ミゲル君と日系二世の子どもは、母国は同じでも母語は違うということになります。

因みに、日系の人々は生まれてすぐ手続きをすれば日本の国籍も持つことができるそうなので、国籍が2つある人も多いです。

 

母語が同じでも母国は違う場合

私が暮らしていたベルギーにはベルギー語というものはありません。ベルギーの公用語はフランス語とオランダ語、そしてドイツ語です。漫画タンタンの作者エルジェはベルギー人で、彼の母語はフランス語です。フランス人と、エルジェのようにベルギーのフランス語圏に住んでいる人たちとでは、母語は同じだが母国は違うということになります。

 

国際結婚の子どもたち

母語の違う人同士が結婚すると、子どもの母語はどうなるでしょうか。ヨーロッパの最近の傾向としては、子どもが両親の言葉を2つとも受け継ぐのが良いとされています。両親からそれぞれの言語で話しかけられた子どもは、自然にバイリンガルになります。その場合、母語が2つになることは前のコラムでも書いた通りです。もちろん各家庭の事情もあり、すべての家庭がそれを実践しているわけではありません。

幼い頃に話せたとしても長じて使うことがなく、自由に使いこなせなくなってしまった場合は、もはや母語とは呼ばないようです。母語とは身についていて、意識しないでも自在に使える言葉のことなのでしょう。フランスで出会った友人のひとりは、父親がフランス人、母親がイギリス人で、幼い頃はフランス語も英語も同じように話せたそうです。ところが思春期になり、周囲の友人たちと話す言葉が彼の最重要言語になった時、彼は英語を話さなくなってしまったとか。大人になってからすっかり後悔していたのは言うまでもありません。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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