外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【32】

アクセントの魅力(前編)

前回の記事で、TOEICやTOEFLの音声は公平をきたすため、アナウンサーのように無色透明なアクセントになっていると書きました。アメリカ、イギリス、カナダ、オセアニアなど地域ごとの特色はあっても、それぞれの国の「きれいな」発音で読まれています。テストはテストであって現実ではないため、当然の選択だとも言えます。今回は、テストから離れて一般的な話としてアクセントの魅力について2回に分けて書きたいと思います。

異なる発音を楽しむ

外国語を習うのが好きな人間というのは、異なる発音やアクセントに敏感なものです。私も例外ではく、母語には存在しない外国語の音に耳を澄ましたり、それを味わってみたりすることがおもしろくてしょうがないところがあります。

異なる発音やアクセントというのは、海を越えるまでもなく国内にもあります。東京生まれの私にとって、幼い頃は夏の楽しみといえば両親の生まれ故郷に行くことでした。そして、そこで半日も過ごせばもう土地の言葉で話していたものです。

このコラムの8「英語といってもいろいろある」で、BBC(英国放送協会)では、アナウンサーが地方のアクセントを完全に隠すことなく、個性として尊重するようになったという話を紹介しました。イギリス英語の中にもいろいろなアクセントがあるわけで、視聴者に内容が伝わるかぎり、無理にアクセントを殺してしまうことはないということでしょう。

 

「標準語」とは作られたもの

日本で「標準語」とか「共通語」と呼ばれているものは、明治時代に東京山の手の言葉を中心にして作られたものだそうです。当時は日本人同士でも、出身が違うと話が通じないこともあったとか。それじゃまずいということで、標準的な日本語が考案されたようです。

つまり、「標準語」とはもともと作られたもので、自然に生まれたものではないということです。

ただ、東京近辺には日本中から人が集まって住むようになったので、それぞれが自分のアクセント、自分の色を加えていったにちがいありません。

私は東京で生まれ、東京で育ったため、大学に入るまで自分には地方アクセントというものは全くないと思っていました。大学のアナウンス研究会というところで、「ご両親は東京の人じゃないでしょ。」と指摘されたときは心底びっくりしたものです。まるでヨーロッパかアメリカに住んでいて、「ご両親はネイティブじゃないでしょ。」と言われたようなものでした。

(後編へつづく)

 

ライタープロフィール●外国語人

英語、フランス語、外国語としての日本語を教えつつ、語学力に留まらない読む力、書く力を養成することが必要であると痛感。ヨーロッパで15年以上暮らし、とりあえず帰国。この世界の様々な地域で日常の中に潜む文化の違いが面白くて仕方がない。子育て、犬育て中。TOEIC®985点
https://www.znd-language.com

 

 

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