外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【10】

欧米で最高のおもてなしとは自宅に招くこと

「おもてなし」という言葉が流行っています。和英辞書を引くと、hospitalityと書いてあります。日本語の「おもてなし」と英語の“hospitality”、共通点と相違点はどんなところにあるのでしょうか。

高級レストランに招かれてガッカリしたフランス人

何度か来日して日本人の知り合いもできたフランス人。ある日彼は、そんな日本人の知人の一人に「招かれた」と言って喜んでいました。しかし、翌日顔を合わせるとすっかりしょげ返っています。どうやら家に招かれたと思い込んでいたのに、レストランでの食事だったとのこと。招いた方としては、最高のレストランでご馳走したのだから、最高のおもてなしをしたと思っていたことでしょう。しかし、多くの欧米人にとって、最高のおもてなしとは自宅に招くことです。

 

他人を当たり前のように自宅に泊めるヨーロッパ

初めて海外に行った時、私は日本で知り合ったフランス人宅にお世話になりました。以来、小さなアパルトマンから田舎の大きな家まで、いろいろなお家に泊めてもらいました。ヨーロッパでは、日本よりもずっと気軽に人を招くようです。

大昔、旅がまだ危険に満ちていた時代は、世界のどこでも旅人を迎え入れる習慣があったと思います。日本の昔話にもよく出てきますね。

ヨーロッパでは、古代ギリシャ、ユダヤ教、キリスト教のいずれもhospitalityを大切な徳としています。難民を受け入れることも、それと無関係ではありません。

「お忙しいのにお迎えくださってありがとう。」という私に、「そんなことは当たり前のことですよ。自宅に人を泊めようともしないなんて惨めなやつです。」と言った一家の主人もいました。

 

hospitalityの語源

hospitality, hospital, hotel, これらはみな同じラテン語hospesから生まれた言葉で、hospesは客や見知らぬ人を指します。つまり、見知らぬ人を暖かく迎えるのがhospitalityです。家とは外界から身内を守るためのものですが、閉じているだけではなく、見知らぬ人に対して開かれているのがいいという文化があるのでしょう。

欧米の歴史をよく調べると、hospitalityと言っても必ずしも無欲なものではなかったり、hospitalityの概念が悪用されたりしたこともあったようです。

我らの「おもてなし」は、どうでしょうか。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

★関連記事★
外国語学習と外国暮らしが 教えてくれるもの【07】英語と漢文は意外に近い
TOEIC®学習法の勘違いリスニングが苦手だった私が TOEIC®で満点に2

 

 


「外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの」連載記事一覧

続きを見る >>

おすすめ記事