外国語学習と外国暮らしが教えてくれるもの【29】

日本語から遠く離れた英語を学ぶということ

「なぜ英語なんてやらなきゃいけないんだろう」。そう思っている人も多いでしょう。文字も構文も発音も日本語とはかけ離れた英語。しかし、それは不運なことでしょうか。

英語の起源

まだ文字の無い先史時代、黒海沿岸に印欧祖語とでも呼ぶべき言葉があったと言われています。中東、インド、ヨーロッパのさまざまな言語の元になったとされているものです。

ここからヨーロッパ北部に分かれていったのがゲルマン祖語で、英語、ドイツ語、オランダ語やスウェーデン語などの元になったようです。ヨーロッパを旅行していて北欧を通ると、確かに看板の言葉が英語と似ていることに気づきます。

 

ヨーロッパの他の言語と英語

では、他のヨーロッパ言語はどうかといえば、フランス語やイタリア語などはガロ・ロマン語というグループに入り、英語や北欧の言語とは明らかにノリが違います。とはいえ日本人から見れば、ゲルマン系の言語とガロ・ロマン語には共通点が多いです。どちらも主語+動詞という文構造を持ち、lとrの発音に区別があり、アルファベットを用います。もともと印欧祖語から分かれて発達したものなのですから。

 

母語と似ていない言語を学ぶのは不利なのか

フランスで外国人のためのフランス語講座に参加していた時、ドイツ人の女性と同じクラスになりました。ある時、彼女は先生にこうアピール。

「ドイツ語とフランス語は全然違うから、私にとってフランス語はすごく大変なんです!!!」

先生も同情と共感いっぱいで応じていました。

「そうよねぇ、ドイツ人がフランス語を学ぶのは大変なのよねぇ。」

私はそれを聞いて密かに微笑んでしまいました。
あのぅ、私ここにいるんですけどォ‥

そんな大変さは私たちには自明のことで、中学生になって初めて英語に触れた時からずっとそうだったんです。

今は小学生の時から英語の授業があるということで、子どもたちはもっとナチュラルに英語に入っていくのでしょうか。発音やリスニングのためには、早ければ早いほど良いと言われています。

しかし、12歳で初めて外国語に触れた瑞々しいショックは、多くのことを考えさせてくれました。

 

違いが大きいほど脳には刺激?

好むと好まざるとに関わらず、英語は世界の共通語としての役割を果たしています。どこの国の人も多かれ少なかれ英語を学ぶことになっています。東アジアの人間にとって、それは簡単ではありません。だからといって、損をしているわけでもありません。

外国語を学ぶとき、母語とのギャップが大きければ大きいほど、脳への刺激も大きいのではないかと思うのです。その点で、私たちはむしろ得をしているのかもしれません。

 

ライタープロフィール●外国語人
外国語としての英語、フランス語、日本語を学生や社会人に教えつつ、通訳・翻訳の経験を積む。新TOEICのスコアは985点。この世界の様々な地域で日常の中に潜む大小の文化の違いが面白くて仕方がない。子育て中。

 

 

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