外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【26】

「世界の○○」はそんなにすごいのか2

日本のアーティストなどが海外で認められるようになると、よく「あの人は今や世界の○○だ」という言い方をします。前回は、なぜ日本人はこのようなフレーズを口にするのか考えてみました。今回は、国際的な評価に対して欧米ではどんな反応をするか、私が経験したところを書いてみます。

ノーベル賞は欧米でも大変な栄誉

「世界の○○」という言い方は欧米では聞きません。それでも、自国以外でも賞賛される栄誉という意識はあり、その最たるもののひとつがノーベル賞でしょう。

ただ、自国の誰かがノーベル賞を取ったからといって、いつも「わー!めでたい!」と盛り上がるわけではありません。

 

ノーベル文学賞にフランスの作家が選ばれた時 - フランス人の反応

2014年のノーベル文学賞にフランスのパトリック・モディアノ氏が選ばれたとき、筆者はフランスに住んでいました。当時フランスでは、「え…なぜ彼が?」と驚きを隠せない人が多かったようです。メディアの反応も、そして受賞した本人でさえ、少し戸惑っているようでした。

もちろん、出版社のガリマールだけは別で、さっそく彼の小説を増刷していました!

一般の文学愛好家も、モディアノの小説が嫌いだったわけではありません。ただ、ノーベル賞っぽい傾向の作家ではないと思っていたようです。また、フランスはすでに10人以上のノーベル文学賞受賞者を出していることもあり、大騒ぎするのは何だか「ダサい」のですね。

 

アメリカの友人のノーベル賞受賞者に対する反応

「オニールはいい劇作家だけど、なぜ彼がノーベル賞を取ったのかは理解に苦しむ。」

1936年にノーベル文学賞を取ったアメリカ人のユージン・オニールについて、あるアメリカの文学通はこう言っていました。ノーベル賞を取っているからすごいとは思わない。自分がある作家をどう評価するかということと、その作家が賞を取ったかどうかは関係がない、たとえそれがノーベル賞であったとしても。

確かに、賞を取った後と前とで、作品の質が上がるわけでも下がるわけでもありません。特に、科学分野と違って文学賞になると、異論が出る余地は常にあります。

 

「世界」との距離

前回の記事で、かつて「世界」は日本から遠いところにあったと書きましたが、欧米諸国にとってはどうでしょうか。自分たちがいるところこそ世界の真ん中だという意識の人はいまだに多いかもしれません。

だとすれば、「世界の○○」という表現が出てこないのも当然でしょう。

 

自分の評価か他人の評価か

和食がユネスコの世界遺産に登録されたとき、日本はすごい盛り上がりでした。

しかし、フランス料理がユネスコの世界遺産に登録されていることを知っているフランス人はあまりいないようです。フランス料理が素晴らしいのは当たり前で、別にユネスコに言ってもらう必要などないということかもしれません。また、ある種のフランス料理はクリームの取りすぎになり、毎日食べない方がいいと皆わかっています。

醤油のとりすぎはよくないと私たちが知っているのと同じことですね。

地中海食も健康にいいということでユネスコに登録されています。地中海に面した各国の料理がそれにあたるわけで、南フランスも入っています。が、やはりフランス人の話題には上りません。地中海食が体にいいということはよく話します。しかし、世界遺産云々という話は出てきません。

自分たちはこれがおいしいと思う。嫌いな人もいるかもしれないけど。人それぞれでしょ、というだけのことなのです。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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